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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル42巻4号

2008年04月発行

文献概要

特集 認知運動療法の臨床アプローチと効果

骨関節疾患に対する認知運動療法の臨床アプローチと効果

著者: 千鳥司浩1

所属機関: 1中部学院大学リハビリテーション学部理学療法学科

ページ範囲:P.277 - P.284

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はじめに

 骨関節疾患は関節や効果器そのものの損傷であるため,リハビリテーションで取り扱う諸問題においても,末梢の筋や関節などの器官の構造的な機能異常を重要視することが多い.障害を受けた諸器官を直接的に治療対象とする従来の治療戦略により,関節拘縮や筋力低下などの機能障害に関する問題は解決しやすいが,それらが改善しても歩行などの動作にうまく結びつかないことがある.具体的には,中殿筋の筋力が十分回復してもトレンデンブルグ現象が出現している症例や,膝関節の可動域が十分獲得されていても歩行時にはいわゆる棒足歩行を呈する症例などが挙げられる.これらのことより,損傷部位そのものを治療していくだけでは不十分であり,パフォーマンスを構築し制御している脳においても,何らかの変質があることについて注目する必要性に気づく.

 この点について,イタリアの神経科医Calro Perfettiが提唱する認知運動療法(esercizio terapeutico conoscitivo:ETC)1)と呼ばれる治療システムは極めて興味深い.認知運動療法とは,運動を身体が外部環境と相互作用を行うための手段として捉え,それを実現しているのは脳における認知過程であるとする理論に立脚して,運動療法の介入手段を構築したものである.その理論は,中枢神経疾患や骨関節疾患をはじめとして幅広く適用されている.本稿では,まず認知運動療法の基本概念,骨関節疾患における病態解釈について述べ,関節拘縮や跛行に対する治療展開について解説する.

参考文献

1)Perfetti C:La rieducazione motoria dell' emiplegico, Ghedini Milano, 1979
2)沖田一彦:認知運動療法の発展と課題.PTジャーナル 40:1172-1173,2007
3)宮本省三,沖田一彦:認知運動療法入門,臨床実践のためのガイドブック,協同医書,2002
4)Pantè F(著),小池美納(訳),宮本省三(編):認知運動療法講義,協同医書,2004
5)沖田一彦,小林弘基:痛みと運動療法.MB Med Reha 79:75-80,2007
6)千鳥司浩:関節可動域治療のアウトカム―理学療法効果の検証―,関節可動域練習としての認知課題の効果―術後早期からの治療介入.理学療法学 34:383-384,2007
7)千鳥司浩,他:関節可動域練習における認知課題の有用性―シングルケーススタディによる検討.愛知県理学療法士会誌 15(1):45-49,2003
8)千鳥司浩,他:可動域改善を目的とした知覚課題の有用性―従来の自動運動との比較.理学療法学 30:205,2003
9)Shumway-Cook A, Woollacott M:Motor control theory and practical applications, pp119-142, Williams & Wilkins, Baltimore, 1995
10)冨士川恭輔(編):図説 膝の臨床,pp210-237,メジカルビュー社,2002
11)森岡 周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門,pp37-55,協同医書,2005
12)沖田一彦:認知運動療法,黒川幸雄,他(編):理学療法MOOK 8(下肢関節疾患の理学療法),pp181-189,三輪書店,2000
13)高橋昭彦:変形性関節症に対する認知運動療法とその効果.MB Med Reha 32:41-49,2003
14)Edelman GM, Tononi G:A universe of consciousness:how matter becomes imagination, Basic Books, New York, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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