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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル41巻2号

2007年02月発行

文献概要

特集 「腰痛症」の要因と理学療法

腰痛症に対する診断・医学的治療の変遷

著者: 関口美穂1 菊地臣一1

所属機関: 1公立大学法人福島県立医科大学医学部整形外科学講座

ページ範囲:P.107 - P.112

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はじめに

 腰痛の生涯発生率は50~80%であるといわれている1,2,3).腰痛が医学的な,そして社会的な問題である理由の1つに,「腰痛」という病態自体が抱えている問題がある.腰痛という言葉は症状であり,疾患名ではない.Macnabは,腰痛を脊椎性,神経性,内臓性,血管性,心因性と5つに大別した4).つまり,あらゆる疾患が腰痛を主訴とする可能性がある.しかも,腰痛の病態は生物学的な問題だけではなく,心理的・社会的因子といった機能的な障害も深く関与している.

 わが国の1か月の腰痛有病率は,20歳代の男性は29%,女性は22%で,30~60歳代は年齢や性別にかかわらず約30%,70歳代の男性は28%で女性は47%である5).高齢者は,若年者に比べて,腰痛を引き起こすことが明らかに多い.特に,女性の場合は,年齢とともにその頻度が増す.高齢化社会となった今,高齢者の人口増加は,腰痛を訴える患者の増加につながる.

 米国では,プライマリ・ケアを受診する患者に多い主訴の2位が腰痛であり,整形外科医,脳神経外科医,あるいは産業医を受診する最大の理由が腰痛である.患者数が多いため結果的に医療費は高騰する.しかも,仕事に関連した腰痛に支払われている休業補償と就労不能時間による経済損失を合わせると,その額は医療費の3倍にも達する.休業補償の点からみると,米国の労働人口の約2%は毎年腰痛のために補償を受けている.腰痛のために仕事を休み,それが本人や家族,あるいは地域社会,さらには職場に与える影響を考えると,その費用は莫大になると考えられる.腰痛は,個人の健康問題としてのみではなく,国の財政や産業基盤をも脅かす問題となっている.

 近年,EBM(evidence-based medicine)という概念・手法が導入され,腰痛の診断や治療を再検討する必要性が指摘されている.本稿では,今後の腰痛対策に向けて,腰痛の概念について新しく整理し,診断・医学的治療について述べる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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