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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル41巻5号

2007年05月発行

文献概要

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

ペナンブラ(penumbra)

著者: 前田真治1

所属機関: 1国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学領域

ページ範囲:P.405 - P.405

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 太陽と月によって生じる日食を例にすると,地球の影で真っ黒になる中心部分の本影(umbra,ラテン語“ombra「影」”に由来,「傘(umbrella)」と同じ語源)の周辺部にできる半影部をペナンブラ(penumbra)という(図1).脳血管が詰まるとその支配領域の血流は途絶えてしまうが,隣の血管と重なる領域があったりして,わずかに血流が確保できるところがある.

 脳血流量は正常では100gの脳組織あたりで1分間に50~55mlであるが,23ml以下になると,シナプス伝導障害が生じ,麻痺が出現する(electrical failure).12~18mlになると,数時間以内に細胞膜のイオンポンプが障害され,カリウムが細胞外へ漏れ出し,神経細胞が死んでしまう(membrane failure)1).組織化学的には脳血流が23ml以下になると,組織でのアシドーシスが進み,最初にクレアチニンリン酸が,続いてATPの産生が低下する.さらに脳血流が低下すると,脳波や誘発電位の消失,シナプス伝達が障害される.5~6ml以下になるとATPの枯渇が生じ,ATP依存性のイオンポンプの機能低下から,カリウムが細胞外に,カルシウムが細胞内に入り,イオン勾配の破綻(ion pump failure)を来すことで神経細胞死に至る.急性の脳虚血では,脳血流の減少が中心部と周辺部で異なり,中心部では神経細胞死になる状態であっても,周辺部では側副血行などによって12~23mlの脳血流があれば,脳機能は可逆的であり,この状態の脳組織が虚血性ペナンブラ(ischemic penumbra)である2)(図2).

参考文献

1)Lassen NA, et al:Ischemic penumbra and neuronal death;Comments of the therapeutic window in acute stroke with particular reference to thrombolytic therapy. Cerebrovasc Dis 1(Suppl. 1):32-35, 1991
2)Astrup J, et al:Thresholds in cerebral ischemia―The ischemic penumbra. Stroke 12:723-725, 1981

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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