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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻4号

2006年04月発行

雑誌目次

特集 脳卒中治療ガイドラインと理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.251 - P.251

 「脳卒中治療ガイドライン2004」が発表され脳卒中治療に携わる各方面で注目を集めている.理学療法士にとっても,有用で興味深い内容が示されているのは周知のとおりである.とりわけリハビリテーション(以下,リハビリ)の項目は,われわれにとって重要であり,ここに示された指針は,今後の脳卒中の理学療法に少なからず影響をもたらすことが予測される.

 そこで本特集では,まずリハビリに関するガイドラインの概要を呈示し,現在施行されている臨床的アプローチとの関連を論じていただいた.さらに今回のガイドラインと照合してどのような点が課題として考えられるのかについても検討していただいた.

脳卒中治療ガイドラインの概要と展望

著者: 正門由久 ,   里宇明元 ,   木村彰男

ページ範囲:P.253 - P.258

はじめに

 従来の医療では,「厳密な証拠に基づく意思決定」よりも「経験に基づく意思決定」が主流であったが1),近年,EBM(evidence based medicine)が提唱され,わが国でも急速に広まりつつある2).リハビリビリテーション(以下,リハビリ)医学・医療の分野においてもその導入が期待されている1,3).このようななかで,様々な疾患に対して最新の治療法を集積し,EBMの具体的な支援策となり得る診療ガイドラインを作成することが求められている2).ガイドラインとは,医師が特定の臨床上の問題に対して,適切なヘルスケアを提供できるよう系統的に作成された勧告である.その目的は,ヘルスケア過程の改善,臨床の均質化,医療資源利用の最適化,医師への最新知識の提供と科学的証拠の活用の促進にある2)

 本稿では,本邦で昨年出版された「脳卒中治療ガイドライン20044)」策定までの経緯・概要を示し,今後のガイドライン改定の方向およびリハビリ医学・医療の課題について述べる.

脳卒中治療ガイドラインと急性期の理学療法

著者: 大塚功

ページ範囲:P.259 - P.265

はじめに

 脳卒中治療ガイドライン20041)が本邦で刊行され,リハビリテーション(以下,リハビリ)の体制,をはじめ,主な障害と問題点に対するリハビリについてのエビデンスならびにガイドラインが示されて1年余りが経過した.加えてわれわれの臨床場面では,ICF(国際生活機能分類:international classification of functioning, disability and health)の活用やクリニカルパスの導入などにより,障害や治療体系の標準化も進んだ.しかしその一方で,標準化・効率化された医療体制においても,運動機能と生活機能障害を治療対象とする,個別性の高いリハビリサービスの提供も求められている.そのような状況において,脳卒中患者に対する効果的なリハビリシステムをどのように構築し,実践していくか,また理学療法(以下,PT)の介入はどうあるべきであろうか.

 本稿では,脳卒中急性期におけるPTと,本ガイドラインに示されている指針に関係する臨床システムと今後の課題について述べる.

脳卒中治療ガイドラインと回復期・維持期の理学療法

著者: 三宮克彦 ,   鈴木修一 ,   大久保智明 ,   河島英夫 ,   野尻晋一 ,   渡邊進 ,   中西亮二 ,   山永裕明

ページ範囲:P.267 - P.274

はじめに

 2004年3月に発刊された「脳卒中治療ガイドライン2004」(以下,ガイドライン)は,わが国独自の脳卒中に対する治療ガイドラインとして誕生した.過去約10年間の文献を脳卒中合同ガイドライン委員会が決められた基準で評価し,脳卒中一般に関する管理,病態別に脳梗塞,脳出血,クモ膜下出血の対する治療,そしてリハビリテーション(以下,リハ)治療にわけて論じている.全編約230ページのうち,リハに割かれたページ数は48ページにのぼり,理学療法分野においても治療の考え方をニュートラルな視点で捉えるには有用である.筆者に与えられたテーマである「回復期から維持期の理学療法」については,回復期リハを「座位耐久性が高まりリハ室での運動が可能になった時期から,最大の機能回復を目指して行われ」,維持期リハは,「獲得した機能をできるだけ長期に維持するために実施するもの」として位置付け,グレードBとして推奨している1).回復期リハは,専門的なリハ医療機能を有する医療施設で行われることが多い.また,維持期リハは,介護老人保健施設で行われる在宅復帰のためのリハ,在宅生活を支える通所リハ・訪問リハから終末期まで,利用者の状況に応じて多様なリハの関わり方がある.

 本稿では脳卒中に関して①地域完結型診療体制と急性期・回復期・維持期の連携,②当院回復期リハ病棟の現状,③当法人訪問リハの現状,④当院でリハ施行後訪問リハまで関わった1ケースを紹介しながら,ガイドラインの妥当性と課題について考える.

脳卒中治療ガイドラインと歩行障害の理学療法

著者: 寺西利生 ,   才藤栄一 ,   伊藤直樹 ,   寺尾研二 ,   金田嘉清

ページ範囲:P.275 - P.280

はじめに

 情報技術の進歩によるインターネット普及は,短時間で大量の情報を得られる環境を私たちに提供した.また,医療界においては,PubMedやPEDro,Cochrane Libraryといった信頼できるデータベースの整備が進み,その検索により最新のエビデンスを容易に得ることが可能となった.さらに,PEDro scoreなどのデータベースによる研究の信頼性や妥当性評価は,信頼性の高い大規模なRCTs(randomized controlled trials:無作為化比較試験)へと研究者を誘導し,多くの良質な研究が日々登録されている.

 さて,1999年に日本脳卒中学会および日本神経治療学会において脳卒中ガイドライン作成の必要性が提起され,脳卒中関連5学会(日本脳卒中学会,日本神経治療学会,日本神経学会,日本脳神経外科学会,日本リハビリテーション医学会)によってエビデンスに基づいたガイドラインの作成が進めらた.そして,2004年4月に「脳卒中治療ガイドライン2004」として脳卒中治療の指針が示された.このガイドラインに示されたエビデンスは2002年頃までの内容であり,その後,多くのsystematic review(系統的レビュー)1~5)やRCTsが発表されている.

 本稿では,歩行障害の理学療法を中心にガイドラインの概要を説明し,その後発表されたエビデンスを概説するとともに,課題について述べる.

脳卒中治療ガイドラインと上肢機能障害の理学療法

著者: 弓岡光徳 ,   川田悟史 ,   植野拓

ページ範囲:P.281 - P.288

はじめに

 「脳卒中治療ガイドライン20041)」によれば,上肢機能障害に対するリハビリテーションとして,「1.麻痺上肢に対して多くの課題(道具を用いた手指の巧緻動作,消去・迷路などの机上課題,物体の移動などの粗大運動)を含む積極的な訓練プログラムを繰り返し実行させることや,日常的に使用を促すことが強く勧められる(グレードA).2.中等度の麻痺筋,特に手関節背屈筋の筋力増強には,電気刺激が勧められる(グレードB)」を推奨している.またエビデンスとして,「中等度以下の麻痺の患者に対しては,非麻痺側上肢の抑制による強制使用,多くの課題(標的を指し示す,指のタッピング,消去課題,硬貨を裏返す,迷路,ネジを締める,物体の移動など)を含む積極的な訓練プログラムにより,麻痺側上肢を中心とした機能改善が得られる.また比較的重度の麻痺でも,抗重力運動ができるレベルであれば,両手動作の繰り返し課題により機能改善が得られる.手関節の自動背屈運動がみられる患者では,通常の筋収縮を誘発する電気刺激や,運動にトリガーされる電気刺激により筋力増強が得られる」,と述べている.今回4症例の脳卒中患者の理学療法を通じて,できるだけ脳卒中治療ガイドラインを踏まえた治療を行い結果を検討した.なお,麻痺筋に対する電気刺激と非麻痺側上肢の抑制による強制使用は行わなかった.

とびら

青年海外協力隊体験

著者: 春木チカ子

ページ範囲:P.249 - P.249

 4月になると,街中で青年海外協力隊(以下,協力隊)の募集ポスターが目に付く.本当は年2回の募集なので,10月にも目にしているはずなのだが,なぜか4月募集のほうが目立つような気がする.数年前の春,私も興味を引かれて募集説明会に足を運んだ.

 その当時,理学療法士という職種は応募者が募集を下回っており,需要が高いと聞いて,ますます興味がわいてきた.しかし,卒業と同時に就職した今の職場は,良い先輩方に恵まれ,環境も良かったので,退職してまで行く決心はつかなかった.

症例報告

運動療法中の換気補助目的にNPPVを用いて奏功した慢性閉塞性肺疾患患者

著者: 野添匡史 ,   間瀬教史 ,   永井絵里 ,   笹沼里味 ,   眞渕敏

ページ範囲:P.289 - P.293

はじめに

 非侵襲的陽圧換気法(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)は気管内挿管をせずに,陽圧換気を行う方法であるが,運動療法中の換気補助目的にNPPVを併用することの有用性が報告されている1~4).今回,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)患者に対して,運動耐容能改善を目的にNPPV併用下での全身持久力トレーニングを行った.NPPV併用により,高強度負荷,長時間の全身持久力トレーニングが可能となり,運動耐容能,日常生活動作(activities of daily living;ADL),抑うつ傾向の改善が認められたので報告する.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

レーザー療法

著者: 篠原英記

ページ範囲:P.297 - P.297

レーザーの定義と開発

 レーザー(LASER)という用語は,「放射の誘導放出による光の増幅作用(Light Amplification by Stimulated Emission Radiation)」の頭文字をとって命名された.この作用によって発振した光をレーザー光線と呼んでいる.この作用は自然に起こるのではなく人間が誘導するので,レーザーは人工的な光である.レーザーの開発は,1916年にアインシュタインが誘導放出という概念を提案したことに端を発し,その後1954年,タウンズがマイクロ波を人工的に増幅したメーザー(MASER:Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation)を開発し,レーザー開発に先鞭をつけた.その後,バゾフ,プロコロフ,ショーロウらのメーザーおよびレーザーの研究開発が続いた.1960年にメイマンが合成ルビーを用いてレーザー光を発振する技術を開発し,レーザーの各分野への実用化の草分けとなった.

 現在では,炭酸ガス,YAG,アルゴン,He-Ne,GaAsなどを媒介としたレーザーがある.これらのレーザーは情報通信や様々な電子機器,精密機械の開発に利用されている.医療の分野では外科,眼科,歯科,理学療法科などで利用されている.レーザーは,熱反応を引き起こす高出力レーザー(60mW以上;炭酸ガス,YAG,アルゴンレーザー)と熱反応をほとんどもたらさない低出力レーザー(コールドレーザー:60mW未満;He-Ne,GaAsレーザー)に分けられている.医療界では,高出力レーザーは主に外科・眼科でレーザーメス・網膜の着床などに用いられ,低出力レーザーは歯科や理学療法で鎮痛・消炎などに用いられている.

新人理学療法士へのメッセージ

臨床活動の中から感じよう

著者: 新野浩隆

ページ範囲:P.298 - P.299

 新たに理学療法士になられた皆さん,おめでとうございます.当センターは伊豆半島のど真ん中に位置し,温泉あり・紅葉がきれいな山々あり・きれいな水が流れる川ありという大自然の中で,臨床・教育・研究を三本柱として毎日の職務に精励しております.

 さてこのたびは,「新人理学療法士へのメッセージ」ということで,私の4年間の経験を振り返って書かせていただきたいと思います.

入門講座 診療記録の書き方・1

診療記録の基本

著者: 伊藤恭子

ページ範囲:P.301 - P.308

はじめに

 あらゆる分野において情報公開が求められつつある昨今,医療分野においても例外ではなく,患者本人から請求があれば原則として診療記録の開示に応じなければならない.また多くの職種で構成されるリハビリテーション医療においては,チームスタッフ間での情報交換が重要かつ不可欠である.したがって,診療記録は第3者に分かりやすい記載方法と内容であることが求められる.

 そこで本稿では理学療法における診療記録の法的な意義,目的,基本的な記載内容などについて述べた上で,SOAP形式による記載法について解説する.

 なお,詳細は日本理学療法士協会発行の「理学療法診療記録ガイドライン」1)をご参照いただきたい.

講座 運動学の定説を問う・1

人体のテコ―人体に第2のテコはありやなしや

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.309 - P.317

 30年以上も前になるが,運動学の授業で「人体に第2のテコはない」と学んだ.講師は,本邦の理学療法創成期に助っ人として招聘されたいわゆる外人講師の1人,フランス人のEric Viel先生である.「関節の生理学」を著したKapandjiとも親交があるようで,Kinesiologyを専門とされていた.フランス語なまりの英語ではあったが,イラストを描くのが上手だということもあって,授業はわかりやすくかつ論理的できわめて説得力があった.テコの授業では,つま先立ちでの下腿三頭筋と肘屈曲時の腕橈骨筋の作用を取り上げ,これらは「第2のテコ」といわれてきたが,前者は「第1のテコ」であり,後者は「第3のテコ」であると明快な説明とともに言い切ったのである.それ以来,筆者はこの問題がすでに解決済みであると思い続けてきた.しかしながら,腕橈骨筋は「第2のテコ」として何年か前の国家試験に出題され,また下腿三頭筋は多くの教科書で「第2のテコ」として紹介されている.

 一体何が原因でこのような混乱が生じたのか.理論と計算式で容易に解決できる力学の現象にもかかわらず,なぜ長い間統一的な見解ができあがらなかったのか.不思議といえば不思議である.おそらく自身の中では解決している人たちも,あえてこの問題を取り上げて論文にする労をとらなかったからであろう.加えて,今回わかったことであるが,例えば,いつ頃どのような経緯でテコの種類が第1から第3まで決められたのかとか,バランスのテコ,力のテコ,スピードのテコといった呼び方は広く認められた名称なのかといった一般的なテコの歴史や雑学については,少なくとも身近にある運動学関係の本には書かれていない.物理や機械工学系に幅を広げてみても資料にできる記録にたどり着かない.おそらくこれがテコの概念的混乱の最大要因と思われるが,記録がないわけはないはずで,もし何らかの資料をご存じの読者がおられたら是非ともお教えいただきたい.

あんてな

第41回 日本理学療法学術大会(in群馬)の企画と開催地の紹介―♪群馬よいとこ一度はおいで

著者: 黒澤美奈子 ,   冨田和秀

ページ範囲:P.319 - P.326

草津よいとこ一度はおいで!

 「草津よいとこ,一度はおいで!」の湯もみ歌で有名な草津温泉を持つ群馬県で,第41回日本理学療法学術大会が開催されます.大会の地は水と緑と詩のまちの前橋市,群馬が郁々たる新緑の香りに包まれ,空気が最も美味しい季節の平成18年(2006)年5月25~27日の3日間わたり開催されます.

 本学術大会の会場は,利根川が流れるすぐ脇に隣接する巨大なドームのグリーンドーム前橋です.6階建ての近代建築の外観が印象的で,一目でわかります(図1).本会場は延べ床面積6万m2,収容人数2万人という国内最大規模のイベントホールで,競輪や相撲,室内陸上などのスポーツをはじめ,国際的なイベントも開催されるコンベンションホールとしても活用されています.本学術大会のロゴマーク(図2)は,尾瀬で有名な水芭蕉を中心に据え,輪郭は群馬県の鳥瞰図,ちょうど鶴が大空に舞っているような形をしています.さらに「理学療法の可能性」に向け,われわれの協会が大きく舞い上がるという想いも重ねてあります.

文献抄録

亜急性期脳卒中患者の有酸素運動トレーニングと歩行練習を併用した歩行改善効果について

著者: 斎藤信夫

ページ範囲:P.328 - P.328

 目的:本研究の目的は,歩行練習(ボバース法)にトレッドミル上有酸素運動トレーニングを併用した場合と歩行練習のみの介入において,歩行能力に与える影響と介入後の効果の持続(18週後)について明らかにすることである.

 対象:年齢50~75歳,初回発症者,発症後6週以内,最低12mの歩行が可能もしくは近位監視レベル,Barthel Index50~80,心血管系の問題が安定し,他の中枢・骨関節疾患がない本研究の目的を理解された片麻痺患者50名.

多発性硬化症患者における膝伸展筋力計測器を用いた筋力および運動性疲労の評価:新しい疲労指数

著者: 武井圭一

ページ範囲:P.328 - P.328

 目的:多発性硬化症(以下,MS)の主要な症状として筋力低下と筋疲労が挙げられる.運動性疲労の測定方法として,30秒間持続収縮時の力-時間曲線を用いたものが考案されており,これまでに信頼性が検討されているが十分ではない.本研究の目的は,MS患者に対する等尺性最大筋力の測定方法と,3つの疲労指数の検者内信頼性を検討すること.また,主観的疲労感(以下,FSS)と疲労指数の関連を検討することである.

 方法:対象は,軽度から中等度のMS患者28名(平均年齢:44±7歳)であった.測定項目は,膝伸展・屈曲の5秒間等尺性最大筋力,および30秒間筋持久力(Ab HUR;Oy Kokkola, Finland)を記録し,この結果からDjaldettiらにより考案された疲労指数を算出(FI1),さらにFI1から筋収縮開始後5秒間の結果を省いた疲労指数(FI2),最大筋力に達するまでの結果を省いた疲労指数(FI3)の3つの指数を算出した.FSSにはKruppにより考案された質問紙票を用いた.統計解析は,SAS ver. 8.2を使用し,最大筋力および疲労指数の再現性を級内相関係数にて検討した.3つの疲労指数間の差の検討には,分散分析を用いた.また,最大筋力,疲労指数,およびFSS間の関係をスピアマンの相関係数にて検討した.

パーキンソン病患者の歩行開始時における動的姿勢制御

著者: 鎌田一葉

ページ範囲:P.329 - P.329

 目的:パーキンソン病の重症度が異なる患者間で,歩行開始時における足圧中心(以下,COP)と身体の質量中心(以下,COM)の距離に関して調査した.

 対象:同意を得られた本態性パーキンソン病患者43名とした.

Audio-Biofeedbackによる両側前庭障害患者のバランス改善への効果

著者: 菅原智恵子

ページ範囲:P.329 - P.329

 目的:両側前庭障害(以下,BVL)患者のバランスを改善するためAudio-Biofeedback(以下,ABF)システムの有効性を評価する.このシステムは体振動情報を記号化して音に変換し,聴覚から感覚情報を提供して姿勢の安定性を改善しようとするものである.

 対象:9人のBVL患者(男性4人,女性5人),平均年齢55歳(38~73歳)と,年齢・性別が同等の9人を非BVL群として設定した.

書評

―宗形美代子著―「宗形テクニック―痛みに効くセルフコントロール術」

著者: 金子操

ページ範囲:P.294 - P.294

 理学療法士の皆さん「あなたの体は大丈夫ですか?」「自己管理をされていますか?」

 なぜ冒頭からこんな問いかけをしたかというと,このたび三輪書店から発刊された書籍「宗形テクニック―痛みに効くセルフコントロール術」は,単に患者治療に使えるだけでなく,セラピスト自身を含めたすべての人の健康を守る自己管理の術が記された良書であり,一度は目を通していただきたい1冊と考えるからである.

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編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.332 - P.332

 平成18年度診療報酬改定は理学療法士にとって大変厳しい内容となった.特に看過できないのは,国家試験による資格者ではなく,ある「講習会」受講者にも保険点数の算定を認める,というものである.消費者(患者)のニーズにこたえるという名分が掲げられているが,理学療法サービスの質的保証はいかに担保されるのであろうか?目先のニーズにこたえようとすることが,将来的にはかえって患者へのサービス内容を低下させる懸念と不安が消えないのである.この点については十分な関心をもって対応する必要があろう.

 さて,本特集は,上記の「理学療法効果」にかかわる意味でも重要な「脳卒中治療ガイドライン2004」に関するものである.EBMが重要であるとの認識はいまや共通のものとなったが,その具体的展開は十分とはいえないのではないだろうか.理学療法士のかかわる対象の中でも大きな領域である「脳卒中」についてガイドラインが示されたことは,議論のスタートが可能となったという点できわめて重要である.まず,正門論文ではガイドライン策定に当たっての作業過程と概要について述べていただき,エビデンスが乏しい分野こそリハビリテーション医学がなすべき研究領域であるとの指摘をされた.さらに本邦のガイドラインでは医師・統計学者のみが作成にかかわっているので,今後は多くの医療関連職種の参加を求めている.大塚論文では急性期からの理学療法におけるガイドラインとの関係を述べ,脳卒中の病型ごとに適切なリスク管理を行い,可能な限り早期に運動の再学習に取り組むべきであるとの指摘がなされている.三宮論文では,回復期,維持期における立場から,急性期からの連携とチームワークの重要性を論じている.寺西論文では,歩行障害に対する理学療法に関して,ガイドラインにおける推奨項目について詳細なレビューを行い,多角的に検討されている.下肢装具に関するエビデンスの報告がほとんどないという指摘は,臨床上その有用性が明らかなだけに「驚くべき」ことであった.弓岡論文では上肢機能障害に対して,ガイドライン推奨の方法を適用した4症例の分析検討が論じられており,興味深い報告となっている.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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