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特集 認知症へのアプローチ
認知症の理学療法アプローチ―身体特性と運動療法について
著者: 小幡太志1 佐藤三矢1 弓岡光徳2 小幡亜沙美3 旭重憲4 佐藤林平4
所属機関: 1吉備国際大学保健科学部理学療法学科 2姫路獨協大学医療保健学部理学療法学科 3うちおグリーンクリニック 4鴨方第一胃腸科外科
ページ範囲:P.529 - P.534
文献購入ページに移動日本の高齢化の状況として,日本の総人口は2051年に1億人を割り,2095年には6,000万人まで減少すると予測されている.出生率は2050年には1996年に比べ3割強も少なくなり,加えて平均寿命の伸びと少子化により,日本の高齢化はさらに加速する.2015年には国民の4人に1人が,また2050年には3人に1人が高齢者となり,諸外国もかつて経験したことのない本格的な高齢社会が到来するものと予測されている.
2002年の将来人口推計(厚生労働省)によれば,寝たきりや認知症,または虚弱となり介護や支援を必要とする高齢者は200万人であり,65歳以上人口の11.8%を占める.要介護高齢者は今後,2010年には390万人,2025年には520万人に達するとされている.同時に認知症高齢者も増加の一途をたどり,2025年には約70万人に上るとされている.
そのような状況の中,認知症に関して,現時点でその病態生理については様々な報告がされているが,その発症原因などは未だ明らかにされていない部分が多い.2000年に厚生労働省(旧厚生省)が発表した「平成11年老人保健施設調査の概況」によれば,介護老人保健施設入所者の85.7%が認知症高齢者であると報告されている.また同年の理学療法の対象者が有する疾患調査では,認知症高齢者は第5位であり,理学療法の対象としての位置づけがなされている.
高齢者に関する理学療法研究は数多くなされており,現在その運動療法については活動量を増やすという点で効果が認められている.しかし対象を認知症高齢者にしぼった場合には未だ明確なエビデンスは少ない.また,生理的な機能面でその効果を捉えようとした場合には,疾患の特徴である問題行動や認知機能低下により,継続的な測定は困難である.
筆者らはこの点に着目し,認知症高齢者の身体能力の確認とともに,その効果的な運動処方について検討した.本稿ではその概要を紹介する.
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