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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻6号

2005年06月発行

文献概要

原著

慢性期脳卒中患者の歩行能力とFunctional Balance Scale下位項目の関係

著者: 杉本諭1 丸谷康平2

所属機関: 1健康科学大学理学療法学科 2武蔵台病院リハビリテーション部

ページ範囲:P.547 - P.552

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これまでにも脳卒中患者の歩行能力に影響を与える要因の研究が数多く行われ,年齢1,2)や運動麻痺の程度2,3),非麻痺側筋力4~6),バランス機能5,7~10)など様々な要因の関与が報告されている.近年歩行能力とバランス機能の関連についての検討としてFunctional Balance Scale(以下FBS)を用いた報告が様々な症例を対象として行われ,Usudaら11)は脳卒中患者の歩行能力が良好な者ほどFBS得点が高いと述べている.しかしながらこの報告ではFBS合計得点を指標としているため,構成されている14の下位項目が歩行能力に対してどのように関わっているのかについては明らかではない.下位項目に着目した報告として丹羽ら12)の研究があるが,発症後12週までの測定であり,また年齢や運動麻痺などの他の歩行規定要因を含めずにFBS下位項目だけを検討したものである.慢性期脳卒中患者においては運動麻痺自体の改善が困難な場合が多いため,この時期においても改善が見込まれる要素を明らかにすることは,歩行能力の改善において重要であると考えられる.そこで今回われわれは,慢性期脳卒中患者を対象に歩行能力とFBS下位項目との関連について分析し,さらにFBS以外の要因も加味したうえで,歩行能力の規定因子について検討した.

対象および方法

 対象は,埼玉県および茨城県内の介護老人保健施設に入所,または通所している,発症から1年以上経過した慢性期脳卒中患者のうち,一側のみに運動麻痺が認められた126名で,性別は男性73名,女性53名,平均年齢は72.2±10.7歳,麻痺側の内訳は右片麻痺62名,左片麻痺60名であった.運動麻痺の判断は,Brunnstrom Recovery Stage(以下Br-stage)のテストにて,ステージⅥがクリアできなかった場合に麻痺ありとした.下肢Br-stageは,Ⅰ:1名,Ⅱ:17名,Ⅲ:41名,Ⅳ:22名,Ⅴ:19名,Ⅵ:26名であった.このうち下肢Br-stageⅡの3名,Ⅲの10名,Ⅳの2名が歩行時に短下肢装具を使用していた.なおFBS検査の施行に困難を来すような著しい高次脳機能障害や骨関節疾患を有する者は除外し,対象者全員には本研究の主旨を十分説明し,同意を得て実施した.

参考文献

1)三戸香代:脳卒中患者の長期予後に及ぼす加齢の影響.北里医学30:307-315,2000
2)佐藤秀一,他:重回帰分析による慢性期脳卒中患者の歩行能力に影響する諸因子の検討.PTジャーナル27:93-99,1993
3)菅原憲一,他:片麻痺患者の歩行能力と麻痺側機能との関係.理学療法学20:289-293,1993
4)青木詩子,他:慢性期片麻痺患者の非麻痺側膝伸展筋力と歩行能力の関連.総合リハ29:65-70,2001
5)杉本 諭,他:脳血管障害患者の歩行能力に及ぼす非麻痺側筋力と坐位能力の影響.理学療法学27:4-8,2000
6)高橋哲也,他:脳血管障害患者における非麻痺側筋力の経時的変化と歩行能力の関連.総合リハ21:299-303,1993
7)江西一成,他:片麻痺患者の体幹機能と歩行能力との関係.PTジャーナル30:821-826,1996
8)川手信行,他:脳卒中片麻痺患者における立位・座位姿勢保持時重心動揺と座位姿勢変換時重心移動について.リハ医学34:121-128,1997
9)望月 久:脳卒中のバランス障害の経過とその対応.PTジャーナル34:771-776,2000
10)永井将太,他:脳卒中片麻痺患者の坐位バランス定量的分類と歩行能力の関係.理学療法学25:329-335,1998
11)Usuda S, et al:Construct validity of Functional Balance Scale in stroke inpatients. J Phys Ther Sci 10:53-56, 1998
12)丹羽義明,他:脳卒中片麻痺患者の歩行能力改善の推移.PTジャーナル37:5-9,2003
13)Berg K, et al:Measuring balance in the elderly:preliminary development of an instrument. Physiotherapy Canada 41:304-310, 1989

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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