icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル41巻2号

2007年02月発行

文献概要

特集 「腰痛症」の要因と理学療法

腰痛症者の理学療法評価の臨床的思考過程

著者: 伊藤俊一1 隈元庸夫1 白土修2

所属機関: 1北海道千歳リハビリテーション学院 2埼玉医科大学

ページ範囲:P.113 - P.121

文献購入ページに移動
はじめに

 2004年の厚生労働省国民生活基礎調査1)によると,有訴者の症状は腰痛が男性で第1位,女性で第2位であり,通院者率では男女とも高血圧に次ぐ第2位であった.また,高齢化と共に腰痛を有する人が増加し,特に女性で顕著となっている2).これは加齢変化による腰椎変性疾患の多彩性のみならず,閉経後骨粗鬆症に伴う腰痛症者の増加も意味しており,急速な超高齢化社会の訪れに伴う重要な社会問題と捉えられている.

 整形外科における腰痛症者に対する治療選択として,90%以上の対象でまず保存療法が選択され3),疼痛緩解を目的とした物理療法や腰痛体操を中心とした運動療法が幅広く行われている.しかし,腰痛症者に対する理学療法施行時に「とりあえず腰痛体操」といった安易なプログラムを指導していないだろうか.近年では,腰痛症治療のシステマティックレビュー4)も散見されるようになったが,いまだ運動療法の科学的根拠が明確化されておらず,その根拠を証明する取り組みも大規模には行われていない.さらに,「腰痛症」とは“腰が痛い”という症状の総称であって,その名前の病態があるわけではない上,85%の対象では非特異的疾患を疑う必要があるとの報告さえ多く存在する.このように複雑に絡まった病態を目の前にして,多くの時間を評価に費やしても結局は画一的なプログラム選択となることが少なくない.この結果,腰痛症者から理学療法,理学療法士は選ばれていない2,5)

 本稿では,腰痛症に対する理学療法評価の一般的な項目とその解説に加え,問診・各種測定と動作観察などにおけるポイントを述べ,治療選択までの過程を概説する.

参考文献

1)厚生労働省:平成16年国民生活基礎調査,2004
2)福原俊一,他:日本人を対象とした腰痛アウトカム研究.日整会誌 77:S517,2003
3)白土 修,伊藤俊一:腰痛患者に対するリハビリテーション.脊柱脊髄 13:590-599,2001
4)伊藤俊一,隈元庸夫,白土 修:腰痛症治療における理学療法のシステマティックレビュー.理学療法 23:888-902,2006
5)菊地臣一:名医に学ぶ腰痛診療のコツ,pp1-37,永井書店,2006
6)伊藤俊一:腰痛症の評価と治療.理学療法学 25:511-514,1998
7)白土 修,他:新しい腰痛特異的QOL尺度の開発.JLEQ(Japan Low-back pain Evaluation Questionnaire)の紹介と妥当性の検討.第13回日本腰痛学会抄録集:68,2005
8)Shirado O, et al:Concentric and eccentric strength of trunk muscle;Influence of test posture on strength and characteristics of test patients with chronic low back pain. Arch Phys Med Rehabil 76:604-611, 1995
9)伊藤俊一:疼痛と筋力強化.PTジャーナル 32:847-854,1998
10)伊藤俊一,白土 修,石田和宏:腰痛症に対する外来運動療法.PTジャーナル 35:19-26,2001
11)村上 哲,他:腰椎症と体幹筋力―疾患別筋力特性の検討―.北海道理学療法 19:19-21,2002
12)伊藤俊一,他:腰痛症の病期別理学療法ガイドライン.理学療法 19:153-158,2002
13)Ito T, et al:Quantitative and Non-Invasive Evaluation of the ability of trunk muscles to control lumbopelvic postures.―A comparison between normal subjects and patients with chronic low back pain―.(In press)
14)Ito T, et al:Lumbar trunk muscle endurance testing;An inexpensive alternative to a machine for evaluation. Arch Phys Med Rehabil 77:75-79, 1996
15)伊藤俊一,他:慢性腰痛症患者における体幹筋持久力評価法―腹筋評価法の改良に関して.北海道理学療法 15:25-27,1998
16)Hodges PW, Richardson CA:Contraction of the abdominal muscle associate with movement of the low back pain. Phys Ther 77:133-143, 1997
17)伊藤俊一,他:腰痛症再発予防のための理学療法.理学療法 16:9-13,1999
18)Papageorgiou AC, et al:Psychosocial factors in the workplace--do they predict new episodes of low back pain? Evidence from the South Manchester Back Pain Study. Spine 22:1137-1142, 1997
19)Symonds TL, et al:Absence resulting from low back trouble can be reduced by psychosocial intervention at the work place. Spine 20:2738-2745, 1995
20)Deyo RA, et al:How many days of bed rest for acute low back pain? N Engl J Med 315:1064-1070, 1986
21)伊藤俊一:理学療法(運動療法),鈴木信正,他(編):腰痛変性疾患,pp177-184,メジカルビュー社,2004
22)伊藤俊一,白土 修:腰痛症の運動療法.MB Med Reha 12:42-48,2001
23)伊藤俊一,隈元庸夫,白土 修:体幹に対する筋力トレーニング:セルフエクササイズ.理学療法 23:1492-1497,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?