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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻7号

2006年07月発行

文献概要

特集 認知症へのアプローチ

認知症予防と運動の関係

著者: 川副巧成1

所属機関: 1社会福祉法人春秋会 リエゾン長崎

ページ範囲:P.535 - P.541

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はじめに

 認知症の高齢者は,年々増加傾向を示している.2005年は約189万人,2020年には約292万人に達すると予測されている1)(図1).それゆえに,認知症予防は関心が高く,今般,介護保険改正で掲げられた「介護予防」の重点課題とされている.さらに,認知症予防の最重要ターゲットは,健常と認知症の境界状態にある高齢者とされ(図2),地域での啓蒙・啓発から実践に至る様々な過程において認知症予防に対する積極的な取り組みが推進されている.

 一方,認知症予防には,従来から関わりと集団活動を介した精神・心理面への働きかけが効果的とする報告が多かった.しかし昨今,脳の機能低下や,それに伴う低活動状態による運動能力の低下を防ぎ,生活機能を維持することが重要とされ,その手段として,運動の有効性に関する報告も多くみられるようになった2,3)

 そこで本稿では,介護予防の背景と,筆者らが行ってきた要介護高齢者に対する筋力向上トレーニングの実践内容の双方を踏まえ,認知症予防と運動の関係について述べる.

参考文献

1)厚生省老人保健福祉局企画課:痴呆性老人対策推進の今後の方向―痴呆性老人対策に関する検討会報告・資料,中央法規出版,1994
2)征矢英明,他:高齢者の記憶力改善に及ぼす軽運動の効果―利根町研究.老年精医誌16:73,2005
3)加藤守匡,他:身体運動による痴呆予防の可能性.Cognition and Dementia 2:123-127,2003
4)東京都老人総合研究所(編):(続)介護予防完全マニュアル,pp38-64,東神堂,2005
5)山崎史郎:介護予防事業の展望と介護保険の動向.介護保険情報12:8-11,2003
6)目黒賢一:軽度認知障害(MCI)にどう対処すべきか.Clinician 543:963-968,2005
7)重松良祐:高齢男性の日常生活に必要な身体機能を評価するテストバッテリの作成.体育学研究45:225-238,2000
8)重松良祐:高齢邦人女性の身体機能を評価するテストバッテリの作成.日本公衆衛生誌1:14-23,1999
9)松田晋哉:地域で展開する介護予防―活動の継続とその動機づけ.月刊総合ケア15:12-17.2005
10)Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR:“Mini-Mental State”;a practicalmethod for grading the congnitive state for the clinician. J Psychiat Res 12:189-198, 1975
11)森 悦郎,他:神経疾患患者における日本語版Mini-Mental Stateテストの有用性.神経生理学1:82-90,1985
12)Dubois B, et al:Frontal assessment battery at bedside. Neurology 55:1621-1626, 2000
13)川島隆太,他:前頭前野機能発達・改善システムの研究開発.独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究推進事業中間報告:1-9,2003
14)吉田 甫,他:痴呆を伴う高齢者に対する認知リハビリテーションの効果に関する予備的研究.立命館人間科学研究6:1-9,2003
15)養老孟司:バカの壁,pp30-31,新潮社,2003
16)西平賀昭:高齢者の脳と運動.体育の科学54:668-692,2004
17)久保田 競:運動と前頭前皮質.体育の科学52:934-941,2002
18)加藤守匡:運動時の前頭前皮質における血流変化からみた脳の賦活.体育の科学52:956-959,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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