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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル42巻11号

2008年11月発行

文献概要

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

行動分析

著者: 山﨑裕司1

所属機関: 1高知リハビリテーション学院

ページ範囲:P.959 - P.959

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 行動分析(behavior analysis)とは,Skinner BFが体系化した行動と心理に関する学問である.この学問では,個人と周囲の環境との相互作用の分析を徹底させることで,行動の法則性とその可変的な部分を見出していく.例えば,歩行練習を拒む対象者がいたとしよう.強く勧めると感情的な反発が生じてしまう.通常このような時,私たちは対象者の意欲のなさや,感情的な反発が原因で歩行練習の拒否という結果を生じさせていると考える.行動分析では,練習場面で嫌な刺激が多すぎることや治療の見通しのなさが“原因”で,「歩行練習の拒否」や「感情的な反発」が“結果”であると考える.すなわち,心の働きを,個人と環境との相互作用がスムースに進まないために生じる結果として捉え,行動上の問題に対しては,心の中にアプローチしない.

 行動は,周りの環境や身体内の刺激を手がかりとして引き起こされる.「行動」よりも時間的に先立って存在し,行動を引き出すきっかけとなる刺激を「先行刺激」という.私たちが行動を起こすと,環境から何らかの応答がある.その応答は,周囲の環境の変化として得られる場合も,自分自身の体で体感する場合もある.この環境から与えられる応答を「後続刺激」という.行動分析では,先行刺激がどのような行動を引き起こしているか,行動に対して環境からどのような応答があったか,その結果,行動は増えたのか減ったのかを詳しく分析することによって原因を明らかにしていく.例えば,歩行練習によって歩行が安定し,練習の頻度が上がった場合,行動(歩行練習)は強化されたといい,その後続刺激のことを「強化刺激」と呼ぶ.逆に,練習によって疲労感や関節痛が生じ,頻度が落ちた場合,行動は弱化されたといい,その後続刺激のことを「嫌悪刺激」と呼ぶ.また,歩行練習を行っても歩行能力の改善が得られず練習頻度が徐々に下がった場合,行動は「消去」されたという.

参考文献

1)山﨑裕司,山本淳一(編):リハビリテーション効果を最大限に引き出すコツ―応用行動分析で運動療法とADL訓練は変わる,三輪書店,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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