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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル43巻10号

2009年10月発行

雑誌目次

特集 老化による身体機能低下と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.859 - P.859

 わが国の理学療法の対象者は年々高齢化し,障害を重複して持つ対象者も増えている.さらに加齢による各種臓器の機能低下も加わり,病態や障害の把握や効果的な理学療法の実践を困難にしている.筋骨格系や脳神経系に加えて,肺や心臓,腎臓などの各種臓器,栄養状態などの相互関連を意識し,全身を管理しながら対象者に対応することが重要である.そこで本特集では,理学療法士が高齢者を対象とする時に留意すべき臨床的視点を,運動機能,呼吸機能,腎機能,栄養管理の各側面から解説いただいた.

高齢者の運動機能(健康増進)と理学療法

著者: 村永信吾 ,   平野清孝 ,   田代尚範

ページ範囲:P.861 - P.868

はじめに

 日本の高齢化は世界に類をみない速さで進み,今や平均寿命,健康寿命(自立した生活期間)ともに世界最高水準となった.しかし,その一方で要介護認定者も大幅に増加し,特に要支援および要介護1といった比較的軽度な者が増加している(図1).

 要介護となった原因としては,脳血管疾患,衰弱,転倒・骨折,認知症,関節疾患などが挙げられる.これらの原因を要介護度別にみると,重度者(要介護度4・5)では脳血管疾患や認知症が多く,軽度者(要支援・要介護1)では,衰弱,転倒・骨折および関節疾患といった運動器の廃用をベースとした廃用症候群が増加している.また,年齢階級別でみると,前期高齢者(75歳未満)では脳血管疾患が多く,後期高齢者(75歳以上)では廃用症候群が多くなっている.さらに85歳以上では廃用症候群が50%近くを占める.これらのことから,今後予想される高齢者人口の増加においては,「廃用症候群をいかに食い止め,健康寿命の延伸に貢献するか」が重要な課題となる.

高齢者の呼吸機能と理学療法

著者: 野添匡史 ,   間瀬教史 ,   村上茂史 ,   荻野智之 ,   和田智弘 ,   福田能啓

ページ範囲:P.869 - P.876

はじめに

 近年,人口の高齢化とともに,理学療法の対象となる患者の高齢化も進んでいる.高齢者に対して理学療法を施行する際,障害を受けた機能の改善を図ろうとしても,高齢者特有の様々な身体機能低下が要因となって,十分な効果が得られない場合がある.そのなかでも呼吸機能は特に加齢による影響が大きく,治療効果に影響を与えるだけでなく,様々な合併症の要因にもなる.本稿では,高齢者における呼吸機能の低下がどのように生じるのか,また,理学療法を進める上で,どのような対応が必要になるのかについて述べる.

高齢者の腎機能と理学療法

著者: 忽那俊樹 ,   松永篤彦

ページ範囲:P.877 - P.883

はじめに

 本邦では,成人の約13%に慢性腎臓病(chronic kidney disease:以下,CKD)が認められる1).特に高齢者では,加齢による影響と生活習慣病による動脈硬化の進展に伴って腎機能が低下し,CKDを有する割合は増加する.さらに,腎機能が低下すると,心疾患や脳血管疾患などの心血管疾患を高率に合併する.このため,運動器リハビリテーションの目的で理学療法を処方された場合であっても,腎機能障害の程度と合併症の重症度を併せて評価し,理学療法に対するリスクを層別する必要がある.

 本稿では,腎機能の評価法とその臨床的意義を概説し,腎機能障害を合併した高齢者に対して理学療法を実施する際の留意点について述べる.

高齢者の栄養管理と理学療法

著者: 綾部仁士 ,   鈴木裕也 ,   石村博史 ,   海塚安郎

ページ範囲:P.885 - P.894

はじめに

 少子高齢化の進行に伴う高齢人口の増加により,理学療法対象患者における高齢者の割合は急増している.また,医療技術の進歩に伴い,重症病態や周術期の高齢者に理学療法を実施するケースも増加傾向にある.医療現場の最前線においては,高齢化による病態の複雑化が進み,これまでのような各医療職の専門思考だけでは対応できない状況が広がっている.したがって,急性期医療においては,重症病態や手術侵襲という大きなリスクをもつ高齢患者が,精神・認知機能,身体機能を十分回復させてもとの暮らしに復帰できるまでを診る,医療サービスの提供が求められている.その実現のためには,チーム医療が必要であり,そのなかであまり顧みられなかった,高齢者の身体特性, 侵襲下での代謝動態,栄養管理の重要性を理解することが前提となる.

 本稿では,高齢者の身体特性,侵襲下の生体反応,栄養障害の特徴と基本的評価項目について解説し,当院における高齢の熱傷患者と腹部大血管手術を行った高齢患者に対する栄養管理下での早期理学療法の実際を紹介する.

[座談会]高齢者に対する理学療法の現状と課題―臨床の現場から

著者: 横田一彦 ,   小泉幸毅 ,   種市かおり ,   高橋哲也

ページ範囲:P.895 - P.905

高橋 今日は「老化による身体機能低下と理学療法」という特集テーマに関連して,高齢者に対する理学療法の現状と課題について,各病期の臨床現場の方々にお話しいただきます.急性期の現場からは東京大学医学部附属病院の横田さん,回復期からは小倉リハビリテーション病院の小泉さん,維持期(地域生活期)からはマイルドハート高円寺の種市さんにお越しいただきました.

 現在,わが国は高齢社会に直面しています.平成21(2009)年版の「高齢社会白書」では,総人口1億2,769万人に占める高齢者の割合は22.1%,特に75歳以上のいわゆる後期高齢者は10.4%と報告されています.そして,2013年には,高齢者人口が25%に達すると予測されています.

 それに伴って,高齢者に対して理学療法を実施する機会がこれまで以上に増えていくことになりますが,高齢者の場合は,老化による身体機能の低下が予後に大きく関わるということに注意が必要です.つまり,直接的に治療対象となる疾患や運動機能,ADL(activities of daily living)の改善だけに注目するのではなく,加齢による呼吸や循環,各種臓器,栄養状態,精神機能など,様々な身体機能の低下との相互連関を意識して,全身を管理しながら介入することが重要です.

 今後,医療費・社会保障費抑制の観点から,急性期はより早期化し,回復期はより密度が高まり,退院後の維持期(地域生活期)が重視されていくなかで,われわれが高齢者の自宅を1人で訪問して理学療法を行う機会も増えていくと思います.そこで,身体機能を的確に把握して,効果的で安全な質の高い理学療法を行うことは,専門職としての使命でもあります.今日は,各病期での具体的な取り組みをご紹介いただきながら,われわれが医療・介護・保健の専門職として社会に認められていくためにも,どのような視点や具体策をもって高齢者に対する理学療法に取り組むべきかを考えていきたいと思います.

とびら

中堅?

著者: 横山有里

ページ範囲:P.857 - P.857

 今年も新人を迎え,リハビリテーション部の中でも上から数えるほうが断然早くなった.臨床経験10数年目ともなると,学生時代の同級生はいつのまにか半数以上が仕事をやめ,専業主婦となっている.学生時代や新人時代に,お互いにがんばろうと燃えていたことが懐かしく感じられる.

 さらに,10年目となると,世の中では「中堅」と呼ばれるようになる.確かに,昨今の養成校の増加に伴って,若い理学療法士(以下,PT)の割合が増えているが,先輩は何千人もいるはずなのに,もう「中堅」と呼ばれるのはなぜだろう.経験年数が10年を超えた私たちだって,まだまだわからないことはたくさんあるが,学生教育,新人教育を任され,管理職まっしぐらの同級生もいる.

報告

運動イメージや運動観察が即時的な膝伸展筋出力に及ぼす影響

著者: 菅田陽怜 ,   飯星雅朗 ,   嶋田智明 ,   伊藤浩充

ページ範囲:P.907 - P.911

要旨:本研究の目的は,運動イメージ(MI)や運動観察(MO)が即時的な筋出力に対してどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.対象は健常な男子30名,女子30名とし,コントロール群(CR群),運動イメージ群(MI群),運動観察群(MO群)に対し,それぞれ20名(各群男女10名)ずつを無作為に振り分けた.まず,運動イメージ能力の評価としてmental chronometry(MC)を用いた.その後,運動イメージあるいは運動観察課題前後の膝伸展筋出力の変化を測定した.その結果,MCの結果と筋出力増加率との間に関連性は認められなかった.一方,筋出力増加率について各群で比較すると,課題前後の筋出力増加率の平均値は,CR群と比較し,MI群とMO群において有意な増加が認められた.本研究結果より,運動イメージと運動観察が即時的な筋出力の増加に関連することが示された.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

アシドーシス

著者: 佐々木誠

ページ範囲:P.913 - P.913

 アシドーシス(acidosis)とは,一般的には血中のpHが7.4より低下した状態のことである.しかし,正確な表現としては,血液のpHが7.4を下回った場合は酸血症(acidemia)であり,アシドーシスとは体内にpHを下げようとする動的状態が存在することをいう1).したがって,pHが7.4でもアシドーシスであるという状態があり得る1).動脈血のpHの正常値は7.40±0.05とされ,これを逸脱して低値を示す場合をアシドーシスと記載している文献もある.

 このように用語の定義に混乱があるものの,重要なのは酸塩基平衡の意味を理解することである.血液のpHは,身体緩衝系の緩衝作用(buffering)の結果としての値である.一般に酸とはHを与えるものをいい,塩基とはHを受け取るものをいう.

理学療法関連認定資格紹介

新しい「専門理学療法士」制度について

著者: 長澤弘

ページ範囲:P.916 - P.916

●資格制度成立・改定の経緯と認定趣旨について

 日本理学療法士協会が実施している理学療法士の生涯学習システムを構成するのは「新人教育プログラム」と「生涯学習基礎プログラム」および「専門領域研究会」である.生涯学習システムの基本理念は,第1に,新卒の理学療法士に対する,あるべき基本姿勢への理解や資質の向上である.第2に,理学療法の専門領域における学術交流の推進と水準の引き上げである.第3は,特に理念としては挙げていないが,前述した2つの理念の基盤となる大切な趣旨として,自発的な学習の継続である.

 このような理念の下に,専門領域研究会では,広範囲に及ぶ理学療法の業務領域を専門別に分類の上,それぞれの領域で活動する会員間の学術交流を推進し,専門領域における水準を高め,かつその領域における指導的役割を担う人材を育成することを目指している.すなわち,理学療法士としてのプロフェッショナリズムを確立し,国民の医療・保健・福祉の向上とその普及に寄与することにほかならず,もちろんこれらは国民のニーズでもある.

学会印象記

―●第44回日本理学療法学術大会―理学療法エビデンスの構築へ―From Tokyo

著者: 吉田敏朗 ,   門川明広 ,   湯地忠彦 ,   河野芳廣

ページ範囲:P.914 - P.915

はじめに

 入梅とも思える小雨の中,2009年5月28~30日までの3日間,「EBPTの構築を目指して」というテーマで,第44回日本理学療法学術大会が開催されました.会場は東京都にある「東京国際フォーラム」でした.私たちが会場に到着した時には,既に多くの会員が広大な空間を闊歩する様子から「活気」を強く感じました.大会参加を終えて思うことは,若い理学療法士が年間8,000名以上輩出される中,これからの理学療法に夢をつなぐために今何を成すべきか? を再考しなければいけない時期を迎えているのだということです.そのような中で,「理学療法エビデンス」をキーワードに,科学的根拠を提唱する号令が日本の中心である東京から発せられた大変意義深い大会でした.

―●第46回日本リハビリテーション医学会学術集会―宇宙医学・先端科学とのコラボレーション:リハ医学の可能性を問う

著者: 内田成男

ページ範囲:P.934 - P.936

 2009年6月4日から6日までの3日間にわたり,第46回日本リハビリテーション医学会学術集会が静岡市にて開催されました.会場となった「グランシップ」は,巨大な船舶をイメージした外観で,東海道本線・新幹線の車窓からも確認できます.ここでは以前,第37回日本理学療法学術大会も開催されており,ご存知の方も多いのではないでしょうか.

 さて,筆者は勤務先の教員および学生(理学療法学科・作業療法学科2年生)とともに,当日運営スタッフとして,本学術集会の進行をサポートさせていただきました.その関係から,スタッフとなった学生を支援することに加え,次に挙げる3つの目標を掲げて本学術集会に参加しました.1つは最先端のトピックスやリハビリテーション(以下,リハ)医学のトレンドを少しでも多く吸収すること,次に脳卒中片麻痺に対するリハの現状と研究の動向を見聞すること,そして脳の可塑性をリハ医学としてどのように捉えているのかを知ることでした.

入門講座 理学療法に必要な臨床動作分析・1【新連載】

基本動作における正常動作と異常動作の分析視点の違い

著者: 高橋正明 ,   関屋曻 ,   浅田晴美

ページ範囲:P.917 - P.923

Q1.「臨床動作分析」という用語について教えてください.何か特別な意味が込められているのですか?

 臨床動作分析とは,「治療対象者の動作を観察によって分析する」という,臨床でごく普通に行われている動作分析を意味する用語である.「動作分析」だけではあまりに漠然としているため,あえて「臨床」とことわることで範囲を絞っている.また,理学療法士の間で使われる場合はもう少し具体的で,主として基本動作が対象であり,正常動作ではなく異常動作を分析するのであって,原則的に観察を中心とし,計測機器や映像機器などは用いずに行う.そして,分析の目的は種々の評価の一環であって,研究目的ではないことなどが意識されている.

 近年,理学療法の対象がスポーツ傷害へと広がり,その競技に特有の投げる,打つ,蹴るなどの動作が分析対象となっているが,本来の基本動作(移動動作)障害とは分析視点が異なるため,本稿では言及しない.

講座 アンチエイジング・1【新連載】

アンチエイジングと生活習慣

著者: 鈴木隆雄

ページ範囲:P.927 - P.930

はじめに―生活習慣病とメタボリックドミノ論

 広く知られているように,疾患からみた65歳以上の高齢者の死亡原因としては,悪性新生物,脳血管障害,心疾患,そして肺炎などの順になる.しかし,高齢者の余命を規定する原因を単純に疾病のみに帰することは必ずしも適当ではなく,老化に伴う複数で多因的な原因を背景としていることは,いくつかの先行研究からも明らかである1,2)

 一方,老化の制御,あるいは老化過程の抑制(これを“アンチエイジング”と呼ぶようであるが)には,生活習慣病の予防との間に,いくつかの共通の危険因子が存在している.

 生活習慣病である高血圧症,糖尿病,そして脂質異常症(高脂血症)の罹患率は加齢に伴い増加し,それらはすべて脳血管障害(脳卒中)や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の危険因子となっている.上記の危険因子の保有ゼロを基準とすると,どれか1つを有する場合のOdd's比は5.1,2つを有する場合5.8,さらに3以上では35.8倍にまで増加するという報告もある.

 これらの生活習慣病は重複・重積的に発症することからメタボリックシンドロームと呼ばれ,わが国においても2008年度の特定健診と特定保健指導の導入により広く一般に知られるようになった.また,伊藤3)は,このような生活習慣病の重積だけでなく,それら疾患の病態基盤とその発症順序,およびその合併症の進展過程を含めた全体的概念として,「メタボリックドミノ」という考え方を示している.

 メタボリックドミノの概念では,ドミノ倒しの最初の駒が倒れるように,過食や運動不足など,生活習慣の揺らぎが引き金となり,まず肥満が発生する.日本人の場合,BMI(body mass index)で25から27の小太り程度でも日本人特有の遺伝的な背景や体質がベースとなり,インスリン抵抗性などの共通の病態が生じ,その結果,高血圧症,(糖尿病の前段階としての)食後高血糖,高脂血症といった,いわゆるメタボリックシンドロームの病態がほぼ同じ時期に発症すると考えられている.

 一方,動脈硬化症によるマクロアンギオパチーは,すでにこの段階から徐々に進展し,生命予後に直結する虚血性心疾患や脳血管障害などの発症につながっていく.これと並行する形で,糖尿病が引き起こされ,その3大合併症である神経症,腎症,網膜症などのいわゆるミクロアンギオパチーは,高血糖の持続とともに確実に進行する.そして,最終的なカタストロフィー,すなわち,メタボリックドミノが総くずれの状態となり,心不全,認知症,脳卒中,下肢切断,あるいは腎症,失明などが複合的に発症してくるのである.

 このように,メタボリックドミノは,生活習慣病の重積だけでなく,それらがどのような順序で起こってくるのかという時系列,つまり生活習慣病の“流れ”,さらにそうした危険因子がお互いに影響しあうことで,心血管イベントがドミノ倒しのように一気に起こるという生活習慣病の“連鎖”を捉えた概念であり,予防対策を考えるうえでも重要な示唆を与えている.

あんてな

JICA―国際協力の現場から・2 コロンビアにおける地雷被災者リハビリテーションプロジェクトの紹介

著者: 高橋競

ページ範囲:P.931 - P.933

 本連載では,リハビリテーション・理学療法分野における国際協力の現状と展望について,JICAの活動の実際,具体的なプロジェクトの事例,青年海外協力隊との関わりなどを通して解説していただきます.

 第2回となる今回は,コロンビアにおける総合リハビリテーション体制強化プロジェクトをとりあげます.

症例報告

頸髄症症例に対する前腕部振動刺激による握力の変化:シングルケースデザインによる検討

著者: 北出一平 ,   水上保孝 ,   嶋田誠一郎 ,   佐々木伸一 ,   久保田雅史 ,   亀井健太 ,   小林茂 ,   馬場久敏

ページ範囲:P.937 - P.941

要旨:神経障害を呈し,握力の低下した頸髄症患者の前腕部に対して,振動刺激を与えることで握力が変化するか否かについて,シングルケースデザイン(AB型,ABA'型)を用いて検討した.症例1(58歳,男性),症例2(72歳,男性)に対し,振動刺激と手指屈伸運動を1週ごとに交互に施行した.振動刺激は,上腕骨内側上顆上を除外した前腕腹側部に10分/日行った.手指屈伸運動は,個々の可能な限りの屈伸運動を,快適速度にて100回/日施行した.握力測定は,各介入直前に,座位にて,上肢を自然に下げた状態で行った.分析はceleration line(CL)とtrend and slope法を用いた.各症例ともに,振動刺激時のslopeは屈伸運動時より高値を示し,増加を認めた.屈伸運動時では振動刺激時のCLより低値を示した.振動刺激は頸髄症患者の握力増強効果をもたらす治療方法である可能性が示唆された.

ひろば

コミュニケーション能力の向上を課題にした自己分析レポートから見えてきたもの

著者: 池田耕二

ページ範囲:P.942 - P.943

Ⅰ.はじめに

 臨床におけるコミュニケーション・スキルについては方法論として体系化されつつあるが,コミュニケーションに対する意識づけや,それらを促すなどの指導や援助方法については明らかになっていないように思われる.

 今回,臨床実習生自らがコミュニケーション能力の向上を課題に設定して自己分析したレポートを,偶然にも実習指導者として入手することができたので,そのレポートを紹介する.さらに,そこからコミュニケーションに対する意識変容過程を分析し,それに基づいた実習指導や援助方法を提起してみた.

書評

―奈良 勲(監修),松尾善美(編)―「理学療法士臨床判断フローチャート」

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.924 - P.924

 「理学療法士臨床判断フローチャート」が発刊された.「理学療法における臨床判断フローチャート」とせず,「理学療法士臨床判断フローチャート」と,あえて「理学療法士」という固有の医療職種の名を冠したところに編者のこだわりが感じられる.

 また,本書ではタイトルにもあるように,障害ごとにフローチャートを用いて理学療法士としての臨床判断を明確にしようとしたところに特徴がある.特に,各論では「運動器疾患・外傷」,「脳・脊髄・神経疾患」,「内部障害・外科術後・集中治療」の3つにわけ,運動器疾患・外傷15個,脳・脊髄・神経疾患12個,内部障害・外科術後・集中治療14個の合計41個ものフローチャートが掲載されている.

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文献抄録

ページ範囲:P.944 - P.945

編集後記

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.948 - P.948

 先の衆議院選挙では民主党が圧勝し,自由民主党・公明党の連立政権から民主党中心の政権に交代することになりました.理学療法士も民主党比例代表東北ブロックで立候補し,見事当選.史上初となる理学療法士の衆議院議員が誕生しました.民主党は党の政策集「INDEX2009」の医療政策の項において,「後期高齢者医療制度の廃止」や「リハビリテーションは将来的には包括払い制度に組み込む」と明記しており,この先の動向が注目されています.

 本号の特集は「老化による身体機能低下と理学療法」がテーマです.村永論文では特に運動機能の低下を中心に,各種運動機能評価法と生活機能の自立との関連,行動変容の促進ツールとして活用することの重要性について解説されています.野添論文では,高齢者の呼吸機能の低下に対して理学療法の具体的な介入方法にまで踏み込んで解説されています.忽那論文では,最近注目されている老化による腎機能低下例に対する理学療法の実践を,綾部論文では,高齢患者における栄養管理の重要性と効果的な理学療法の実際について解説されています.座談会では急性期,回復期,維持(地域生活)期の最前線で活躍されている方々と,高齢者に対する理学療法の現状と課題について話し合いました.病期は違えども,現場の理学療法実践は多くの類似性を持っていることを伺い,理学療法の重層性や円滑な連携の重要性を再認識しました.タイムリーにも,本号から講座「アンチエイジング」が始まりました.特にサルコペニアは高齢者を対象とする理学療法士にとって必須の基礎知識です.入門講座の「理学療法に必要な臨床動作分析」もわかりやすくQ&A方式で記述されており,学生や新人の指導に役立つことでしょう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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