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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻13号

2006年12月発行

文献概要

特集 理学療法の展望2006 第Ⅱ部 理学療法の発展と課題

嚥下障害の理学療法

著者: 吉田剛1

所属機関: 1本島総合病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.1156 - P.1157

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1.嚥下障害研究の近年の発展と現状

 嚥下障害は,小児から高齢者までの脳障害や神経・筋疾患,舌がん術後など広い範囲で,生命維持に直接関わる問題として注目されてきた.近年は,栄養サポートチーム(NST)の登場で,理学療法士も関与することが増えている.脳卒中患者の約半数は,初期に嚥下障害を併発し,唾液処理の不良による誤嚥性肺炎は生命予後を左右することが多い.胃瘻栄養へシフトして食物誤嚥は減少しても,唾液処理についての根本的解決策は見当たらない.

 嚥下についての研究は,メカニズムの解明から,代償的嚥下法の開発など様々な報告がある.評価手段として,ビデオ嚥下造影検査(VF)やビデオ内視鏡検査(VE)が用いられるようになってからの進歩は著しい.近年Palmerらは,プロセスモデルを用いて咀嚼を伴う嚥下の動態を説明し,VF時に咀嚼負荷条件を追加する必要性について示唆を与えた1).また,Shakerらが1997年に提唱した喉頭挙上不全による食道入口部開大不全に対し,頭部挙上練習で舌骨上筋を強化する方法2)は,本邦でも取り入れられている.2005年にBurnettらは,嚥下に合わせて自分でスイッチを入れる練習後に針電極による喉頭挙上筋への電気刺激療法を行い,その効果を報告した3).その際,表面電極法では逆に喉頭が下制したという報告もしており,われわれにとって注意すべき示唆が含まれている.2003年のStambolisらの報告4)は,VFで頸部固定によっても嚥下運動が影響を受けることを示唆しており,後述した筆者らの嚥下運動阻害因子に関する仮説を裏付けた.

参考文献

1) Palmer JB, et al:Coordination ofmastication and swallowing. Dysphagia 7(4):187-200, 1992
2) Shaker R, et al:Augmentation of degulutitive upper esophageal sphincter opening in theelderly by exercise. Am J Physiol 272:G1518-1522, 1997
3) Burnett TA, et al:Self-triggered functional elec-trical stimulation during swallowing. J Neuro-physiol 94:4011-4018, 2005
4) Stambolis V, et al:The effects of cervical bracing upon swallowing in young, normal, healthy volunteers. Dysphagia 18(1):39-45, 2003
5) 古澤正道,他:中枢性口腔周辺運動機能障害への運動療法―治療成績―.理学療法学 16:77-83,1989
6) 吉田剛,他:喉頭位置と舌骨上筋群の筋力に関する臨床的評価指標の開発およびその信頼性と有用性.日摂食・嚥下リハ会誌7(2):143-150,2003
7) 吉田剛,他:脳血管障害による摂食・嚥下障害の評価と理学療法.PTジャーナル 38:259-268,2004
8) 冨田昌夫:生態心理学的概念に基づいた運動療法.丸山仁司(編):神経障害系理学療法学,医歯薬出版,pp257-278,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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