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文献概要
講座 「複雑系」と理学療法・2
身体運動研究と複雑系
著者: 長崎浩1
所属機関: 1東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科
ページ範囲:P.933 - P.937
文献購入ページに移動運動学と運動制御論
身体運動の研究領域は,リハビリテーション医療では運動学(kinesiology)であるが,他方で身体運動制御論(human motor control)と呼ばれる分野がある.両者は実のところ別々の伝統や発想に基づいて研究されてきており,おおよそ事情は今日でも変わりがない.研究を進める際には,この差異に気付いておく必要がある.
第二次世界大戦後の米国では「通信と制御」の工学(サイバネティクス)が勃興したが,身体運動制御論もこの影響のもとに始まった.認知心理学でいう「情報処理論的アプローチ」がこれに当たり,運動研究も心理学者が中心になって開拓されてきた.キネシオロジーがリハビリテーション医療を,あるいは生体力学がロボットや人間工学を応用分野と想定しているのに比べて,身体運動制御論の関心は人間行動を「理解する」ことだといってよいかもしれない.理解してどうするのか.自然の妙に「ただ驚く」のである.
身体運動の研究領域は,リハビリテーション医療では運動学(kinesiology)であるが,他方で身体運動制御論(human motor control)と呼ばれる分野がある.両者は実のところ別々の伝統や発想に基づいて研究されてきており,おおよそ事情は今日でも変わりがない.研究を進める際には,この差異に気付いておく必要がある.
第二次世界大戦後の米国では「通信と制御」の工学(サイバネティクス)が勃興したが,身体運動制御論もこの影響のもとに始まった.認知心理学でいう「情報処理論的アプローチ」がこれに当たり,運動研究も心理学者が中心になって開拓されてきた.キネシオロジーがリハビリテーション医療を,あるいは生体力学がロボットや人間工学を応用分野と想定しているのに比べて,身体運動制御論の関心は人間行動を「理解する」ことだといってよいかもしれない.理解してどうするのか.自然の妙に「ただ驚く」のである.
参考文献
1)Contemporary management of motor control problems. Proceedings of the ⅡSTEP conference, Foundation of Physical Therapy, 1991
2)Shumway-Cook A, Woolacott MH:Motor control, Williams & Wilkins, Baltimore, 1995
3)Rosenbaum DA:Human motor control, Academic Press, San Diego, 1991
4)Gleick J(著),大貫昌子(訳):カオス―新しい科学を作る,新潮文庫,1991
5)Kelso JAS, et al:On the co-ordination of two-handed movements. J Eexp Psychol:Hum Percept Perform 5:229-238, 1979
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7)長崎 浩:身体の自由と不自由,中公新書,1997
8)長崎 浩:自由歩行の安定性限界.バイオメカニズム学会誌 30:115-118,2006
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10)Pandy MG, et al:Optimal control of non-ballistic muscular movements:a constraint-based performance criteirion for rising from a chair. J Biomed Engin 117:15-26, 1995
11)長崎 浩:動作の意味論,雲母書店,2004
12)川人光男:脳の計算理論,産業図書,1996
13)戸田山和久:心は(どんな)コンピュータなのか,信原幸弘(編):心の哲学Ⅱロボット篇,pp27-84,勁草書房,2004
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