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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル41巻11号

2007年11月発行

雑誌目次

特集 メタボリックシンドロームと理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.875 - P.875

 シンドロームX,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,マルチプルリスクファクター症候群,内臓脂肪症候群などと呼ばれてきた生活習慣病や動脈硬化性疾患の元凶とされる病態が,ようやくメタボリックシンドロームという言葉に落ち着こうとしている.メタボリックシンドロームを正確に理解し,理学療法がメタボリックシンドロームに対して何ができるのか,今こそはっきりとした道筋を示す時が来た.メタボリックシンドロームに対する理学療法士の役割や実際の対応,将来展望について,臨床現場から教育現場まで最新の知見をまとめていただいた.

メタボリックシンドロームとは

著者: 前田朝美 ,   寺本民生

ページ範囲:P.877 - P.884

メタボリックシンドロームとは

1.メタボリックシンドローム基準作成の経緯

 近年,生活習慣の変化により心筋梗塞,脳梗塞といった動脈硬化性疾患が増加し,これら動脈硬化性疾患の発症をいかに予防するかが重要な課題となっている.これまでの大規模臨床試験によって,LDL-コレステロール(以下,LDL-C)低下療法が動脈硬化性疾患の予防,総死亡の抑制につながることが証明され,LDL-Cは動脈硬化性疾患の危険因子として確立されたものとなった.しかし,LDL-C低下療法の動脈硬化性疾患予防効果は約30%と,決して十分とはいえない.そこで,LDL-Cとは独立した病態,つまりLDL-Cに次ぐハイリスク群を認識することが重要となった.

 生活習慣が大きく影響する肥満,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常は互いに高頻度で合併し,複数の危険因子を合併すると相乗的に動脈硬化性疾患の危険性を高めることが知られている.1988年にReavenらが高血圧,脂質異常,耐糖能異常を一個人に集積した症候群をシンドロームXと提唱したのをはじめ,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,内臓脂肪症候群など動脈硬化性疾患の危険因子が複数集積した病態がハイリスク群として注目された.わが国でも,肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常が3~4つ重なると冠動脈疾患(CAD)の発症率が約30倍になるという事実から1)(図1),これら危険因子が集積したものをマルチプルリスクファクター症候群と称し,動脈硬化性疾患のハイリスク群として重要視してきた.

メタボリックシンドロームに対する理学療法の現状と課題

著者: 石黒友康

ページ範囲:P.885 - P.892

はじめに

 メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)とは,①内臓脂肪蓄積,②脂質代謝異常〔高トリグリセリド(TG)血症,低HDLコレステロール血症〕,③高血圧,④耐糖能異常(インスリン抵抗性)などが個人に集積することにより,動脈硬化を基盤とした心血管イベントが発症しやすい状態を指す疾患概念である.社会保険健康事業財団による「平成16年度 政府管掌健康保険生活習慣病予防検診におけるメタボリックシンドロームリスク保有者について1)」では,BMI 25以上,耐糖能異常,高血圧,高脂血症をリスク項目とした場合,受診者347万人(男性228万人,女性119万人)中,男性では全体の30.2%がBMI 25以上であり,そのうち41.1%はリスクを2項目以上保有し,女性では全体の18.5%がBMI 25以上であり,そのうち21.6%はリスクを2項目以上保有していることが明らかになった.さらにリスク保有状況をみると,BMI 25以上でリスクを2項目以上保有する男性の場合,44.2%が高脂血症と高血圧を,23.7%が高血圧,高脂血症,耐糖能異常を保有し,女性では38.1%が高血圧と耐糖能異常を,37.6%が高脂血症と高血圧を保有しているという結果であった.同様に「平成16年 国民健康・栄養調査の概要2)」では,40~74歳におけるメタボリックシンドロームの有病者は約940万人,予備軍は約1,020万人,あわせて1,960万人がメタボリックシンドロームの有病者と推定されている.またこの調査から男性の2人に1人が,女性では5人に1人がメタボリックシンドロームを強く疑われ,とりわけ40歳以上の男性では40%以上がメタボリックシンドロームの有病者であると考えられている.ちなみに日本人の糖尿病患者で,メタボリックシンドロームの基準に合致する人数は,全体の30%程度と考えられている.

 現在メタボリックシンドロームは,わが国の保健・医療行政における重要課題として,積極的な取り組みが行われている.とりわけ「健康日本21」で掲げられている運動への取り組みに対しては,運動療法を専門とする理学療法士として,積極的に参加する必要性がある.そこで本稿では,これまで行われた耐糖能異常や糖尿病に対する生活習慣改善の疫学研究の成績から,メタボリックシンドロームの予防・改善と身体運動の効果を類推し,さらに運動効果発現の生化学的メカニズムの概略について述べる.

ケースレポート

1.メタボリックシンドロームを伴う脳血管疾患に対する理学療法

著者: 平木幸治

ページ範囲:P.893 - P.896

はじめに

 脳血管疾患の理学療法は,機能障害や能力障害に焦点を当て,ADLの改善や自立に向けたアプローチが重要であることに異論はない.しかし,機能障害が軽度でADLが自立している症例には,脳血管疾患発症の基盤となっているメタボリックシンドロームや生活習慣病の管理など,二次予防(再発予防)を主眼に入れたアプローチも考慮されるべきである.本稿では,二次予防を目的として理学療法を施行したメタボリックシンドローム合併脳梗塞症例を提示し,その経過とアプローチ法について述べる.

2.メタボリックシンドロームを伴う心疾患に対する理学療法

著者: 齊藤正和

ページ範囲:P.897 - P.901

はじめに

 2005年4月に8学会(日本動脈硬化学会,日本肥満学会,日本糖尿病学会,日本高血圧学会,日本循環器学会,日本内科学会,日本腎臓病学会,日本血栓止血学会)の代表メンバーから成るメタボリックシンドローム診断基準検討委員会より,肥満(男性;腹囲85cm以上,女性;腹囲90cm以上)に加えて,高血圧(収縮期血圧≧130mmHgかつ/または拡張期血圧85mmHg以上),脂質代謝異常(高トリグリセリド≧150mg/dlかつ/または低HDLコレステロール血症<40mg/dl),耐糖能異常(空腹時血糖≧110mg/dl)の中から2項目を満たす症例をメタボリックシンドロームとする診断基準が公表された.これら,肥満,高血圧,脂質代謝異常,耐糖能異常などの因子は虚血性心疾患発症に対する冠危険因子としても周知の事実である.

3.メタボリックシンドロームを伴う運動器疾患(変形性股・膝関節症)に対する理学療法

著者: 横地正裕

ページ範囲:P.903 - P.908

はじめに

 メタボリックシンドローム,2型糖尿病などの代謝疾患を中心とした生活習慣病を伴う運動器疾患患者の中には,生活習慣病が症状増悪,治療阻害,およびリスク増大因子となっている症例がみられる.特にメタボリックシンドロームの基盤としての肥満症は,運動器疾患の中でも変形性膝関節症の発症,進行と関連が深い1~4).当院では,そのような症例に対して生活習慣病サポートチームによる介入を実施している.

 本稿では,メタボリックシンドロームを伴う変形性股・膝関節症例に対するチーム介入と理学療法介入の内容を紹介するとともに,介入による効果についても報告する.

4.メタボリックシンドロームに対する生活習慣の修正への理学療法士の関わり

著者: 井垣誠 ,   謝紹東 ,   谷口勝茂 ,   西岡正明 ,   石田岳史

ページ範囲:P.909 - P.914

はじめに

 医療機関におけるメタボリックシンドロームに対する運動療法の現状として,糖尿病,高血圧,高脂血症,メタボリックシンドロームの診断だけでは,保険診療上,理学療法料として算定できないことは周知の通りである.外来診療の包括請求において,生活習慣病指導管理料(200床未満の病院)が唯一の算定方法である.しかし,糖尿病患者の教育入院のシステムや糖尿病教室に理学療法士が関わる施設は多く,日本糖尿病療養指導士の資格を取得して活躍する理学療法士も増えてきた.脳血管障害や冠動脈疾患など重篤な疾患のリスクとなるメタボリックシンドロームに対して,理学療法士は運動療法の介入という手段により,生活習慣の修正に寄与できる能力をもつ.本稿では,当院における生活習慣病患者に対する運動療法の取り組みについて述べる.

5.メタボリックシンドロームに対する理学療法士養成校での教育の実際

著者: 大平雅美

ページ範囲:P.915 - P.920

はじめに

 運動を中心とした生活習慣改善の指導は,メタボリックシンドローム(metabolic syndrome:MetS)の管理において重要な位置づけを占めており1),理学療法士も活躍すべき領域である.しかし,わが国の診断基準が発表された2005年以降の理学療法学術大会での関連報告は,5演題とまだ少ない.この一因として,理学療法の歴史的背景,疾病予防(一次予防)領域での実績不足とともに,卒前教育の問題が考えられる.そこで,本稿では筆者らが行ってきたメタボリックシンドロームに関連する生活習慣病予防・治療に関する学内での教育内容や,教育方法の現状と課題について述べる.

とびら

暁のランニング

著者: 荒木茂

ページ範囲:P.873 - P.873

 ずいぶん昔であるが,新米自衛官が腰痛で来院したことがあった.当時はまだ上官の“しごき”がひどかったようで,同じ班の同僚がへまをすると,班全員が連帯責任でしごかれたそうである.いろいろなしごきがあるらしいが,一番きついのが「暁のランニング」だという.これは上官が「よし」と言うまで延々とランニングをさせられるもので,いつ終わるかわからない.後1周かもしれないし,100周かもしれない.ゴールのないランニングは拷問のようなものだそうだ.

 私たち理学療法士は,無意識のうちに患者さんや実習生に「暁のランニング」をやらせてはいないだろうか.人は後10周とか,後10分とかゴールを示されるとがんばれるものである.特に最近の実習生は,昔とは違いゴールのないレポートに多大な時間を費やしているようである.担当患者さんはわずか2~3人で,病院ではほとんどレポートを書いていると聞くと,病院実習はずいぶん様変わりしたと感じる.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

脳低温療法

著者: 井上剛

ページ範囲:P.921 - P.921

 低酸素,外傷,出血などで損傷を受けた脳に対し,脳保護作用や頭蓋内圧低下作用を目的として,損傷後早期に,一定期間,体温(脳温)を32~34℃まで低下させる低体温療法を脳低温療法という1).以前は「低体温療法」という用語が用いられていたが,最近は「脳低温療法」の用語が用いられるようになってきている.

学校探検隊

自分に厳しくある理学療法士の育成を目標に

著者: 小林聖 ,   鈴木敏和 ,   大場美恵 ,   竹内恵理子 ,   山本武 ,   太箸俊宏 ,   川口春子 ,   竹下直樹

ページ範囲:P.922 - P.923

本校の紹介

 本校は浜名湖の東に位置し,今年の4月から政令指定都市になった浜松市の北区にあります.昨年常葉学園が創立60周年を迎え,本校も12年目を迎えました.また,今年の4月には系列校の常葉学園菊川高校が春の選抜高校野球で全国制覇を果たしたことで,「常葉」の名も「ジョウヨウ」ではなく「トコハ」と呼んでいただけるようになりました.

 本校は,理学療法学科以外にも作業療法学科があり,2年前から新たに鍼灸学科,柔道整復学科を設立しました.すべての学科において「技術・学力」と「病める人への奉仕の心」を身につけることを教育理念として掲げています.また,専門学校としては珍しく,常葉リハビリテーション病院という附属病院もあり,臨床場面での勉学に役立てています.

全国勉強会紹介【新連載】

横須賀三浦PT懇話会

著者: 米津亮

ページ範囲:P.924 - P.924

 編集室より:本号より,全国各地のユニークな勉強会を紹介する連載がスタートしました.自分も会に参加してみたい方,つくりたい方は本連載で立ち上げや運営のノウハウを教わってしまいましょう!


活動について

(1)目的

 横須賀・三浦地区で理学療法士として従事する方の交流を促進し,専門職としての知識を高めるとともに,施設間の連携を深める目的で実施しています.

(2)勉強・研修内容

 事前に症例報告を中心とした演題募集を行い,プログラムを構成しています.これまでに,脳性麻痺から心疾患および通所リハビリテーションなど幅広い領域が発表されています.また,専門的知識を高めるため,研究法や筋萎縮性側索硬化症の基礎知識,脳卒中片麻痺の動作分析などのレクチャーを実施しました.

入門講座 検査測定/評価・5

感覚

著者: 永冨史子

ページ範囲:P.925 - P.930

感覚検査の適応と意義

 単純な要素的刺激を主観的に「感じる」と認める働きを,感覚(sensation)といい,刺激の強度,質,時間的経過などを弁別する働きまでも含むと知覚(perception)という.物の概念や識別など,さらに高次の働きを認知(cognition)という.一般に感覚と知覚は区別なく扱われ,検査されることが多い.感覚は,感覚受容器―感覚神経―感覚中枢(感覚野)のネットワークで「感じ」られる.この経路のいずれかに何らかの病態が疑われるとき,感覚検査の適応となる.

 理学療法における感覚検査の意義を表1に示す.感覚障害は神経学的症状であると同時に,治療内容・リスク管理に影響する重要な情報である.感覚障害が重篤ならば運動学習の阻害因子となり,また外傷・熱傷などのリスクも高い.病変部位や感覚障害の程度は治療計画にも影響する.

講座 「複雑系」と理学療法・2

身体運動研究と複雑系

著者: 長崎浩

ページ範囲:P.933 - P.937

運動学と運動制御論

 身体運動の研究領域は,リハビリテーション医療では運動学(kinesiology)であるが,他方で身体運動制御論(human motor control)と呼ばれる分野がある.両者は実のところ別々の伝統や発想に基づいて研究されてきており,おおよそ事情は今日でも変わりがない.研究を進める際には,この差異に気付いておく必要がある.

 第二次世界大戦後の米国では「通信と制御」の工学(サイバネティクス)が勃興したが,身体運動制御論もこの影響のもとに始まった.認知心理学でいう「情報処理論的アプローチ」がこれに当たり,運動研究も心理学者が中心になって開拓されてきた.キネシオロジーがリハビリテーション医療を,あるいは生体力学がロボットや人間工学を応用分野と想定しているのに比べて,身体運動制御論の関心は人間行動を「理解する」ことだといってよいかもしれない.理解してどうするのか.自然の妙に「ただ驚く」のである.

症例報告

応用行動分析学に基づく入浴動作練習法の検討―高次脳機能障害を有する脳血管障害患者に対する介入効果

著者: 宮本真明 ,   長光恵 ,   鈴木誠 ,   森下史子

ページ範囲:P.941 - P.945

 要旨:応用行動分析学に基づいた日常生活活動練習により,左半側空間無視と全般性注意障害,病識の低下を主症状とする高次脳機能障害を呈した症例の入浴動作が改善するかについて,シングルケースデザインを用いて検討した.介入に先立ち,日常生活活動練習の個別性を考慮し,症例に即した入浴動作チェック表を作成した.先行刺激として入浴動作において認められた粗雑動作および危険行動を10項目に細分化し,明確な目標を設定した.また,時間遅延法を用い,自発的な目標行動の出現を促し,行動の改善が認められた場合には,賞賛とグラフの提示を行い強化刺激とした.

 その結果,粗雑動作・危険行動が減少したことから,応用行動分析学に基づき先行刺激と後続刺激を整備した入浴動作練習は,本症例に対し効果的であったと考えられた.また,明確な目標の設定は高次脳機能障害を呈した本症例におけるモチベーションの維持にも効果的であった可能性が考えられた.

学会印象記

―第41回日本作業療法学会―「ともに感じ,支え,生きる」

著者: 中村春基

ページ範囲:P.947 - P.949

 「ともに感じ,支え,生きる」をテーマに,第41回日本作業療法学会が岩瀬義昭学会長(鹿児島大学保健学科教授)のもと,鹿児島の地で開催された.鹿児島県作業療法士会においては初めての全国学会開催であり,準備・運営などで様々なご苦労があったと思うが,総体としての印象は「すがすがしい」といった,ある種の清涼感がただよう学会であった.

 さて,日本作業療法学会(全国学会)は毎年この時期に開催され,空模様をみながらの学会運営となる.今学会においても,6月22~24日の3日間で度々雨にみまわれた.会場は鹿児島市民文化ホール,鹿児島サンロイヤルホテル,南日本新聞会館みなみホールの3会場(いずれの会場も徒歩5分程度の移動時間)の分散開催であったが,雨の中,片手に傘を,片手には学会抄録集を持ちながら,足早に目的の会場を目指して移動する多くの作業療法士の姿は,若きパワーを感じさせてくれ,頼もしく思われた.

初めての学会発表

沖縄から新潟へ♪おいしかった全国学会

著者: 濱盛杏菜

ページ範囲:P.950 - P.951

 2007年5月24日~26日,第42回日本理学療法学術大会(以下,全国学会)が新潟県にて開催されました.沖縄からは飛行機で3時間,とても遠い地での5日間でした.初めて新潟の地に足を踏み入れた感想として「沖縄とほとんど変わらない」と感じました.昼はスーツ姿では全身汗ばむほど温かく,夜は沖縄から用意してきた春服でも涼しく快適に過ごすことができました.

 さて,今回の学会は,理学療法士3年目の私にとっては4回目の研究発表となり,継続して行ってきた研究の集大成のような意気込みで参加することができました.そんな気持ちとは裏腹に,初めて沖縄県以外の先生方の前で発表するため,研究に対する意見,ポスター構成へのアドバイス,さらにどの程度の人数に囲まれての発表となるのか…すべてが不安で,沖縄出発前から,私にとっては珍しいほど緊張していました.

書評

―柳澤 健・赤坂清和(監訳)―「エビデンスに基づく整形外科徒手検査法」

著者: 市橋則明

ページ範囲:P.938 - P.938

 徒手検査法に関するテキストは数多くあり,また同じようなテキストが出版されたのかと思い,あまり期待もせず本書を手に取った.本書を読み進めるうちに,今までのテキストとの違いに驚かされ,熟読してしまった.従来の整形外科の徒手検査法に焦点を当てたテキストは,診断の正確性を無視し,単に多数の検査を列挙したものがほとんどであった.そのため,どの程度その検査に信頼性があり,他の検査法とどう違うのかが不明確であった.このテキストを読んで最も驚かされたのは,各検査項目にその検査の検者間信頼性や検者内信頼性が記載されていること,さらにその検査が各疾患を検出できる感度と特異度が示されていることである.さらに,検査法に関しても最新の知見が記載されている.例えば,棘上筋テストのEMPTY CANとFULL CANの違いなども早くも取り入れてエビデンスが示されている.

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文献抄録

ページ範囲:P.952 - P.953

編集後記

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.958 - P.958

 今年は本当に暑い夏でした.群馬から神戸に移り,「なんて関西は暑いんだ」と関西を悪者にしていましたが,関西の人にとってもこの夏の暑さは特別とのことでした.どうやらわれわれが想像する以上に,地球の温暖化は深刻なようです.先日,映画「不都合な真実」に出演しているアル・ゴア元アメリカ副大統領が,地球温暖化に対する活動が評価され,ノーベル平和賞を受賞しました.

 本号の特集は,編集同人からも希望の多かった「メタボリックシンドローム」を取り上げました.来年4月より特定健診等の義務化が実施されます.しかし,残念なことに,「食生活・運動に関する対象者の支援計画に基づく実践的指導」を行う職種に,理学療法士が明記されていません.

 最近,私が愛する理学療法とは何であるのか,よく考えることがあります.昭和40年制定の理学療法士法によると,「理学療法とは,身体に障害のあるものに対して,主としてその基本的動作能力に回復を図るため,治療体操その他の運動を行わせ,及び電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加える治療法をいう」とされています.一方,世界101か国27万人が加盟する世界理学療法連盟の記述,The nature of Physical Therapy(理学療法の本質)によると,「理学療法とは健康増進や予防,治療,リハビリテーションを通じて人間の活動の潜在能力を最大限に引き出すこと(Physical therapy is concerned with identifying and maximising movement potential, within the spheres of promotion, prevention, treatment and rehabilitation)」とあります.日本は国民総生産世界第2位の経済大国にもかかわらず,理学療法に関しては知らず知らずのうちに狭い範囲での活動を強いられてしまっているようですが,理学療法士は,脳血管疾患や心疾患などを発症した患者に対しては,身体機能や日常生活活動の回復に加えて,疾患の悪化や再発予防のための指導,メタボリックシンドロームへの対応を通して,対象者のさらなる健康増進にも責任を持つ必要があると思います.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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