icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル41巻7号

2007年07月発行

文献概要

特集 脳性麻痺児の理学療法

脳性まひ児の24時間姿勢ケア

著者: 今川忠男1

所属機関: 1旭川児童院

ページ範囲:P.537 - P.546

文献購入ページに移動
はじめに

 新生児医療の現場において,専門知識や技術が向上しているにもかかわらず,幼児期を越えても重度の神経学的障害が残存するこどもたちや,小児期に重度の外傷を受けて後遺症をもつこどもたちの数は期待したほどの減少をみせていない.また近年,重篤な神経学的障害をもっていても,こどもたちや家族の人生の質を高めるべきであるという文化的な機運も高まっている.

 最近の英国における調査では,脳性まひをもつこどもの股関節脱臼と側彎をはじめとする構築的変形の発生率は,日本にも紹介されているボバース法をはじめとする各種治療法の台頭以前の値とあまり差がないという,次のような報告12)がなされている.

 「股関節脱臼と脊柱側彎は,脳性まひをもつこどもにみられるもっとも一般的な2つの変形である.両まひをもつこどもの35~40%に股関節脱臼が認められる.痙直型四肢まひをもつこどもの約65%に側彎が認められる.つまり,英国においては毎年,約2人に1人の脳性まひをもつこどもに股関節脱臼および脊柱側彎の進行が認められることになる.このデータは各種治療法が流行しだした1960年代から大きく変化していない.しかし,ここ10年で実施された『24時間姿勢ケア』を受けるこどもたちの変形発生率は,地域限定ではあるが23%まで減少してきている」

参考文献

1)今川忠男:日本における理学療法の独創性:治療技術の立場から.理学療法学 14:477-480,1987
2)今川忠男:運動発達と運動学習:発達知識の理学療法・作業療法への応用.理・作・療法 22:307-313,1988
3)今川忠男:小児科領域の理学療法士の専門性と今後の展望.PTジャーナル 23:46-48,1989
4)今川忠男:重度脳性麻痺児の呼吸・摂食障害に対する理学療法:ポジショニングを中心として.PTジャーナル 25:539-544,1991
5)今川忠男:小児の理学療法をめぐる動向.理学療法 9:125-130,1992
6)今川忠男:乳幼児の発達と運動制御.PTジャーナル 29:687-692,1995
7)今川忠男:WHERE HAVE ALL THE BABIES WITH CEREBRAL PALSY GONE? 理学療法学 24:153-157,1997
8)今川忠男:発達障害をもったこどもたちの生涯発達:華麗な加齢は可能か(Brdoの森からの提案).作業療法 16:349-353,1997
9)今川忠男:重症心身障害者のための包み込みマット.理学療法 14:396-397,1997
10)今川忠男:障害をもつこどもと家族のための面接.理学療法 14:466-496,1997
11)今川忠男:重症心身障害者の「風に吹かれた股関節」指数計測方法.理学療法 14:654-655,1997
12)Scrutton D, Baird G:Surveillance measures of the hips of children with bilateral cerebral palsy. Arch Dis Child 76:381-384, 1997
13)McVey C:Pain in the very preterm baby;‘suffer little children?’Pediatr Rehabil 2:47-55, 1998
14)今川忠男:重症心身障害児・者の療育基本理念:作業療法士の役割に焦点をあてて.OTジャーナル 32:203-207,1998
15)今川忠男:理学療法士のGestalt視知覚による直感的動作分析:臨床意志決定能力の向上を目指して.PTジャーナル 32:229-236,1998
16)今川忠男:脳性まひ児の認知障害と理学療法.PTジャーナル 32:577-582,1998
17)今川忠男:小児の姿勢制御障害:風に吹かれた股関節.理学療法学 26:121-123,1999
18)今川忠男:NICUの赤ちゃん.OTジャーナル 33:617-623,1999
19)今川忠男:発達障害をもつこどもと家族の非言語コミュニケーション.OTジャーナル 33:94-99,1999
20)今川忠男:発達障害児の新しい療育:こどもと家族とその未来のために,三輪書店,2000
21)宮田昌司:第36回日本理学療法学術集会報告.日本リハビリテーション病院・施設協会誌 71,2001
22)今川忠男:理学療法の効果判定:発達障害児の療育に焦点を当て.PTジャーナル 35:859-864,2001
23)今川忠男:中枢神経系疾患に対する運動療法の考え方.理学療法学 28:394-398,2001
24)脳性まひ児が示す機能障害と適応行動としての代償運動.理学療法 19:587-592,2002
25)今川忠男:発達.PTジャーナル 36:514-515,2002
26)今川忠男:脳性まひ児の早期治療(第2版),医学書院,2003
27)今川忠男:脳性まひ児と両親のための機能的理学療法,三輪書店,2004
28)Mayston M:Evidence-based physical therapy for the management of children with cerebral palsy. Dev Med Child Neurol 47:795, 2005
29)O'Neil ME, et al:Physical therapy clinical management recommendations for children with cerebral palsy-spastic diplegia;achieving functional mobility outcomes. Pediatric Phys Ther 18:49-72, 2006
30)Gericke T:Postural management for children with cerebral palsy;consensus statement. Dev Med Child Neurol 48:244, 2006
31)今川忠男:脳性まひ児の24時間姿勢ケア,三輪書店,2006
32)Soo B, et al:Hip displacement in cerebral palsy. J Bone Joint Surg 88-A:121-129, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?