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特集 創傷治癒と理学療法
創傷治癒の生理と全身管理
著者: 竹中秀也1 岸本三郎1
所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚病態制御学
ページ範囲:P.337 - P.343
文献購入ページに移動皮膚における創傷治癒は,臨床的には正常の創傷治癒と異常な創傷治癒に分類される.さらに,異常な創傷治癒は難治性皮膚潰瘍(慢性創傷)とオーバーヒーリング(過剰治癒)に分けられる.難治性皮膚潰瘍は下腿潰瘍,糖尿病性潰瘍や褥瘡が含まれ,その形成機序は肉芽組織形成が障害されるか,再生表皮の潰瘍部への進入が障害されるかである.オーバーヒーリングには肥厚性瘢痕やケロイドなどが含まれ,その機序の1つに創傷治癒過程でアポトーシス(細胞死)がうまく誘導されなかったことに起因する可能性が考えられている.
一方,創傷治癒を経時的に観察すると,創内では劇的な変化が起きており,組織学的には急性炎症期,肉芽組織形成期(増殖期)を経て瘢痕期(成熟期,再編期)に移行し,創傷治癒は終息する1~4).われわれは,これら一連の流れを「創傷治癒カスケード」と呼んでいる1)(図1).実際の創傷においてはこれらの過程がオーバーラップし,また,混在している.
創傷には手術創,外傷,熱傷,褥瘡などいろいろな種類があるが,どのような創傷であっても基本的な創傷治癒過程は同じである.また,創傷の治癒は,栄養状態や糖尿病といった全身的因子や感染といった局所的因子によって影響を受ける.これらの要因により,創傷治癒が遷延化し,治療抵抗性となった皮膚潰瘍を難治性潰瘍(慢性創傷)と総称する.創傷管理にあたっては,創傷治癒過程のメカニズムと創傷治癒に影響する因子を理解し,個々の症例において最適な管理を行う必要がある.本稿では,皮膚創傷治癒メカニズムと全身的因子,局所的因子など創傷治癒を遷延させる要因について概説する.また,創傷治療,創傷管理について考察する.
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