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文献概要
特集 歩行練習
半側空間無視を伴う片麻痺患者の歩行練習
著者: 伊藤克浩1
所属機関: 1山梨温泉病院理学療法課
ページ範囲:P.613 - P.617
文献購入ページに移動はじめに
半側空間無視は体外空間の半側にある対象を無視する症状で,視空間失認の一型として位置づけられている.半側空間無視は脳損傷者の日常生活活動(ADL)やリハビリテーションの阻害因子として,これまで多くの研究がなされてきた.一般に,右大脳半球の頭頂後頭葉接合部の病変で生じるとされているが,右後頭葉や前頭葉の病変,視床や被殻などの皮質下の病変でも生じることが知られている.また,左大脳半球病変で生じた報告もある.半側空間無視は経過中に改善あるいは消失することがしばしばあるが,残存する場合も少なくない1).また,半側空間無視はそれだけが単独で現れることはほとんどなく,病識欠如も伴う.
そして歩行練習で困難性を感じる症例は,「左のものを見落とす」という問題だけでなく,無頓着さ,行為のペーシング障害などの高次脳機能障害の合併により危険性を伴うので,監視歩行レベルから先に進むことが容易でない症例が多い.また,線分抹消テストのような机上テストで半側空間無視症状が疑われる片麻痺者の多くが,姿勢緊張の問題やバランスを含めた「定位」の問題を合併しており,それらの身体機能の改善により左側からの情報に着目できるようになる場合も多い.
半側空間無視は体外空間の半側にある対象を無視する症状で,視空間失認の一型として位置づけられている.半側空間無視は脳損傷者の日常生活活動(ADL)やリハビリテーションの阻害因子として,これまで多くの研究がなされてきた.一般に,右大脳半球の頭頂後頭葉接合部の病変で生じるとされているが,右後頭葉や前頭葉の病変,視床や被殻などの皮質下の病変でも生じることが知られている.また,左大脳半球病変で生じた報告もある.半側空間無視は経過中に改善あるいは消失することがしばしばあるが,残存する場合も少なくない1).また,半側空間無視はそれだけが単独で現れることはほとんどなく,病識欠如も伴う.
そして歩行練習で困難性を感じる症例は,「左のものを見落とす」という問題だけでなく,無頓着さ,行為のペーシング障害などの高次脳機能障害の合併により危険性を伴うので,監視歩行レベルから先に進むことが容易でない症例が多い.また,線分抹消テストのような机上テストで半側空間無視症状が疑われる片麻痺者の多くが,姿勢緊張の問題やバランスを含めた「定位」の問題を合併しており,それらの身体機能の改善により左側からの情報に着目できるようになる場合も多い.
参考文献
1)前島伸一郎:半側空間無視.第9回認知神経学会資料,http://plaza.umin.ac.jp/~akita/pro28.htm
2)佐々木正人:アフォーダンス新しい認知の理論,岩波書店,1994
3)佐々木正人・三嶋博之(編・訳):アフォーダンスの構想,東京大学出版会,2001
4)伊藤克浩:病棟診療における理学療法士の専門性.理学療法学32:151-154,2005
5)伊藤克浩:回復期リハビリテーション病棟における機能障害への取り組み.PTジャーナル39:407-412,2005
6)柏木正好:環境適応,青海社,2004
7)西野仁雄,柳原 大(編):運動の神経科学,pp72-87,NAPLimited,2000
8)泰羅雅登:視覚のイメージング:頭頂葉.神経進歩48:214-221,2004
9)山本伸一・伊藤克浩,他:移動総論.活動分析研究会ハンドブック,青海社,2005
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