icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻12号

2006年12月発行

文献概要

特集 末梢循環障害と理学療法

深部静脈血栓症・肺塞栓症に対する理学療法

著者: 津野良一1 元吉明1 福島美鈴1 谷岡博人1 浜窪隆1

所属機関: 1高知県立安芸病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.999 - P.1006

文献購入ページに移動
はじめに

 静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)は,深部静脈に血栓を生じる病態(深部静脈血栓症:deep vein thrombosis:DVT)と,その血栓が静脈壁から剝離して静脈血流に流れ込み,肺動脈を塞ぐ急性の病態(急性肺塞栓症:acute Pulmonary Embolism:aPE)を併せた総称である.従来は,(欧米と比較して)日本では発症の少ない疾患とされていたが,医師や医療従事者の認識の高まりや診断技術の進歩によって増加傾向にあり,数年前より「エコノミークラス症候群」あるいは「旅行者血栓症」としても注目されるようになった1)

 近年,急性期病院においては,感染症・低栄養・廃用症候群の予防を目的としたベッドサイドでの理学療法が行われ,早期離床が推進されている.しかし,ひとたび閉塞性DVTを発症すれば,一定期間の安静を要し,さらにaPEを誘発すれば発症直後より胸痛・呼吸困難・ショック状態となり,心停止に至るまで重篤化する症例も認められる.その結果,在院期間が長期化し,回復期リハビリテーション病棟への移行や自宅退院を困難にする重要な原因となる.そして,最近はDVTやaPE発症によってクリニカルパスにおけるバリアンスとなった症例も報告されるようになってきている2,3)

 本稿では,2004年4月(平成16年)に作成された「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」を踏まえて,その病態,成因,予防法,理学療法の適応・効果についてまとめ,最後に当院リハビリテーション科での取り組みについて述べる.

参考文献

1)中野 赳:ナースが知っておきたい予防ガイドラインの使い方.エキスパートナース20(9):28-62,2004
2)村田薫克,他:人工膝関節置換術におけるクリニカルパスのバリアンス分析.理学療法学30(大会特別号):227,2003
3)渡辺京子:リハビリテーション部門における安全管理.理学療法学32(大会特別号):266,2005
4)影山則正,他:下腿静脈の走行および構造と深部静脈血栓症の関係.Vascular Lab 2:266-269,2005
5)呂 彩子,他:致死性肺血栓塞栓症の原因としてのヒラメ静脈の重要性.Vascular Lab 2:270-272,2005
6)山本 学,他:人工膝関節置換術における血清凝固線溶系マーカーの検討.整形外科と災害外科52:489-492,2003
7)保坂純郎:下肢静脈疾患に対する新しい画像診断法の開発と臨床評価.J Nippon Med Sch 69:460-462,2002
8)佐々木賢太郎,他:深部静脈血栓症と臨床所見の関連性について―全人工股関節置換術後急性期における検討―.理学療法科学19:357-361,2004
9)丹波明博,他:静脈血栓症を防ぐ―予防ガイドラインをふまえて―.月刊ナーシング24(11):18-68,2004
10)肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会:肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインダイジェスト版,Medical Front International Limited,2004
11)中村真潮:わが国における肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドライン.日臨床会誌24:480-487,2004
12)越川めぐみ,他:静脈の整理―血栓症診療に必要な基礎知識―.Vascular Lab 2:273-275,2005
13)平井正文,他:静脈血栓症における弾性ストッキングの応用.Vascular Lab 2:317-320,2005
14)木下佳子:深部静脈血栓症予防対策.エキスパートナース20(9):41-53,2004
15)富士武史,他(編):整形外科術後肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症マニュアル,南光堂,2005
16)石田和也,他:リハビリテーション技術空圧マッサージ.臨床リハ14:560-561,2005
17)高木理彰,他:高齢者の大腿骨頸部骨折と深部静脈血栓症.総合リハ32:927-933,2004
18)山田道廣,他(編):図解理学療法技術ガイド,文光堂,1998
19)渡辺幸喜,他:足関節・足指の自動運動と足背部の血流変化について―深部静脈血栓症予防を目的として―.理学療法学31(大会特別号):403,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?