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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻8号

2005年08月発行

文献概要

特集 脳卒中の理学療法を再考する

脳卒中に対する理学療法の歴史的変遷

著者: 吉尾雅春1

所属機関: 1札幌医科大学保健医療学部

ページ範囲:P.669 - P.673

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はじめに

 脳卒中に対する理学療法は未だに確立されたものがない,根拠をもって効果を示していない,という評価を社会から受けており,2004年版脳卒中治療ガイドライン1)にもそのまま著わされている.リハビリテーション医療が対象とする疾患,あるいは障害の中で,脳卒中片麻痺の占める割合は非常に高い.それだけに,社会に,特に国家財政に与える影響が大きく,逆に国から与えられる脳卒中の理学療法への統制も強いものになる.脳卒中の理学療法は自然科学的因子に左右されるのはもちろんのこと,かつ社会科学的因子にも左右される.

 わが国に理学療法士が誕生した頃,欧米から神経生理学的アプローチが輸入された.その後20年余りの間は脳卒中の理学療法は神経生理学的アプローチに染まったようであった.動作あるいは能力障害や社会参加の障害よりも,機能障害に注目した時代である.つまり,生活を営む社会的動物としての復権を支援することよりも,治療医学モデルに強い関心を示したのである.しかし,残念ながら思うような結果を得ることなく,生活をみることを忘れたわが国の理学療法士は痛烈な批判を浴びた.その後,厚生行政と欧米の変遷の影響を受けながら今に至っている.

 脳卒中の理学療法はどうあるべきかを学ぶに当たって,現在の理学療法のあり方についてのみ注目することは危険なことである.自然科学と社会科学の間で苦悩した先人たちがどのようにして今に辿り着いたか知ることこそ重要である.脳卒中に対する理学療法の歴史的変遷から,今後のあるべき姿のヒントを探ってみたい.

参考文献

1)篠原幸人,他(編):脳卒中治療ガイドライン2004,pp169-228,協和企画,2005
2)Hirschberg GG, et al:Technics of rehabilitation of hemiplegic patients. Am J Med 35:536-545, 1963
3)吉尾雅春:運動学習理論の理学療法への応用.PTジャーナル29:681-686,1995
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5)Smith GV, et al:“Task-oriented”exercise improves hamstring strength and spastic reflexes in chronic stroke patients. Stroke 30:2112-2118, 1999
6)上田 敏,他:ファシリテーション・テクニックその1.理・作・療法2(2):38-43,1968
7)上田 敏,他:ファシリテーション・テクニックその2.理・作・療法2(3):40-45,1968
8)上田 敏,他:ファシリテーション・テクニックその3.理・作・療法2(4):29-33,1968
9)上田 敏,他:ファシリテーション・テクニックその4.理・作・療法2(5):37-44,1968
10)上田 敏,他:ファシリテーション・テクニックその5.理・作・療法2(6):17-20,1968
11)上田 敏,他:特集ファシリテーションテクニック(1).理・作・療法13:291-331,1979
12)穐山富太郎,他:特集ファシリテーションテクニック(2).理・作・療法13:359-408,1979
13)池田耕治,他:脳卒中片麻痺患者に対する認知運動療法.理学療法MOOK2,脳損傷の理学療法2(第2版).pp62-76,三輪書店,2005
14)永井将太,他:Full-time integrated treatment(FIT)program.理学療法MOOK2,脳損傷の理学療法2(第2版).pp109-117,三輪書店,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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