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文献概要
特集 痛みの病態生理と理学療法
「慢性痛症」のメカニズム
著者: 熊澤孝朗12
所属機関: 1愛知医科大学医学部痛み学(ファイザー)寄附講座 2名古屋大学
ページ範囲:P.87 - P.94
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「侵害受容器(nociceptor)」という言葉がある.ノーベル賞生理学者のSherringtonが,組織を損傷するに至る(noxious)刺激(つまり,痛み刺激)に応ずる感覚受容器という意味で,もの言わぬ動物で行う痛みの実験において用いることを提唱した言葉である.この語が示す意味は,「痛み」はヒトにおいて言葉で訴える感覚であるということを改めて強調し,さらに,言葉を発しない動物においても,傷害部からの感覚入力に対する「痛み」反応が生理的に存在することを表している.
身体の傷害,場合によっては一命にも関わるような警告信号は,生物の最も基本的な情報であり,昔から人は痛みについて大きな関心をもち続けている.痛みの研究には長い歴史があり,その歴史は,痛みというものをどう捉えるべきかという根源的な問題について,繰り返し揺れ動いてきたことを示している.
「侵害受容器(nociceptor)」という言葉がある.ノーベル賞生理学者のSherringtonが,組織を損傷するに至る(noxious)刺激(つまり,痛み刺激)に応ずる感覚受容器という意味で,もの言わぬ動物で行う痛みの実験において用いることを提唱した言葉である.この語が示す意味は,「痛み」はヒトにおいて言葉で訴える感覚であるということを改めて強調し,さらに,言葉を発しない動物においても,傷害部からの感覚入力に対する「痛み」反応が生理的に存在することを表している.
身体の傷害,場合によっては一命にも関わるような警告信号は,生物の最も基本的な情報であり,昔から人は痛みについて大きな関心をもち続けている.痛みの研究には長い歴史があり,その歴史は,痛みというものをどう捉えるべきかという根源的な問題について,繰り返し揺れ動いてきたことを示している.
参考文献
1)熊澤孝朗,山口佳子:痛みの学際的アプローチへの提言,菅原 努(監):慢性痛はどこまで解明されたか,pp55-69,昭和堂,2005
2)熊澤孝朗:痛みは歪む.細胞工学 17:1444-1453,1998
3)Haydon PG:Glia:listening and talking to the synapse. Nat Rev Neurosci 2:185-193, 2001
4)熊澤孝朗:痛みをどう捉えるか?,王木会(編):患者に学ぶ生命―医師50年の確信―研究は臨床にどう生きるか,医歯薬出版,2008(in press)
5)熊澤孝朗:自律神経系と痛み・生体警告系,宇尾野公義,入来正躬(監):最新自律神経学,pp94-103,新興医学出版社,2007
6)Bach S, et al:Phantom limb pain in amputees during the first 12 months following limb amputation, after preoperative lumbar epidural blockade. Pain 33:297-301, 1988
7)Turk DC, Okifuji A:Multidisciplinary approach to pain management:philosophy, operations, and efficacy, Ashburn MA, Rice LJ(eds):The Management of Pain, Churchill Livingston, Baltimore, 1998
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