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特集 理学療法の展望2006 第Ⅱ部 理学療法の発展と課題
行動療法アプローチの発展と課題
著者: 小林和彦1
所属機関: 1筑波技術大学保健科学部
ページ範囲:P.1152 - P.1153
文献購入ページに移動 行動療法(behavior therapy)は,一般的には「ある個人の不適応状態に対して,その具体的行動を重視し,基礎研究で実証された学習(行動) 理論に基づいて,主として生活を取り巻く環境変数を操作することにより行動を適応的方向に変容させる諸技法の総称である」とされている.ここでいう“ 学習”とは, 学習心理学で定義されている「練習や経験に基づく比較的永続的な行動の変容過程」のことを指す.したがって,行動療法が扱う行動(行動変容)とは単発的な“ 遂行行動”ではなく永続性を伴う“ 習慣行動”ということになる.同様に,理学療法が対象としている,運動や動作パターン,日常生活活動なども狭義の“ 行動”であるが,現実的には“ 行動変容”という概念が欠如していた点は否めず,このことが理学療法の効果とその維持に関する問題と密接に関係している.
また,行動療法は他の心理療法と異なり,その基礎に健康な生活体の行動を研究する学問としての実験心理学を持っており,そのことも大きな特徴となっている.そこでは実験検証を経ていない仮説はあくまでも単なる仮説にとどめられ,検証を経た仮説のみが理論を構成し,その理論が演繹されて技法を形成する.科学的アプローチの基本的条件はその理論を構成する仮説が実験的に検証され,予測的有用性を有していることであることから,このことは行動療法を説明する上で重要なポイントである.
行動療法が実践され始めてから50 年以上を経た現在,人間を含む生活体の行動を説明する様々な仮説に対し実験検証が行われた膨大な量の証拠が存在し,その多くは心理学関係の専門学術誌に蓄積されている.また,一部の体系は臨床心理学のみならず,教育工学,行動生理学,行動薬理学,行動経営学など,多様な領域に取り入れられ発展し続けている.理学療法領域においては,その高い有用性にもかかわらず,応用例はまだ少なく,最近やっと関心が示されるようになったばかりのようである.
また,行動療法は他の心理療法と異なり,その基礎に健康な生活体の行動を研究する学問としての実験心理学を持っており,そのことも大きな特徴となっている.そこでは実験検証を経ていない仮説はあくまでも単なる仮説にとどめられ,検証を経た仮説のみが理論を構成し,その理論が演繹されて技法を形成する.科学的アプローチの基本的条件はその理論を構成する仮説が実験的に検証され,予測的有用性を有していることであることから,このことは行動療法を説明する上で重要なポイントである.
行動療法が実践され始めてから50 年以上を経た現在,人間を含む生活体の行動を説明する様々な仮説に対し実験検証が行われた膨大な量の証拠が存在し,その多くは心理学関係の専門学術誌に蓄積されている.また,一部の体系は臨床心理学のみならず,教育工学,行動生理学,行動薬理学,行動経営学など,多様な領域に取り入れられ発展し続けている.理学療法領域においては,その高い有用性にもかかわらず,応用例はまだ少なく,最近やっと関心が示されるようになったばかりのようである.
参考文献
1) 佐々木和義:第1章行動療法の概観.行動心理ハンドブック(小林重雄,春木豊,祐宗省三編),新版,培風館,pp1-8,1994
2) 久野能弘:行動療法,第1版,ミネルバ書房,pp13-14,1993
3) Alberto PA, et al(佐久間徹,他・監訳):はじめての応用行動分析,二瓶社,pp3-22,1993
4) 河嶋孝,他:1章行動研究の基礎.行動心理ハンドブック(杉本助男,佐藤方哉,河嶋孝編),第1版,培風館,pp3-27,1994
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