理学療法士に求められる義肢・装具の知識と技術・1―装具療法
著者:
賀好宏明
,
大峯三郎
,
舌間秀雄
,
木村美子
,
中元洋子
,
吉本奈美
,
蜂須賀研二
ページ範囲:P.809 - P.813
はじめに
様々な障害を持つ人々を対象とする理学療法において,義肢・装具は,有効な治療手段の1つとして,あるいは機能や能力障害を補完するための重要なツールとして位置づけられている.これは,早期からの運動療法に併せて義肢・装具を用いることで,理学療法治療の重要な課題である「歩行能力の獲得」を達成する可能性が拡がることを期待しているためであろう.
昨今のリハビリテーション(以下,リハビリ)医療現場において,対象となる障害者の高齢化,重度化などの医学的問題に加えて,平均在院日数の短縮やリハビリ実施期間の限定にみられる診療報酬上の制約などを背景として,急性期医療への特化,加速的かつ多面的アプローチの必要性,早期リハビリの実施などが益々強調されている.このような視点からも,理学療法の根幹をなす運動療法において,義肢・装具を積極的に取り入れて行くことは極めて重要であり,理学療法士(以下,PT)としていかに効果的,効率的にこれらを導入し,活用していくべきかを考慮することが必要となってくる.
リハビリ医療におけるPTは,その専門性を活かした治療プログラムの提供と実践を主体とする専門職であり,義肢・装具の領域もPTの守備範囲である.臨床で義肢・装具の専門的な知識・技術を駆使して運動療法との融合を図り,目的とする治療効果を得るためには,他職種とのコラボレーションによるチーム・アプローチも当然求められる.
本稿では,装具を導入して運動療法を進めていく上で,PTに必要となる知識や技術について私見を交えて論じる.なお,論文構成にあたり,装具と義肢の2部に分けて分担執筆の形式を採った.本稿では装具療法について述べる.義肢については本誌p815~821を参照いただきたい.