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講座 理学療法と医療安全 2
医療機関における転倒・転落と具体策―事故を予防するのは環境やシステムではなく,人である
著者: 川崎瑠美1
所属機関: 1北原脳神経外科病院・北原リハビリテーション病院(OT)
ページ範囲:P.953 - P.959
文献購入ページに移動“転ぶ”ということは,老若男女を問わず,何らかの要因が重なると日常的に遭遇し得るものであり,結果として重大な問題を引き起こす可能性を秘めている.何らかの疾患や障害をもつ方を対象にした時,このような日常的な事象をどう予防していくか,考えて実践していくことは非常に難しい.
近年,医療安全が重要視され,表1のように転倒・転落事故予防についても医療従事者の役割と責任が明確化されている.また,リハビリテーションの視点では,転倒・転落後の骨折をはじめ,その経験が不安感や恐怖心を生み,活動性低下を引き起こす転倒後症候群へ移行する可能性も含んでいることからも,重要なリスク管理項目の1つであると言える.
転倒・転落が他の医療事故と比べて特異な点は,そのきっかけが医療スタッフによって引き起こされるというよりも,患者様自身による場合がはるかに多いことである1).しかし,マンパワーを充足させて,常に監視をしておけば転倒・転落がすべて防げるわけではなく,行動抑制にもつながってしまう.過度の外的な転倒防止措置(身体抑制,行動抑制)は廃用を招き2),心身ともに自立した生活を取り戻すという入院目的から逸脱するため,本末転倒となる.
本稿では,主に脳血管障害の患者様を対象とし,筆者の所属する北原脳神経外科病院・北原リハビリテーション病院における現状を紹介しながら,転倒・転落事故予防について改めて考えていきたい.
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