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文献概要
特集 歩行練習
低酸素脳症患者の歩行練習
著者: 尾谷寛隆1
所属機関: 1国立循環器病センターリハビリテーション部
ページ範囲:P.635 - P.641
文献購入ページに移動低酸素脳症の成因と病態生理
脳は低酸素状態に極めて弱い臓器である.低酸素状態により引き起こされる様々な中枢神経症候を“低酸素脳症”と呼ぶ1).低酸素脳症の成因には,①脳血流低下によるもの(心停止など循環不全によるもの),②呼吸障害によるもの,③貧血によるもの,④細胞内の呼吸酵素系障害によるものなどがある(表1)2).
大脳皮質,海馬,小脳,大脳基底核などは低酸素状態に非常に脆弱な部位であるため,低酸素脳症ではこれらの部位が特に損傷されやすい.さらに循環不全に起因する脳血流の低下による低酸素脳症では,血行動態の違いにより損傷を受けやすい領域があり,大脳では前・中・後大脳動脈領域支配の分水嶺(watershed)である頭頂-後頭葉接合部や側頭-後頭葉接合部などがこれに相当する.
脳は低酸素状態に極めて弱い臓器である.低酸素状態により引き起こされる様々な中枢神経症候を“低酸素脳症”と呼ぶ1).低酸素脳症の成因には,①脳血流低下によるもの(心停止など循環不全によるもの),②呼吸障害によるもの,③貧血によるもの,④細胞内の呼吸酵素系障害によるものなどがある(表1)2).
大脳皮質,海馬,小脳,大脳基底核などは低酸素状態に非常に脆弱な部位であるため,低酸素脳症ではこれらの部位が特に損傷されやすい.さらに循環不全に起因する脳血流の低下による低酸素脳症では,血行動態の違いにより損傷を受けやすい領域があり,大脳では前・中・後大脳動脈領域支配の分水嶺(watershed)である頭頂-後頭葉接合部や側頭-後頭葉接合部などがこれに相当する.
参考文献
1)山口武典,他:低酸素脳症.Clin Neurosci 11:86-88,1997
2)杉原 浩:1.低酸素脳症の病理と病態生理.吉尾雅春(編):理学療法MOOK1 脳損傷の理学療法1 第2版,pp142-146,三輪書店,2005
3)今井 保:2.低酸素脳症と理学療法.吉尾雅春(編):理学療法MOOK1 脳損傷の理学療法1 第2版,pp147-155,三輪書店,2005
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11)柴 喜崇:パーキンソン病に対する理学療法のキーポイント.理学療法19:828-835,2002
12)橋本圭司,他:重度認知・行動障害者に対する相互乗り入れチームアプローチ.リハ医学39:253-256,2002
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