訪問リハビリテーションにおける理学療法の取り組みと課題
著者:
西田宗幹
,
石川孝幸
,
仲村貴史
,
倉谷みゆき
,
宮下敏紀
,
大脇淳子
ページ範囲:P.19 - P.26
はじめに
急速な高齢化に対応するため,2006年度の医療・介護保険制度改正により,医療保険制度では訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)が単位制となり,リハが必要な方にはその必要性に応じてより多く実施できるようになった.しかし,介護保険の認定を受けている方は,介護保険制度でのサービスが優先となり,原則的には医療保険制度での訪問リハを併用することはできない.また,介護保険制度では,訪問看護ステーションからの理学療法士(PT)などによる訪問リハ(訪問看護7)と,病院や介護老人保健施設,診療所を事業所とした「訪問リハ算定」がある.今回の改正により,訪問看護ステーションからの理学療法士などの訪問は,看護師の訪問回数を超えてはならないというルールができたが,同じサービス内容で利用者の負担が異なるサービスの混在が継続している状況にある.このように,まだ法的に未整備の部分が多い.
保険制度改正の目的は,入院患者を在宅療養へと移行させることであり,近年ではそれに十分対応できるように,理学療法士の養成校が増加し,年々有資格者数は増加している.しかし,介護保険サービス全体における訪問リハサービスの比率は非常に小さく,訪問リハで働く理学療法士の数もまだまだ少ないのが現状で,各地域での訪問リハサービスは不足している.また,施設や事業所側も,訪問リハ部門で新人研修や卒後教育を受け入れる研修体制を整備することが難しいため,経験者を中心に求人を行うところが多く,新人理学療法士の雇用を積極的に実施できていないのも一因であると考えられる.
本稿では,当法人で行っている訪問リハについて,実際に行っている業務の流れや連携の形態,その他の業務内容,現状の課題について報告し,よりよい訪問リハサービスを提供するための方法について述べる.