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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻9号

2005年09月発行

文献概要

特集 心臓外科治療の進歩と理学療法

重症心不全に対する外科治療と理学療法―左室補助人工心臓(LVAS)の進歩と理学療法

著者: 櫻田弘治1

所属機関: 1心臓血管研究所付属病院理学療法室

ページ範囲:P.777 - P.783

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左室補助人工心臓の現状

 心不全に対して,一次的に心臓のポンプ機能を補助し,心臓のポンプ失調の回復を待つ方法を循環補助という.循環補助の第一選択は薬物療法であるが,内科的治療が無効な末期重症心不全に対しては,機械的補助循環(assisted circulation)や心臓移植が必要となる(表1).

 これまで補助人工心臓(ventrisular assist system:VAS)は,主に心移植までのつなぎ(bridge to transplantation)1)として使用されることが多く,欧米においては心臓移植症例の約20~30%がこのbridge to transplant症例であったと報告されている2,3).近年これに加え,積極的な自己心機能の回復を目指した使用(bridge to recovery)や永久使用(destination therapy)を目指した左室補助人工心臓(LVAS)の臨床使用が行われるようになってきた.特に心移植の適応にならない末期重症心不全患者に対する内科的治療とLVAS治療との比較を行った結果,LVAS destination治療の有効性が示唆され,今後この永久使用を目的とした使用が増加してくることが予想される.米国心臓肺および血液研究所(NHLBI)の委員会による検討では,米国内の年間2.5~6万人が補助人工心臓を,また1~2万人が全置換型人工心臓を必要としていると報告している.日本臨床補助人工心臓研究会の調査では,2001年10月までに種々のシステムにより504例の適応例があった.

参考文献

1)西村元延:重症心不全に対する植え込み型補助人工心臓治療:Heart View 3:72-76,1999
2)Copeland JG, et al:The total artificial heart as a bridge to transplantation:A report of two cases. JAMA 256:2991, 1986
3)Rose EA, et al:Long-term use of a left ventricular assist device for end-stage heart failure. N Engl J Med 345:1435-1443, 2001
4)朝日新聞:朝刊.2005.5.26
5)http://www.evaheart.co.jp/index.html:サンメディカル技術研究所
6)櫻田弘治:左室補助人工心臓症例に対する理学療法.理学療法学31:269,2004
7)許 俊鋭:心臓移植における移植前の補助人工心臓の管理.Clinical Engineering 16:215-222,2005
8)川合明彦:補助人工心臓駆動時の脳梗塞発生の実際.Cardiovascular Med-Surg 6:493-497,2004
9)東洋紡補助人工心臓セット:取扱説明書
10)川合明彦:LVAD.Heart View 3:42-47,1999
11)櫻田弘治:心臓移植術後理学療法を経験して―左室補助人工心臓装着2年10か月を経て―.理学療法学32:342,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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