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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻7号

2005年07月発行

文献概要

特集 介護予防動向―理学療法士はどうかかわるのか

地域での介護予防に向けて

著者: 備酒伸彦1

所属機関: 1神戸学院大学総合リハビリテーション学部医療リハビリテーション学科理学療法専攻

ページ範囲:P.595 - P.600

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はじめに

 「介護予防」.何か耳に心地よく響く言葉だが,一方でその意味はあやふやである.ましてや,介護保険という仕組みを拠り所にして「介護推進」を図ってきた私は,未だに介護予防という言葉に馴染めないでいるというのが正直なところである.

 介護保険にはもとより「本人の自立を第一に考える」という理念がある.しかも,褥瘡対策などという「生物モデルのケア」の時代を卒業して,個々人の多様性を尊重する「人モデルのケア」に対応できるように,制度として一定の枠を与えながら,その中で,自己決定と自己責任の仕組みをもっているのが介護保険である.

 このように考える私は,「介護予防」という言葉のうわべに踊ることなく,冷静にケアの在り様を考えて個々の自立を支えることが重要であるという立場をとっている.さりとて介護予防の取り組みに反対しているわけではない.繰り返しになるが,介護予防という言葉が独り歩きすることによって高齢者ケアの姿が歪んでしまうことに危惧を感じているわけである.

 そこでこの小論では,介護予防という語を念頭に置いて,次の3点から高齢者ケアについて考えていくことにする.

 ①「悲惨な家族介護の時代」

 介護保険は,家庭の中に閉じこめられた過酷な家族介護への反省に立った,壮大な介護の社会化政策であるといえる.ところが皮肉なもので,介護保険によって急激に広がったケアの現場では,そのような時代を知らない関係者,すなわち悲惨な時代を知らないスタッフが圧倒的多数を占めている.このことは介護予防と一見無関係のようであるが,「これからの介護」を考える際に「過去の介護」を知っておくことは極めて重要なことなので,あえてはじめに触れておくことにする.

 ②「生活機能を支える」

 生活機能は身体機能のみによって決まるものではない.また,「北風と太陽」の話を引くまでもなく「人は動きたいと思うから動く」わけで,この点を忘れたケアは成り立たない.そこでこの項では,介護予防というものが単に身体機能への対策にとどまるものではないということについて述べることにする.

 ③「個々の仕事が大切」

 理学療法士の関わる仕事が介護予防の分野も含めて広がっていくことは,ケアを推進する上で望ましいことである.同時にわれわれに課せられた使命の重さも知らなければならない.この項では,まずは身近な仕事を確実に行うことの大切さについて触れることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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