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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻11号

2006年11月発行

文献概要

特集 緩和ケアとしての理学療法

日本の文化と看取りの作法

著者: 藤腹明子1

所属機関: 1仏教看護・ビハーラ学会

ページ範囲:P.905 - P.910

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文化と看取り

 「文化」の定義は,文化人類学者の数もしくはそれ以上あるといわれる.また,文化人類学者によって位置づけられている文化と,私たちが日常生活のなかで用いる文化という語の間には少し概念の違いもあるようである.そこで,国語辞典で一般的な「文化」の概念について調べてみると,「人間の生活様式の全体.人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の総体.それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり,学習によって伝習されるとともに,相互の交流によって発展してきた.カルチュア」とあり,また「民族や社会の風習・伝統・思考方法・価値観などの総称で,世代を通じて伝承されていくものを意味する」(『大辞泉』小学館)とある.

 このことからも,人間の暮らしのあり方そのものが文化であり,それぞれの国・民族・地域・社会に固有の文化があることがわかる.固有の文化とは,他から与えられたのではなく,もとからあるものである.例えば,日本には日本固有の文化があり,イギリスにはイギリス固有の文化があるということになる.星野一正氏は,アメリカ式のインフォームド・コンセントや他のバイオエシックスの原則を日本の社会に適用するためには,それらの基本的価値を変えずに,日本人の国民感情に馴染むように適度の改良をすることが必要であるとしている.その理由として,日本人の特異な精神構造を挙げ,特に日本人の国民感情,それに強い影響を与えてきている日本の社会の文化や習俗に影響されている日本人の感性や価値観などに配慮した,日本に馴染むインフォームド・コンセントの必要性を提言している1).つまり,日本において,インフォームド・コンセントを取り入れる場合も,日本の文化を考慮した,より日本的な,あるいは日本に馴染むインフォームド・コンセントの在り方を考える必要性があるということになる.

参考文献

1)星野一正:インフォームド・コンセント―日本に馴染む六つの提言―,p168,丸善ライブラリー,1997
2)石田瑞麿:源信,p206,岩波書店,1978
3)神居文彰・田宮 仁・長谷川匡俊・藤腹明子:臨終行儀―日本的ターミナル・ケアの原点―,p108,渓水社,1993
4)中村 元,他(編):岩波仏教辞典,p501,岩波書店,1992
5)神居文彰・田宮 仁・長谷川匡俊・藤腹明子:臨終行儀―日本的ターミナル・ケアの原点―,pp436-447,渓水社,1993.なお,事例2については長文のため,一部要約して引用した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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