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文献概要
とびら
行政の理学療法士として
著者: 半田昭子1
所属機関: 1北九州市八幡東区役所保健福祉課
ページ範囲:P.471 - P.471
文献購入ページに移動区役所の窓口には実にいろいろな人が相談に訪れる.その中で専門職としては障害の相談に一番耳を傾けている.障害もいろいろで,相談数の多かった脳卒中の場合は介護保険が始まって相談内容が大きく変わってきた.40~64歳の2号保険者が介護保険対象になり,65歳以上の介護保険対象者と同じサービスを受けることになったからである.以前は退院前関与によって退院前に窓口に連絡があり,われわれ行政のPTと病院のPTが住宅改造や,職場復帰のために障害者施設でのさらなるリハビリを受ける相談,ホームヘルプやデイサービス等の在宅サービスについてアドバイスをしていたが,介護保険開始後は介護保険係へ移り,相談件数は減った.現在,その少ない相談のほとんどがすでに在宅になっているが,介護保険のサービスは受けたくない,まだリハビリがしたい,それがだめなら障害者福祉サービスを受けたいというものである.つまり,介護保険で提供されるデイケアや訪問リハビリとは違い,病院でPTが行う個別治療を希望しているのである.そこには医療という背景が常にあり,頑張っている患者がたくさんいて自分だけがつらいのではないという連帯意識のような安心感があるのではないだろうか.北九州市も介護保険の開始に伴いA型機能訓練事業を発展解消した経緯があるが,その機能回復を目的にした運動の場ではPT,OTの指導だけでなく対象者同士のふれあいによる障害受容の効果が大きかったと認識している.今は,入院中に介護保険の手続きをして,ケアマネジャーが在宅の生活をマネジメントしてしまうので,40歳過ぎた脳卒中後遺症の人が介護保険サービスの中で埋もれ,行政の窓口と医療機関との関係が遠くなってしまっている.彼らに何とかリハビリの機会が与えられないものだろうか,せめて障害受容まで,と考えることが多くなった.
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