理学療法ジャーナル40巻10号

2006年10月発行

講座 理学療法と医療安全　1

医療安全対策活動と理学療法士の役割

著者： 佐藤志穂¹

所属機関： ¹星が浦病院リハビリテーション部

ページ範囲：P.869 - P.874

はじめに

　“部門の壁を乗り越えて　意見かわせる　職場環境”は，「安全な医療を提供するための10の要点」のうちの1つである．これは，医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会が患者を含めた「人間中心の医療の推進」のために標語化したもので，医療機関における安全文化の確立，患者との協力関係，組織の取り組み，職員間の協力，人・もの・環境の関係のあり方について述べられている．厚生労働省では，2000年の特定機能病院や医療関係団体に対する厚生労働大臣のメッセージ発信に始まり，様々な検討部会の報告を通して全国の医療機関に医療安全を啓発してきた．それから2年後の2002年の診療報酬改定では，医療安全管理体制を整備していない医療機関には減算が定められ，各施設において医療安全活動の実効性を高めることが義務化された．

　本稿では，講座「理学療法と医療安全」の第1回として，厚生労働省が示してきた指針の変遷と，臨床医療現場にいる私たち理学療法士に期待される役割について考察する．

参考文献

1）医療安全ハンドブック編集委員会：医療安全ハンドブック 1 医療安全管理のすすめ方，メヂカルフレンド社，2002

2）中島和江，児玉安司：ヘルスケアリスクマネジメント，医学書院，2000

3）米国医療研究品質局：医療安全ハンドブック③　より安全な医療を求めて，メヂカルフレンド社，2003

4）加藤尚武：インフォームド・コンセントの現在と未来．PTジャーナル32：815-818，1998

5）聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部理学療法科：理学療法とリスク管理マニュアル，三輪書店，2005

6）梁井　皎，他：リスクマネジメントシステム導入の動向．総合リハ33：309-315，2005

7）取違正人：医療機関が危険予知活動を導入するにあたって理解しておくべきこと．患者安全推進ジャーナル2006（12）：56-61，2006

8）南　和友：こんな医療でいいですか？，はる書房，2004