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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル43巻12号

2009年12月発行

雑誌目次

特集 連携教育

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1031 - P.1031

 複数の保健医療福祉専門職の連携教育(インタープロフェッショナル教育,IPE)は,保健医療福祉サービスの効果的・効率的実践に不可欠であり,チーム医療システムの確立に寄与するものとして近年注目されている.これまでIPEの重要性は認識されてきたが,実際どのような形で進めてゆくかについてはなお議論がある.本特集では,内外のIPEに関する情報を提示していただき,連携教育の実践における現状と課題,展望について解説していただいた.

連携教育の実践と課題

著者: 大嶋伸雄

ページ範囲:P.1033 - P.1041

連携教育の本質とは何か

1.“Inter-professional”による連携を理解する

 保健・医療・福祉の分野において「連携」という用語が頻繁に使われるようになったのは,いつの頃からであろうか.以前は,医師を他の医療職の円の中心に配置し,理学療法士や作業療法士,看護師などすべての専門職を医師の周囲を回る衛星のごとく見立てて,“para-medical”と呼んでいたが,その考え方は「患者不在」であると世間から批判を受けた.そこで,「患者中心の医療」,「チーム医療の中心は患者」とするイメージを前面に打ち出すため,次は医師が医療職の輪の中に収まって中心位置に患者を据え,医師以外の専門職は“co-medical”と呼ばれるようになった(患者中心の医療を推進するための専門職相関図).つまり従来の“medical”とはあくまでも医師だけであった.しかし,医師はそういった医療職全体や組織を管理するための教育を受けているのだろうか.

 保健医療福祉専門職連携,つまりinter-professionalの実践には「専門職のチーム」が必要であるが,チームにはチーム内のすべての専門職を理解しているリーダーもしくはマネージャーが必要となる.しかし,わが国においては,医学生をはじめ,保健医療福祉のどの専門職教育においてもそういった「マネジメント教育」は実施されてこなかった.

連携教育の実践と課題―理学療法学領域から

著者: 原和彦

ページ範囲:P.1043 - P.1051

はじめに

 近年,保健医療福祉の多くの現場では「複数の専門職が同じ場所で,ともに連携しながら支援する専門職連携実践(inter-professional working:以下,IPW)」が欠かせないものとなっている.しかし,連携協働の必要性が現場で求められている一方,専門職の基礎教育の現場では,異なる教育コースに在籍する学生が,同じ場所でともにIPWを学び合うといった専門職連携教育(inter-professional education:以下,IPE)を行うには,教育環境の整備など多くの課題がある.

 埼玉県立大学(以下,本学)では2006年から「連携と統合科目」を全学カリキュラムで必修化し,全学科合同演習を配置した.本学における教育改革の取り組みは,2005年に「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP;good practice)」に採択され,先進的な教育研究事業として注目を集めた1).しかし,IPEは新しい教育手法であるために,その内容も方法も体系化されていなかった.本稿では,英国のIPEの取り組みを参考にしつつ科目を具体化した,本学における取り組みについて紹介する.

連携教育の実践と課題―看護学領域から

著者: 酒井郁子

ページ範囲:P.1053 - P.1059

はじめに

 千葉大学は「つねに,より高きものをめざして」を大学理念とし,「底力宣言,千葉大学」をキャッチフレーズにしている.地味な校風であるが,目立たなくとも社会のためによい仕事をすることに価値を置き,総合大学の利点を活かし学部や専門領域を超えて新しい知の創出に挑戦している1).千葉県内に4つのキャンパスを有しており,その中の1つである亥鼻キャンパスには医学部,看護学部,薬学部の医療系の3学部の大学生,大学院生が学んでいる.同敷地には,医学部附属病院や各種研究施設が併設されている.3学部の学生定員は,医学部が110名,薬学部,看護学部は各80名である.医学部は明治7(1874)年に創設され,1949年に千葉大学医学部となり,今年で135周年を迎える伝統ある学部である.薬学部の創設は1890年であり,国立大学法人の薬学部の中では最大規模の学生を有している.看護学部の創設は1975年で,国立大学法人で唯一の看護学部として,看護学分野では国内で最大規模の大学院を有している.

 本稿では,国立大学法人の医療系学部における専門職連携教育(以下,IPE)の取り組みについて,目的,カリキュラム,科目運営の実際を紹介する.その上で看護学からみたIPEとその課題について検討したい.われわれは,千葉大学亥鼻キャンパスの3学部が取り組むIPEを「亥鼻IPE」と呼んでおり,以下,本稿では千葉大学における専門職連携教育の取り組みを「亥鼻IPE」と表現する.

連携教育の実践と課題―昭和大学における学部連携PBLチュートリアル

著者: 高木康

ページ範囲:P.1061 - P.1066

はじめに

 現在の医療は「チーム医療」と総称されるように,患者を中心として,医師,看護師,薬剤師,その他のコ・メディカルスタッフが連携して行っている.すなわち,従来の「医師のみが行う医療」から「医師をリーダーとして多くの医療関連職種のメンバーが協力・連携して患者の苦痛・悩みを解消する医療」に移行している.これは,日進月歩の医療技術に伴って,より専門性の高い知識と技能が必要となり,またそれらの専門性の高い知識と技能をもった医療関連職種が育成されているためでもある.従来はパラ・メディカルスタッフと呼ばれていた医療スタッフが,コ・メディカルスタッフ(一緒に医療を支える)と呼ばれるようになったのもこの概念からである.このような多職種間連携については,特に地域医療・在宅医療において重要性が叫ばれており1),卒前教育でのいくつかの試みも報告2,3)されている.

 昭和大学(以下,本学)には,医学部,歯学部,薬学部,保健医療学部(看護学科,理学療法学科,作業療法学科)の4学部があり,将来メディカルスタッフとして医療を担う学生の教育・育成を行っている.その教育課程の中で,これら4学部の学生が将来構築するであろう「医療チーム」の模擬チームを結成し,患者中心の医療の担い手としてそれぞれの役割を考える1つの手段として,問題解決型学習(problem based learning:以下,PBL)チュートリアルを実施している.本稿では,その実際を紹介し,取り組みの効果と問題点について解説する.

とびら

職種が違えば

著者: 伊藤義広

ページ範囲:P.1029 - P.1029

 いわゆる国立の大学病院も昨今は随分と変わってきた.6年前に全国の国立大学は法人化され,大学病院の財務会計は国から切り離されて自主自立の運営になった.まだ国からの財政支援を受けている大学病院も一部あるが,どこも経営的な視点から業務の改善や見直しが進められている.今のところは“ムダ”の定義が明文化されていないので,何でも削減というわけではないが,リハビリテーション部門に限らず病院の各科,各部門はその収支を執行部へ毎月詳細に報告するようになった.民間病院や私立大学からは呆れられるかもしれないが,長く国立大学病院に勤める身としては,10年,20年前と比べると隔世の感がある.

 また病院の財務会計だけでなく,その組織体制も徐々に変革している.とくにコメディカルの組織は人事の流動化や効率化を目的に大きく変化した.理学療法士,作業療法士,言語聴覚士に加えて放射線技師,臨床検査技師,臨床工学技士,歯科衛生士,歯科技工士,視能訓練士という9つのコメディカルを統合した「診療支援部」という組織ができた.7,8年前には,リハビリテーション部門と放射線や検査部門が一緒になることなど想像もつかなかった.日常業務は当然別であるが,各部門,各技師(士)1人あたりの収支や業務量の評価が求められ,さらにコスト削減や新しい業務の提案など病院運営にコメディカルが積極的に参画するようになった.職種が違えば立場も異なり,総論は賛成でも各論になると意見の一致しないこともある.それでも効率的な病院運営という大方針の下に,コメディカル各職種を混合した形で様々な会議が開かれるようになった.

症例報告

反復性膝蓋骨脱臼に対する内側膝蓋大腿靱帯再建術後の理学療法の経験―筋力強化運動とROM運動についての検討

著者: 岡徹 ,   黒木裕士 ,   水野泰行 ,   古川泰三

ページ範囲:P.1067 - P.1071

要旨:反復性膝蓋骨脱臼に対し動的安定性を得るために,近年,内側膝蓋大腿靱帯再建術が試みられているが,術後理学療法についての詳細な報告は見当たらない.そこで今回,特に筋力強化運動とROM運動について,症例を通して検討した.再建術後の筋力強化運動として,再建靱帯に付着する内側広筋の機能を考慮したプログラムを実施した.またROM運動では,膝装具などを用いて再断裂に注意し,膝関節屈曲角度を段階的に拡大した.その結果,本症例は高頻度の反復性脱臼例であったが,再建靱帯への負担を注意しながら理学療法を行うことにより,術後21週目でスポーツ競技復帰が可能となった.

下腿骨骨折後の外旋変形による歩行時足部痛に対して足底挿板が奏効した1症例

著者: 熊谷匡晃 ,   林典雄 ,   稲田均 ,   村山泰規

ページ範囲:P.1101 - P.1105

要旨:下腿骨幹部骨折に合併する変形治癒に対して,保存療法の有効性を示した報告は見当たらない.今回,下腿骨幹部骨折後の下腿外旋変形により歩行時痛を呈した症例に対する足底挿板療法を経験した.手術は脛骨骨折に対して髄内釘横止め法にて整復固定が行われ,術後4週間の外固定後,運動療法を開始した.術後13週より1/2荷重が許可されたが,荷重に伴う下腿ならびに足部の疼痛を強く訴えた.トウアウト(toe-out)荷重に伴う後足部の過回内と,中足部以遠の外旋ストレスが大きくなることによる後脛骨筋腱炎,ならびに下腿遠位への外旋トルクの反復負荷が骨膜性疼痛を惹起したことが,疼痛の原因として考えられた.治療としては,足関節周囲の軟部組織の柔軟性を改善したうえで,これらの機械的ストレスを軽減するため,踵接地時の踵骨の直立化,トウアウト荷重に伴い生じる舟状骨の落ち込みの防止,下腿の内旋誘導を目的とする足底挿板が有効であった.

あんてな

JICA―国際協力の現場から・3 JICA協力事業におけるマネジメント

著者: 田和美代子

ページ範囲:P.1073 - P.1076

 本連載では,リハビリテーション・理学療法分野における国際協力の現状と展望について,JICAの活動の実際,具体的なプロジェクトの事例,青年海外協力隊との関わりなどを通して解説していただきます.

 第3回となる今回は,JICA協力事業におけるマネジメント体制をとりあげます.

PTママの会の紹介

著者: 河合麻美 ,   荒木智子 ,   飯高加奈子 ,   市川保子 ,   板垣美鈴 ,   奥住彩子 ,   中邑まりこ

ページ範囲:P.1107 - P.1109

「PTママの会」立ち上げの経緯

 「PTママの会」は,理学療法士(以下,PT)をはじめとするリハビリテーション関連職種の女性が,出産・育児と仕事を両立するための情報発信・ネットワーク形成を目的として2008年7月に発足しました.

 私(河合)がPTママの会を立ち上げたきっかけは,自身が2006年に第3・4子にあたる双子を出産した育児休暇中にさかのぼります.当時,初めての双子育児で外出もままならなかった私は,自宅のパソコンで交流できるソーシャルネットワーキングサイト上で,PTの仕事と育児を両立している,またはこれからしたいと思っている女性PTが集い,情報交換を行う場所として「頑張れ!PTママコミュニティ」を立ち上げました.これまで私は,第1子が生まれてから13年間で3回の産休・育休を取り,同じ職場でフルタイムで働き続けてきましたが,仕事と育児を両立することで精一杯で,身の回りのことしかみることができていませんでした.しかし,この「頑張れ!PTママコミュニティ」を通して日本全国のPTママと知り合うことで,みんなの置かれている環境や孤独感,葛藤,働き辛さなどを知り,いかに私が恵まれた環境で働いてくることができたのかも実感しました.また,今後子どもを産みたいと考えている未来のPTママたちが抱えている悩みを聞き,身近にモデルとなるPTママがいないことから生じる将来の不安を知り,このようなPTママ同士のネットワークの必要性を実感したのです.そして,実際に毎日働く環境・生活スタイルを私たちも含め働きやすいように変えていくには,PTママが感じていること・考えていることを形にして外部へ発信することが必要ではないかと考えるようになっていきました.

 その後コミュニティを通して出会った同志を幹事に,2008年7月に顔のみえるリアルな会としてPTママの会が設立されることとなりました.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

リウマチ

著者: 山際清貴

ページ範囲:P.1077 - P.1077

 リウマチ(rheumatism)は,ギリシア語のrheumatismosを語源とし,「流れ」を意味する.古代ギリシアでは,脳から悪い液体が関節などに流れて様々な病気を引き起こすと考えられていたことに由来する.リウマチは,広義では運動器に疼痛やこわばりを有する疾患の総称であり,リウマチ性疾患(rheumatic disorders),リウマチ病(rheumatic diseases)と同義であるが,一般的には関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)を指す.なお,RAとは「リウマチ熱(rheumatic fever)に症状が似た(-oid)関節炎(arthritis)を呈する疾患」という意味である.以前は「慢性関節リウマチ」と呼ばれていたが,生物学的製剤の開発などで寛解導入率が高まったこと,診断基準を満たしても炎症が慢性化しない場合があること,診断直後から病名に「慢性」が付くことによる患者の精神的負担などを鑑み,2002年より「関節リウマチ」へ病名が変更された.

 RAは,関節炎と進行性の関節破壊などを特徴とする全身性の自己免疫疾患である.遺伝的要因,環境要因などが複雑に関与することで免疫系に何らかの異常を来し,発症すると推測されている.早期より複数の関節の疼痛と腫脹を示し,寛解・増悪を繰り返しながら徐々に進行し,重症の関節障害,運動機能障害を来す場合もある.世界人口における罹患率は約1%で,わが国では約60~70万人と推定されている.男女比は1:3~4と女性に多く,40~50歳代に発症のピークがある.診断には,一般的に米国リウマチ協会(ACR)の診断基準が用いられる(表)1).症状は,関節症状に限らず発熱,朝のこわばり,全身の倦怠感,易疲労性,体重減少,貧血,リンパ節腫大などが全身症状として出現する可能性がある.局所症状としては,Raynaud現象,皮膚粘膜症状,筋症状,眼症状,皮下結節などが,臓器症状としては,腎臓,呼吸器,心臓,血管などに症状が出現する可能性があり多岐にわたる.

プラクティカル・メモ

肩甲骨制動装具の考案

著者: 加藤康吉 ,   浅野昭裕 ,   久野秀和 ,   丹羽功一 ,   村上英喜 ,   稲垣穂積

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 肩甲上腕関節の拘縮に対して行われるpulley exerciseは,結果として獲得される上肢の挙上において肩甲上腕関節ではなく肩甲胸郭関節での運動を拡大していることがある.今回,pulley exerciseが肩甲上腕関節の可動域拡大に有効となるよう肩甲骨の動きを抑制する装具を試作したので紹介する.

入門講座 理学療法に必要な臨床動作分析・3

整形外科系領域における臨床動作分析

著者: 仲保徹 ,   福井勉

ページ範囲:P.1081 - P.1087

はじめに

 動作分析とは,その字のごとく「動作」を「分析」することである.「動作」はある目的を達成するために身体を動かすことであり,「分析」はある物事を分解して,それを成立させている成分・要素・側面を明らかにすることである.評価としての「動作分析」に必要とされることは,どのような着眼点をもてるかにある.

 的確な着眼点をもつことで,その「動作」の「要素」を明らかにすることができる.しかし闇雲に多くの着眼点をもつことは,重要な点を見落とすことにつながる可能性がある.経験の少ない観察者は,視点をどこに置くかという点で経験の多い観察者との間に差が生じる.本稿では,整形外科系疾患をもつ対象者の動作分析を行う上で,視点を的確なポイントに移す方法とその解釈について,簡単なQ & A方式で考えてみたいと思う.

講座 アンチエイジング・3

アンチエイジングと運動

著者: 米井嘉一

ページ範囲:P.1091 - P.1097

はじめに

 抗加齢(アンチエイジング)医学の目標は,日々の健康増進を図り,生活の質(quality of life:以下,QOL)を向上させ,最終的に健康長寿を達成することである1~3).そのために老化のメカニズムに関する研究成果を踏まえ,病的老化を診断し,どうすれば健康長寿を達成できるかを考え,アンチエイジング医療を実践する.具体的目標は,介護のいらない高齢者を創る(介護予防),寝たきりの予防,認知障害の予防,がんの予防である.さしずめエンドポイントは,平均寿命と健康寿命のギャップを埋めることになろうか.アンチエイジング医学の概念は心療内科医にとっても重要である.

 アンチエイジング療法に入る前に,老化の程度やQOLの低下具合を判定する必要がある.アンチエイジング医療においては,老化度を筋年齢,血管年齢,神経年齢,ホルモン年齢,骨年齢として,老化危険因子を免疫機能,酸化ストレス,心身ストレス,生活習慣,代謝機能として評価している(図1).最も衰えた部位を最重点治療対象とし,老化危険因子のうち最も大きな要因を是正して,全体のバランスを図るべく,指導あるいは治療を行う.これまでの百寿者についての研究の成果から,全身が均一にバランスよく老化することが健康長寿への王道であることがわかる.生活習慣の改善は基本であり,運動療法,食事療法,精神療法が中心となる.本稿では,アンチエイジング療法における運動療法について述べる.

学会印象記

―第43回日本作業療法学会―再考,そして創造

著者: 古川卓憲

ページ範囲:P.1098 - P.1099

 第43回日本作業療法学会(太田睦美学会長)は,6月19~21日の3日間,福島県郡山市のビッグパレットふくしまにて開催された.昨年,一昨年の学会は長崎,鹿児島と連続して九州で開催されたが,今年は一気に東北地方での開催となった.また,福島県での全国学会の開催は今回が初めてのことだった.

 会期中は梅雨の谷間で比較的穏やかな気候にめぐまれ,また,1つの会場での開催であったため,移動や天候を心配する必要がなかった.今回,本学会に初めて参加し,作業療法士または作業療法士協会が今何を話題にしているのか,問題としているのかなどを垣間見ることができ,改めて自分自身にも照らし合わせて考える機会となり,大変有意義であった.

書評

―柳澤 健(編)―「理学療法学 ゴールド・マスター・テキスト4 整形外科系理学療法学」

著者: 磯崎弘司

ページ範囲:P.1088 - P.1088

 この度,理学療法専門分野をすべて網羅した『理学療法学 ゴールド・マスター・テキスト』(全7巻)の「整形外科系理学療法学」が発刊されました.

 骨折・変形性関節症・筋骨格障害・スポーツ外傷などの整形疾患に対する理学療法は,リハビリテーション対象疾患の約半数を占めています.理学療法士は医療・福祉施設のみならず在宅リハビリテーションにおいても何らかの整形疾患をもつ方の治療に数多く関わっています.

―トーマス・W・マイヤース(著)松下松雄(訳)―「アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線」

著者: 石井慎一郎

ページ範囲:P.1106 - P.1106

●筋膜系の連結と全身的な運動機能との関連に迫る

 「アナトミー・トレイン」と聞いて,最初は何のことだかさっぱりわからず,解剖の語呂合わせを集めた学生向けのテキストだという認識しか持てなかった.

 たまたま,トーマス・マイヤース氏と話す機会があり,マイヤース氏の解剖学的知見を知り,アナトミー・トレインの概念が理学療法士の臨床推論の幅を大きく広げてくれるものであると確信した.

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文献抄録

ページ範囲:P.1110 - P.1111

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.1114 - P.1114

 リハビリテーション医療はチーム医療である,という「概念」を教えられたのは,筆者が清瀬の学生だったころだから,はるか昔のことである.理学療法士となって,臨床現場で目の前にいる患者さんに対して自分は何ができるのかとずいぶんと悩み,めまぐるしい現実に流されてゆくうち,チーム医療という「概念」はさらに高みへと昇華することなく,いつしか表層の理念となり,誰もが知っているが誰も読んだことのない古典(例えばダンテの神曲)の様相をまとっていった.この理由は自分で言うのも気が引けるが,チーム医療を作るための戦略を持たなかったからである.決して忘れ去ったわけではないが明示的には意識化されなかった課題,チーム医療について,本特集の「連携教育」が再び光を投げかけてくれるのである.

 そもそも「連携教育」とは?という基本的疑問に応えてくれるのが大嶋論文である.大嶋氏は,医師や関連職種が「医療職全体や組織を管理するマネジメント教育を受けているのだろうか」という問題提起をいみじくも指摘している.そして,連携教育の先進国である英国と日本との比較において,その特徴が解説されている.興味深いのは,英国では個々人が自立した専門職として関わるのに対して,日本では組織の中での存在が重視されるという点である.続いての原論文では,本邦における大学での連携教育の施行過程が紹介されている.原氏の所属大学だけでなく,他大学医学部の参加を得て行われる連携教育演習の運営方法と教育評価について解説され,参加学生の自己評価の向上が認められたと指摘している.酒井論文は,看護学領域における連携教育の課題について,実際に連携協業を経験することの困難性と,看護職の専門性に関わる基本的視点の重要性が論述されている.高木論文では,昭和大学における連携教育の具体的方法として,問題解決型学習が紹介されている.あるモデル症例の情報を得て,多学科の学生が討論を通じて相互の役割を認識するよう求めてゆく方法であり,その時の学生のコメントは興味深い.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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