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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻13号

2006年12月発行

文献概要

特集 理学療法の展望2006 第Ⅰ部 理学療法,この10年の変遷と将来展望

理学療法学研究―10年の変遷と将来展望

著者: 木村貞治1

所属機関: 1信州大学医学部保健学科

ページ範囲:P.1127 - P.1134

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はじめに

 わが国における理学療法の歴史は40年を越えた.この間,わが国の理学療法は,日本理学療法士協会の組織化の推進,生涯学習体制の整備,各種治療法の体系化や治療技術の進歩,基礎研究・臨床研究など研究活動の推進,多様な社会のニーズに応じた職域の拡大,国際協力活動や国際学会における研究発表などの国際化の推進等様々な活動を通じて,1 つの医療技術専門職として社会貢献を果たしてきた.

 一方,この10年間においては,理学療法を取り巻く社会の構造と仕組みが大きく変化してきた.少子高齢化などの人口構成の変化,疾病構造の変化,市町村合併,2000年からの介護保険制度のスタートと2006年からの制度改革,そして,2006年からの診療報酬改定など,どれをとってもわが国の理学療法においては非常に重要な課題となっている.

 さらに,IT化の推進によって,健康や医療に関心をもった国民自身が,医療情報をインターネットを通じて主体的に収集する傾向が高まってきたことにより,医療消費者側が医療に求める内容についても変化してきているのが実状であろう.

 このような多様な社会の構造や仕組みの変化,ニーズの多様化や複雑化に伴って,保健・医療・福祉領域における理学療法に,そして理学療法士に対する社会の期待や要求は質的にも量的にも高まってきている.

 特に医療分野においては,「何のためにそのような評価を行うのか?」,「なぜそのような治療法を選択するのか? 」,「その治療法を実施した場合どの程度の効果が期待できるのか?」というような患者やその家族側の基本的な疑問点に関して十分に説明を行い,納得していただいたうえで理学療法を遂行していくという患者中心医療1)を実践することが重要な課題となっている.

 しかし,従来このような臨床場面における理学療法士の意思決定や治療理論に関しては,理学療法士の経験や慣習に基づいて行われてきた傾向が強く,質の高い臨床研究の結果を含めた科学的根拠に基づいて行われることは,まだ,決して多くはないのが実状ではないかと思われる.

 このような理学療法における評価,治療,指導に関する意思決定を対象者の障害特性や社会的背景,そして,科学的な根拠に基づいて実践していくためには,質の高い基礎的・臨床的研究活動を幅広い分野で展開し,その成果を蓄積・公表していくことが重要な課題となる.

 本稿では,このような状況を鑑み,理学療法分野の研究活動に関する過去10年間の変遷を振り返るとともに,理学療法研究に関する今後の将来展望について述べてみたい.

参考文献

1) Stewart M, Brown JB: Patient-centredness in medicine. Evidence-based patient choice: inevi-table or impossible?amp; Oxford University Press, Oxford, pp97-117, 2001
2) Herbert RD, Sherrington C, Moseley AM , et al: Evidence-Based Physical Therapy. 理学療法学 30:431-439,2003
3) 中澤住夫:理学療法の臨床研究とEBPTの課題.理学療法学 30:440-444,2003
4) 大峯三郎,緒方甫:理学療法研究の展望.PTジャーナル 30:861-868,1996
5) 川村次郎:リモデリング理学療法― 科学的理学療法の提案―.理学療法学 32:450-453,2005
6) 弓削類:骨の基礎医学的研究と再生医療の動向.理学療法学 32:530-533,2005
7) 木村貞治:「再生医療と理学療法との接点」についての展望.理学療法 22:1522,2005
8) 井上一知:再生医療とは―21世紀の夢の治療への展望―.理学療法 22:1523-1531,2005
9) 藤川孝満,福田正順,森野茂行,他:再生医療と理学療法の接点.理学療法 22:1567-1577,2005
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11) 文部科学省,厚生労働省:疫学研究に関する倫理指針,2004 http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/gaidorain-kentou/ekigaku.pdf
12) 長澤弘:理学療法の研究.社団法人理学療法士協会(編):理学療法白書2005,pp194-198,2006
13) 渡辺純:理学療法士の教育.社団法人理学療法士協会(編):理学療法白書2005,pp45-76,2006
14) 木村貞治:理学療法における動作分析の概要.理学療法 19:883-887,2002
15) 木村貞治:臨床評価とデータベース.理学療法 8:107-117,1991
16) 木村貞治:EBPT の実践.理学療法学 31:263-266,2004
17) Maher CG, Sherrington C, Elkins M, et al:Chal-lenges for evidencebased physicaltherapy:accessing and interpreting high-quality evidence on therapy. Phys Ther 84:644-654, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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