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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻8号

2006年08月発行

文献概要

特集 歩行練習

運動失調および平衡障害を伴う患者の歩行練習

著者: 溝部朋文1 萩原章由1 松葉好子1 斉藤均1 今吉晃1 前野豊1 山本澄子2

所属機関: 1横浜市立脳血管医療センター 2国際医療福祉大学大学院

ページ範囲:P.619 - P.628

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はじめに

 運動失調は,感覚―運動系のフィードバックの障害といわれ1),中枢である小脳系,深部感覚の伝導路である脊髄・末梢神経の病変によって生じる.その結果,協調性のある円滑な身体運動が実施できない状態となり,これらは四肢運動失調と体幹失調に分けることができる2).このうち,立位歩行といったバランス能力に関与が大きいのは体幹失調であり3),運動失調症の患者が立位歩行を円滑かつ安全に行うためには,体幹の動きをコントロールし,姿勢を制御することがより重要であるといえる.運動失調性歩行を捉えた表現として,よろめき歩行や酩酊歩行,ワイドベースが一般的に使われており4),バランス不良による易転倒性や動きの拙劣さがその特徴である.

 一般に協調性の評価は,重心の揺れや測定障害の程度や,Mann肢位などある定められた支持基底面の中で姿勢を保てるか否か,という視点でなされることが多い.これらの評価は重症度の判定には有効であるが,これらの視点から「なぜ動作や姿勢保持が不安定もしくは拙劣なのか」を評価し,それを基に治療介入を行うことは容易ではない.そこで筆者らは,運動失調の姿勢制御を解釈し,治療に結びつけるためにはモデルや理論が必要と考え,運動学・運動力学を用いて分析・モデル化を行った.本稿では脳血管障害による運動失調の歩行障害に焦点を当て,歩行を獲得するために重要とされる体幹を中心とした姿勢制御に着目し,運動学・運動力学的視点から,評価モデルと理学療法における治療戦略を述べる.

参考文献

1)福井圀彦,他:脳卒中最前線,医歯薬出版,1987
2)奈良 勲,内山 靖:姿勢調節障害の運動療法,医歯薬出版,2004
3)内山 靖,他:運動失調症の躯幹協調能と歩行・移動能力.総合リハ18:715-721,1990
4)田崎義昭,他:ベッドサイドの神経の診かた,南山堂,1966
5)斉藤明彦:脊椎の分節的安定性のための運動療法―腰痛治療の科学的基礎と臨床,エンタプライズ,2002
6)江原義弘,山本澄子:歩き始めと歩行の分析,医歯薬出版,2002
7)江原義弘,山本澄子:関節モーメントによる歩行分析,医歯薬出版,1997
8)山嵜 勉,他:整形外科理学療法の理論と技術,メジカルビュー,1997
9)月城慶一,他:観察による歩行分析,医学書院,2005
10)服部一郎,他:リハビリテーション技術全書,医学書院,1974
11)竹森節子:平衡機能検査.理学療法7:173-181,1990

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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