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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻6号

2005年06月発行

文献概要

とびら

行政の理学療法士として

著者: 半田昭子1

所属機関: 1北九州市八幡東区役所保健福祉課

ページ範囲:P.471 - P.471

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北九州市に入職して30年が過ぎた.行政の理学療法士(以下,PT)として入職した当時はPTやリハビリテーション(以下,リハビリ)の意味を説明する毎日であったが,それを説明しながら行政職として何をしたらよいかを探りながらの30年であったように思う.北九州市は行政にPT,作業療法士(以下,OT)を昭和47年から採用しており,平成11年には北九州市7区の窓口にPTまたはOTが1人ずつ配置された.私自身,障害福祉センターに21年,本庁障害福祉課に6年,そして現在の区役所で4年目をむかえている.

 区役所の窓口には実にいろいろな人が相談に訪れる.その中で専門職としては障害の相談に一番耳を傾けている.障害もいろいろで,相談数の多かった脳卒中の場合は介護保険が始まって相談内容が大きく変わってきた.40~64歳の2号保険者が介護保険対象になり,65歳以上の介護保険対象者と同じサービスを受けることになったからである.以前は退院前関与によって退院前に窓口に連絡があり,われわれ行政のPTと病院のPTが住宅改造や,職場復帰のために障害者施設でのさらなるリハビリを受ける相談,ホームヘルプやデイサービス等の在宅サービスについてアドバイスをしていたが,介護保険開始後は介護保険係へ移り,相談件数は減った.現在,その少ない相談のほとんどがすでに在宅になっているが,介護保険のサービスは受けたくない,まだリハビリがしたい,それがだめなら障害者福祉サービスを受けたいというものである.つまり,介護保険で提供されるデイケアや訪問リハビリとは違い,病院でPTが行う個別治療を希望しているのである.そこには医療という背景が常にあり,頑張っている患者がたくさんいて自分だけがつらいのではないという連帯意識のような安心感があるのではないだろうか.北九州市も介護保険の開始に伴いA型機能訓練事業を発展解消した経緯があるが,その機能回復を目的にした運動の場ではPT,OTの指導だけでなく対象者同士のふれあいによる障害受容の効果が大きかったと認識している.今は,入院中に介護保険の手続きをして,ケアマネジャーが在宅の生活をマネジメントしてしまうので,40歳過ぎた脳卒中後遺症の人が介護保険サービスの中で埋もれ,行政の窓口と医療機関との関係が遠くなってしまっている.彼らに何とかリハビリの機会が与えられないものだろうか,せめて障害受容まで,と考えることが多くなった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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