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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻13号

2006年12月発行

文献概要

特集 理学療法の展望2006 第Ⅱ部 理学療法の発展と課題

メタボリックシンドロームと理学療法

著者: 石黒友康1

所属機関: 1健康科学大学理学療法学科

ページ範囲:P.1154 - P.1155

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1.メタボリックシンドロームとは

 2005年4月,日本内科学会総会において日本肥満学会,日本動脈硬化学会,日本糖尿病学会など8学会より「メタボリックシンドローム診断基準」が発表されて以来,メタボリックシンドローム―内臓脂肪症候群―(以下MetSと略す)という言葉が話題に上らない日はない.特に2006年5月8日「平成16年国民健康・栄養調査の概要」が報道発表されてから,新聞紙上で数回にわたって特集が組まれるなど,現在最もホットな話題といえる.この調査によると現在40~74歳におけるMetSの有病者は約940万人,予備軍者数は約1,020万人,併せて約1,960万人がMetSの有病者と推定されている.日本人は欧米人と異なり,高度な肥満の割合が低いため,海外に比べ少なめに評価される可能性を指摘されているが,男性の2人に1人が,女性では5人に1人がMetSを強く疑われ,とりわけ40歳代の男性では40%以上がMetSの有病者と考えられている.日本人糖尿病患者で今回のMetS基準に合致する人数は,全体の30%程度と考えられている.

 さて,MetSは①内臓脂肪蓄積,②脂質代謝異常(高TG血症,低HD血症),③高血圧,④糖代謝異常の複合状態を指すが,この概念の源流は,1987年松沢らにより提唱された「内臓脂肪症候群」にある.それ以降1988年Reaven による「シンドロームX」,1989年Kaplaの「死の四重奏」が発表された.さらにDeFronzo はインスリン抵抗性を加えた病態を「インスリン抵抗性症候群」と呼び,内臓肥満を共通の基盤とし代謝異常が集積した病態を「マルティプルリスクファクター症候群」と総称するようになった.したがって肥満や糖尿病といった代謝領域においては,MetSたる考え方はかつてから存在し,決して新しい概念というわけではない.しかしながらこれまでMetSは,糖代謝異常⇔インスリン抵抗性⇔高インスリン血症(糖毒性)といった図式で,もっぱら2型糖尿病の発症の危険因子として論じられることが多かった.では今なぜMetSが注目されているかというと,MetSを構成する各因子はそれぞれ動脈硬化症の原因となるが,これらが集積することにより,血管障害リスクがいっそう増大することが明らかになったことにある.Haffneら1)は,2型糖尿病の心血管障害の死亡率は対照群に比べ40%高くなることを示している.

参考文献

1) HaffnerSM, Lehto S, R▲nnemaa T, et al:Mortarity from coronary heart disease in subject with type 2 diabetes and in nondiabetic subject with and without prior myocardial infarction. N Engl J Med 339:229-234,1998
2) 伊藤裕:メタボリック症候群と心血管病変メタボリックドミノの概念.分子心血管病 6:150-156,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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