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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻5号

2006年05月発行

文献概要

特集 創傷治癒と理学療法

創傷治癒の生理と全身管理

著者: 竹中秀也1 岸本三郎1

所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚病態制御学

ページ範囲:P.337 - P.343

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はじめに

 皮膚における創傷治癒は,臨床的には正常の創傷治癒と異常な創傷治癒に分類される.さらに,異常な創傷治癒は難治性皮膚潰瘍(慢性創傷)とオーバーヒーリング(過剰治癒)に分けられる.難治性皮膚潰瘍は下腿潰瘍,糖尿病性潰瘍や褥瘡が含まれ,その形成機序は肉芽組織形成が障害されるか,再生表皮の潰瘍部への進入が障害されるかである.オーバーヒーリングには肥厚性瘢痕やケロイドなどが含まれ,その機序の1つに創傷治癒過程でアポトーシス(細胞死)がうまく誘導されなかったことに起因する可能性が考えられている.

 一方,創傷治癒を経時的に観察すると,創内では劇的な変化が起きており,組織学的には急性炎症期,肉芽組織形成期(増殖期)を経て瘢痕期(成熟期,再編期)に移行し,創傷治癒は終息する1~4).われわれは,これら一連の流れを「創傷治癒カスケード」と呼んでいる1)(図1).実際の創傷においてはこれらの過程がオーバーラップし,また,混在している.

 創傷には手術創,外傷,熱傷,褥瘡などいろいろな種類があるが,どのような創傷であっても基本的な創傷治癒過程は同じである.また,創傷の治癒は,栄養状態や糖尿病といった全身的因子や感染といった局所的因子によって影響を受ける.これらの要因により,創傷治癒が遷延化し,治療抵抗性となった皮膚潰瘍を難治性潰瘍(慢性創傷)と総称する.創傷管理にあたっては,創傷治癒過程のメカニズムと創傷治癒に影響する因子を理解し,個々の症例において最適な管理を行う必要がある.本稿では,皮膚創傷治癒メカニズムと全身的因子,局所的因子など創傷治癒を遷延させる要因について概説する.また,創傷治療,創傷管理について考察する.

参考文献

1)岸本三郎:皮膚創傷治癒―そのメカニズムと治療―.日本皮膚科学会雑誌113:1087-1093,2003
2)Singer AJ, Clark RA:Cutaneous wound healing. N Engl J Med 341:738-746, 1999
3)森口隆彦:創傷治癒のメカニズムと影響因子.波利井清紀,他(編):創傷の治療―最近の進歩,pp1-13,克誠堂出版,2005
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9)倉本 秋:創傷治癒の局所因子.穴澤貞夫,他(編):ドレッシング―新しい創傷管理,pp41-50,へるす出版,2005
10)河合修三:外用療法.玉置邦彦,他(編):最新皮膚科学体系2,pp58-67,中山書店,2002
11)岡 博昭:創傷治癒をめぐるあらたなコンセプト Wound Bed PreparationとMoist Wound Healing.医学のあゆみ213:737-740,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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