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特集 物理療法の有効性とリスク管理
物理療法の有効性とリスク管理
著者: 杉元雅晴1
所属機関: 1神戸大学医学部保健学科
ページ範囲:P.91 - P.97
文献購入ページに移動物理療法は,皮膚を介して物理的刺激を生体組織に与え,生理的な潜在能力(自然治癒力)を引き出す治療である.物理療法の適応と禁忌は,多くの成書で適応とされている疾患や症候群を記載し,伝統的に漫然と引き継がれてきている.例えば疼痛緩和の作用機序を明確に示さずに,物理療法の適応として神経痛(神経根痛,帯状疱疹など)と記載され,有効な時期や刺激条件も不明確なままである.また,特定の物理的刺激が悪影響を与える組織・臓器や急性炎症期の治療を禁忌としている.物理療法手段による標的細胞や組織への作用機序を明確にすると,有効(適応)と無効,禁忌が見えてくる.物理的刺激強度が組織への損傷レベルに達したり,標的細胞や組織に作用しない出力強度では有効性を認めない.物理療法は逸脱した自然治癒過程を軌道修正させる手段なので,疾患の病理学的検討が欠かせない.つまり,物理療法の有効性は疾患や症候群ごとの適応ではなく,分子生物学的視点から標的細胞や組織への刺激の有効性について検討し,物理療法刺激を加える時期が重要となる(図1).
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