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特集 理学療法の展望2006 第Ⅰ部 理学療法,この10年の変遷と将来展望
理学療法学研究―10年の変遷と将来展望
著者: 木村貞治1
所属機関: 1信州大学医学部保健学科
ページ範囲:P.1127 - P.1134
文献購入ページに移動はじめに
わが国における理学療法の歴史は40年を越えた.この間,わが国の理学療法は,日本理学療法士協会の組織化の推進,生涯学習体制の整備,各種治療法の体系化や治療技術の進歩,基礎研究・臨床研究など研究活動の推進,多様な社会のニーズに応じた職域の拡大,国際協力活動や国際学会における研究発表などの国際化の推進等様々な活動を通じて,1 つの医療技術専門職として社会貢献を果たしてきた.
一方,この10年間においては,理学療法を取り巻く社会の構造と仕組みが大きく変化してきた.少子高齢化などの人口構成の変化,疾病構造の変化,市町村合併,2000年からの介護保険制度のスタートと2006年からの制度改革,そして,2006年からの診療報酬改定など,どれをとってもわが国の理学療法においては非常に重要な課題となっている.
さらに,IT化の推進によって,健康や医療に関心をもった国民自身が,医療情報をインターネットを通じて主体的に収集する傾向が高まってきたことにより,医療消費者側が医療に求める内容についても変化してきているのが実状であろう.
このような多様な社会の構造や仕組みの変化,ニーズの多様化や複雑化に伴って,保健・医療・福祉領域における理学療法に,そして理学療法士に対する社会の期待や要求は質的にも量的にも高まってきている.
特に医療分野においては,「何のためにそのような評価を行うのか?」,「なぜそのような治療法を選択するのか? 」,「その治療法を実施した場合どの程度の効果が期待できるのか?」というような患者やその家族側の基本的な疑問点に関して十分に説明を行い,納得していただいたうえで理学療法を遂行していくという患者中心医療1)を実践することが重要な課題となっている.
しかし,従来このような臨床場面における理学療法士の意思決定や治療理論に関しては,理学療法士の経験や慣習に基づいて行われてきた傾向が強く,質の高い臨床研究の結果を含めた科学的根拠に基づいて行われることは,まだ,決して多くはないのが実状ではないかと思われる.
このような理学療法における評価,治療,指導に関する意思決定を対象者の障害特性や社会的背景,そして,科学的な根拠に基づいて実践していくためには,質の高い基礎的・臨床的研究活動を幅広い分野で展開し,その成果を蓄積・公表していくことが重要な課題となる.
本稿では,このような状況を鑑み,理学療法分野の研究活動に関する過去10年間の変遷を振り返るとともに,理学療法研究に関する今後の将来展望について述べてみたい.
わが国における理学療法の歴史は40年を越えた.この間,わが国の理学療法は,日本理学療法士協会の組織化の推進,生涯学習体制の整備,各種治療法の体系化や治療技術の進歩,基礎研究・臨床研究など研究活動の推進,多様な社会のニーズに応じた職域の拡大,国際協力活動や国際学会における研究発表などの国際化の推進等様々な活動を通じて,1 つの医療技術専門職として社会貢献を果たしてきた.
一方,この10年間においては,理学療法を取り巻く社会の構造と仕組みが大きく変化してきた.少子高齢化などの人口構成の変化,疾病構造の変化,市町村合併,2000年からの介護保険制度のスタートと2006年からの制度改革,そして,2006年からの診療報酬改定など,どれをとってもわが国の理学療法においては非常に重要な課題となっている.
さらに,IT化の推進によって,健康や医療に関心をもった国民自身が,医療情報をインターネットを通じて主体的に収集する傾向が高まってきたことにより,医療消費者側が医療に求める内容についても変化してきているのが実状であろう.
このような多様な社会の構造や仕組みの変化,ニーズの多様化や複雑化に伴って,保健・医療・福祉領域における理学療法に,そして理学療法士に対する社会の期待や要求は質的にも量的にも高まってきている.
特に医療分野においては,「何のためにそのような評価を行うのか?」,「なぜそのような治療法を選択するのか? 」,「その治療法を実施した場合どの程度の効果が期待できるのか?」というような患者やその家族側の基本的な疑問点に関して十分に説明を行い,納得していただいたうえで理学療法を遂行していくという患者中心医療1)を実践することが重要な課題となっている.
しかし,従来このような臨床場面における理学療法士の意思決定や治療理論に関しては,理学療法士の経験や慣習に基づいて行われてきた傾向が強く,質の高い臨床研究の結果を含めた科学的根拠に基づいて行われることは,まだ,決して多くはないのが実状ではないかと思われる.
このような理学療法における評価,治療,指導に関する意思決定を対象者の障害特性や社会的背景,そして,科学的な根拠に基づいて実践していくためには,質の高い基礎的・臨床的研究活動を幅広い分野で展開し,その成果を蓄積・公表していくことが重要な課題となる.
本稿では,このような状況を鑑み,理学療法分野の研究活動に関する過去10年間の変遷を振り返るとともに,理学療法研究に関する今後の将来展望について述べてみたい.
参考文献
1) Stewart M, Brown JB: Patient-centredness in medicine. Evidence-based patient choice: inevi-table or impossible?amp; Oxford University Press, Oxford, pp97-117, 2001
2) Herbert RD, Sherrington C, Moseley AM , et al: Evidence-Based Physical Therapy. 理学療法学 30:431-439,2003
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4) 大峯三郎,緒方甫:理学療法研究の展望.PTジャーナル 30:861-868,1996
5) 川村次郎:リモデリング理学療法― 科学的理学療法の提案―.理学療法学 32:450-453,2005
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7) 木村貞治:「再生医療と理学療法との接点」についての展望.理学療法 22:1522,2005
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14) 木村貞治:理学療法における動作分析の概要.理学療法 19:883-887,2002
15) 木村貞治:臨床評価とデータベース.理学療法 8:107-117,1991
16) 木村貞治:EBPT の実践.理学療法学 31:263-266,2004
17) Maher CG, Sherrington C, Elkins M, et al:Chal-lenges for evidencebased physicaltherapy:accessing and interpreting high-quality evidence on therapy. Phys Ther 84:644-654, 2004
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