文献詳細
文献概要
特集 緩和ケアとしての理学療法
がん専門医療施設における理学療法士の役割
著者: 石井健1 辻哲也2
所属機関: 1静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科 2慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
ページ範囲:P.911 - P.916
文献購入ページに移動「がんセンターでリハビリテーション?」と疑問に思われる医療従事者も少なくないであろう.欧米ではリハビリテーション(以下,リハビリ)はがん治療の重要な一部分と認識されており,その必要性が認知されているにもかかわらず,わが国においては,診療科としてリハビリ科を有するがん専門病院は静岡県立静岡がんセンター(Shizuoka Cancer Center:以下SCC)1施設のみという,寂しい状況にある.
厚生労働省の発表した,2005年人口動態統計によると,死亡総数108万4012人のうち,最も多い死因はがん(30.1%)で, 1981年以降,連続1位となっている1).そのような中で,わが国ではがんに対して,1983年の「対がん10ヵ年総合戦略」の策定以来,現在の「第3次対がん総合戦略(2003年~)」,2006年6月の「がん対策基本法」の成立など,疾病対策上の最重要課題として対策が進められている.そういった国の施策に加えて,早期診断・早期治療などの医療技術の進歩もあり,がんの死亡率は,年々減少傾向にある.国立がんセンターの統計では,5年生存率が1990年代には男性では55%,女性では65%に達し,がん患者の半数は治るようになってきた2).そして,がんそのものの影響や手術・化学療法,そして放射線治療などの治療過程において受けた身体的・心理的なダメージに対して,障害の軽減,運動機能や日常生活活動の低下予防や改善,介護予防を目的として,介入を行う機会は増えてきている.その一方で,治療が奏効せず,再発から死に至るケースも少なくなく,そういった「がんと共存する時代」の中で,患者のQOLを高めるだけでなく,維持する必要がある.
本稿では,診療科としてリハビリ科を有する初めてのがんセンターである,SCC(2002年9月開院)における理学療法士の役割について,臨床経験を交えながら解説する.
参考文献
掲載誌情報