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特集 メタボリックシンドロームと理学療法
メタボリックシンドロームとは
著者: 前田朝美1 寺本民生1
所属機関: 1帝京大学医学部内科学講座
ページ範囲:P.877 - P.884
文献購入ページに移動1.メタボリックシンドローム基準作成の経緯
近年,生活習慣の変化により心筋梗塞,脳梗塞といった動脈硬化性疾患が増加し,これら動脈硬化性疾患の発症をいかに予防するかが重要な課題となっている.これまでの大規模臨床試験によって,LDL-コレステロール(以下,LDL-C)低下療法が動脈硬化性疾患の予防,総死亡の抑制につながることが証明され,LDL-Cは動脈硬化性疾患の危険因子として確立されたものとなった.しかし,LDL-C低下療法の動脈硬化性疾患予防効果は約30%と,決して十分とはいえない.そこで,LDL-Cとは独立した病態,つまりLDL-Cに次ぐハイリスク群を認識することが重要となった.
生活習慣が大きく影響する肥満,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常は互いに高頻度で合併し,複数の危険因子を合併すると相乗的に動脈硬化性疾患の危険性を高めることが知られている.1988年にReavenらが高血圧,脂質異常,耐糖能異常を一個人に集積した症候群をシンドロームXと提唱したのをはじめ,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,内臓脂肪症候群など動脈硬化性疾患の危険因子が複数集積した病態がハイリスク群として注目された.わが国でも,肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常が3~4つ重なると冠動脈疾患(CAD)の発症率が約30倍になるという事実から1)(図1),これら危険因子が集積したものをマルチプルリスクファクター症候群と称し,動脈硬化性疾患のハイリスク群として重要視してきた.
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