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特集 「腰痛症」の要因と理学療法
直立二足歩行と腰痛症―抗重力姿勢の影響
著者: 権田絵里1
所属機関: 1京都大学霊長類研究所形態進化分野
ページ範囲:P.99 - P.105
文献購入ページに移動はじめに
普段,われわれが人類の進化の道のりを考えるとき,高い知能やコトバの獲得,そしてそれらを土台とした文化の形成や文明の発展など,万物の霊長としての栄光の歴史に焦点が当てられるのが常であり,栄光と引き換えに負った代償を顧みることは少ない.
例えば,「腰痛」もその1つである.あまりにも身近であるため,われわれはそれらがヒトであるがゆえの宿命的な苦難であることを意識していないが,われわれの祖先が直立二足歩行を始めたときから延々と受け継がれてきた負の遺産1)である.人類が知性や技術,コトバといった進化の恩恵にあずかるのは,実はそれよりもずっと後のことである.
本稿では,ヒトという動物の特殊性や進化の道のりという視点から,人類と直立二足歩行への不適応現象,特に腰痛との関わり合いについて探ることを目的とする.
普段,われわれが人類の進化の道のりを考えるとき,高い知能やコトバの獲得,そしてそれらを土台とした文化の形成や文明の発展など,万物の霊長としての栄光の歴史に焦点が当てられるのが常であり,栄光と引き換えに負った代償を顧みることは少ない.
例えば,「腰痛」もその1つである.あまりにも身近であるため,われわれはそれらがヒトであるがゆえの宿命的な苦難であることを意識していないが,われわれの祖先が直立二足歩行を始めたときから延々と受け継がれてきた負の遺産1)である.人類が知性や技術,コトバといった進化の恩恵にあずかるのは,実はそれよりもずっと後のことである.
本稿では,ヒトという動物の特殊性や進化の道のりという視点から,人類と直立二足歩行への不適応現象,特に腰痛との関わり合いについて探ることを目的とする.
参考文献
1)権田絵里:ヒトは立って歩いて進化した(シンポジウム「動作の探求」).理学療法学 33:202-206,2006
2)馬場悠男:直立二足歩行への力学的適応.人類学講座9適応,pp101-125,雄山閣出版,1988
3)坂井健雄,他:人体のなりたち,岩波講座・現代医学の基礎3,1998
4)Pickford M, Senut B:“Millennium Ancestor,”a six-million-year-old bipedal hominid from Kenya-Recent discoveries push back human origins by 1.5 million years. S Afr J Sci 97:2-22, 2001
5)White TD, et al:Australopithecus ramidus, a new species of early hominid from Aramis, Ethiopia. Nature 371:306-312, 1994
6)Leakey MG, et al:New hominid genus from eastern Africa shows diverse middle Pliocene lineages. Nature 410:433-440, 2001
7)イヴ コパン(著),馬場悠男,他(訳):ルーシーの膝―人類進化のシナリオ,紀伊國屋書店,2002
8)クレイグ スタンフォード(著),長野 敬,他(訳):直立歩行,青土社,2004
9)葉山杉夫:ヒトの誕生―二つの運動革命が生んだ<奇跡の生物種>,PHP新書080,1999
10)エレインモーガン(著),望月弘子(訳):進化の傷あと―身体が語る人類の起源,どうぶつ社,1999
11)ジェニファーアッカーマン:人類を大きく変えた二足歩行.ナショナルジオグラフィック日本版12(7):84-103, 2006
12)木村 賛:ヒトはいかに進化したか,サイエンス社,1980
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