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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル40巻9号

2006年09月発行

文献概要

とびら

GOAL!に向かって

著者: 桑野寛之1

所属機関: 1福井厚生病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.711 - P.711

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 朝,8時半.リハビリテーション(以下,リハビリ)室のドアが開くと同時に,パチンコ屋の開店,はたまたデパートのバーゲンの日と同じような光景で,開室を待ちわびた患者様が押し寄せてきます.患者様はベッドの場所取りやマッサージの順番札取りに必死なのですが,その中には,いつも「痛くて歩けない」「足に力が入らない」とおっしゃっている方達が混じっており,オリンピックの陸上100mで金メダルを取れそうな速さで目標に向かって走っている姿を見ると,「リハビリとは」と考えさせられる反面,最近何か納得できるような気持ちになっています.

 私はこの春までの3年間,病院系列のデイサービスに管理者として赴任していました.3年前に「新しいデイサービスの立ち上げをしてほしい」と病院から言われた時は安易な気持ちで了承しましたが,よくよく話を聞いてみると,開設する地域はデイサービスの激戦区であり,また病院からは距離があるため利用者様の紹介はあまり得られないという悪条件からのスタートでした.唯一の好条件としては,「リハビリ中心型のデイサービス」ということで広報がしやすかったことですが,私はなにぶん「理学療法士(以下,PT)が天職!」と思ってやってきたので,「営業」というものに縁がありませんでした.どうなることかと思っていましたが,「持ち前の明るさ(?)」と「あまりくよくよ考えないB型の性格」が功を奏してか,何とか予定より早い時期に立ち上げることができました.しかし,この3年間はほとんどPTとしてリハビリをした記憶がなく,「送迎」「営業」「担当者会議」「契約」「苦情対応」等々の業務がほとんどであり,利用者様の状態が悪くなった時は一緒に救急車に乗っていくことも何度かありました.「自分はPTじゃなかったのか」などと小さなことを考えている余裕もなく,常に「収益」という怪物が後ろから追ってきており,「より良い介護サービスの提供」「新規の利用者様の獲得」を目指す上でスタッフとの考え方の違いに葛藤があったり,大きなミスを起こしたことに対してスタッフ全員に怒鳴ったり,ケアマネ・家族からの良い評価・感謝をされた時は全員を褒め上げたりと,さすがのB型でも自分の感情の起伏に自分が追いつけないくらい,毎日がもがくように必死でした.その時期に会った友人から「何か最近生き生きしてるぞ」と言われ,その時は全然意味がわかりませんでしたが,後になって思うと「苦しくても目標を持って一生懸命やっている時」には思っている以上の力が発揮でき,一番輝いているのかなと思いました.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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