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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻3号

2005年03月発行

文献概要

講座 コミュニケーションスキル・3

理学療法士としてのコミュニケーションスキル

著者: 富樫誠二1

所属機関: 1広島市立安佐市民病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.267 - P.273

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理学療法とコミュニケーションスキル

 コミュニケーションとは,相手の話を聴いて理解し,逆にこちらのことを相手に伝え理解してもらうことである.それは一方通行ではなく,双方向の意思・感情・考え・意味を伝達することである.やりとりするのは意味と感情の両方である.ここで重要なのは意味だけでなく感情も伝え合うということである.コミュニケーションスキルとは,意味を的確に伝えそのときの感情を理解し合うスキルであり(図1)1),人間関係を上手に行うためのソーシャルスキルの一部であると筆者は考えている.自分の思っていることをうまく相手に伝え,相手を納得させながら自分の主張を通せるような人づきあいの技術であるといえる.クライエント(ここでは患者のことをいう)と対峙する理学療法士(PT)にとって,コミュニケーションは欠くことができない大切なスキルである.だからなによりもまず基本的臨床技能としてのコミュニケーションスキルが重要である.臨床においては,「はじめにコミュニケーションありき」である.いくら専門的治療技術が上手でもそれを十分に活かすコミュニケーションスキルがなければ相手から信頼を得ることは難しい.なぜなら相手は文化,社会的存在としての感情をもった人間なのである.治療技術の対応だけでは,うまくいくはずはない.このことは,昨今の医療状況からみても自明の理である.繰り返しになるが,コミュニケーションスキルとは,言語を使用して相手にこちらの意味をうまく伝えるということではない.相手の社会的文脈を含めた感情をもとりあつかい,相手とうまくつきあう技術である.もちろんそれは,自分の文脈や感情を管理しなければならない自分とつきあうことでもある.他者といる技法,他者といられる技法,それがコミュニケーションスキルである(図2)2)

臨床でのコミュニケーションスキル

 「外来でAさんが奥さんとご一緒に運動療法室にこられました.」

 そのような場景を想定したとき,どのようなコミュニケーション・ストラテジーを立て実行しているだろうか.やり方はいろいろある.クライエントに個別性があるようにそのコミュニケーション方法にも多様性があっていい.ここでは,私たちが理学療法を行う上で大切となるコミュニケーンスキルについて具体的に述べる.

参考文献

1)斉藤 孝:コミュニケーション力(岩波新書),岩波書店,2004
2)相川 充,他:社会的スキルという概念について―社会的スキルの生起過程モデルの提唱.宮崎大学教育学部紀要(社会科学)74,pp1-16,1993
3)前田 泉:コミュニケーションスキルと患者満足度.プライマリケア27:99-106,2004
4)横山敬子:仕事人間のバーンアウト,白桃書房,2003
5)田尾雅夫:組織の心理学,有斐閣ブック,2004
6)大森武子,他:コミュニケーション・センス,医歯薬出版,2003
7)奥村 隆:他者といる技法(コミュニケーションの社会学),日本評論社,1998
8)斉藤 孝:会議革命,PHP研究所,2002
9)大坊郁夫:非言語的表出性の測定:ACT尺度構成,北星論集(文)第28号,pp1-12,1991
10)相川 充:ひとづきあいの技術,サイエンス社,2002
11)大坊郁夫:しぐさのコミュニケーション,サイエンス社,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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