文献詳細
文献概要
講座 アンチエイジング・3
アンチエイジングと運動
著者: 米井嘉一1
所属機関: 1同志社大学大学院生命医科学研究科アンチエイジングリサーチセンター
ページ範囲:P.1091 - P.1097
文献購入ページに移動はじめに
抗加齢(アンチエイジング)医学の目標は,日々の健康増進を図り,生活の質(quality of life:以下,QOL)を向上させ,最終的に健康長寿を達成することである1~3).そのために老化のメカニズムに関する研究成果を踏まえ,病的老化を診断し,どうすれば健康長寿を達成できるかを考え,アンチエイジング医療を実践する.具体的目標は,介護のいらない高齢者を創る(介護予防),寝たきりの予防,認知障害の予防,がんの予防である.さしずめエンドポイントは,平均寿命と健康寿命のギャップを埋めることになろうか.アンチエイジング医学の概念は心療内科医にとっても重要である.
アンチエイジング療法に入る前に,老化の程度やQOLの低下具合を判定する必要がある.アンチエイジング医療においては,老化度を筋年齢,血管年齢,神経年齢,ホルモン年齢,骨年齢として,老化危険因子を免疫機能,酸化ストレス,心身ストレス,生活習慣,代謝機能として評価している(図1).最も衰えた部位を最重点治療対象とし,老化危険因子のうち最も大きな要因を是正して,全体のバランスを図るべく,指導あるいは治療を行う.これまでの百寿者についての研究の成果から,全身が均一にバランスよく老化することが健康長寿への王道であることがわかる.生活習慣の改善は基本であり,運動療法,食事療法,精神療法が中心となる.本稿では,アンチエイジング療法における運動療法について述べる.
抗加齢(アンチエイジング)医学の目標は,日々の健康増進を図り,生活の質(quality of life:以下,QOL)を向上させ,最終的に健康長寿を達成することである1~3).そのために老化のメカニズムに関する研究成果を踏まえ,病的老化を診断し,どうすれば健康長寿を達成できるかを考え,アンチエイジング医療を実践する.具体的目標は,介護のいらない高齢者を創る(介護予防),寝たきりの予防,認知障害の予防,がんの予防である.さしずめエンドポイントは,平均寿命と健康寿命のギャップを埋めることになろうか.アンチエイジング医学の概念は心療内科医にとっても重要である.
アンチエイジング療法に入る前に,老化の程度やQOLの低下具合を判定する必要がある.アンチエイジング医療においては,老化度を筋年齢,血管年齢,神経年齢,ホルモン年齢,骨年齢として,老化危険因子を免疫機能,酸化ストレス,心身ストレス,生活習慣,代謝機能として評価している(図1).最も衰えた部位を最重点治療対象とし,老化危険因子のうち最も大きな要因を是正して,全体のバランスを図るべく,指導あるいは治療を行う.これまでの百寿者についての研究の成果から,全身が均一にバランスよく老化することが健康長寿への王道であることがわかる.生活習慣の改善は基本であり,運動療法,食事療法,精神療法が中心となる.本稿では,アンチエイジング療法における運動療法について述べる.
参考文献
1)米井嘉一:抗加齢医学入門,慶應義塾大学出版会,2004
2)吉川敏一(編):アンチエイジング医学―その理論と実践―,診断と治療社,2006
3)日本抗加齢医学会専門医・指導士認定委員会(編):アンチエイジング医学の基礎と臨床,改定第2版,メジカルビュー,2008
4)Yonei Y, et al:Japanese anthropometric reference data:special emphasis on bioelectrical impedance analysis of muscle mass. Anti-Aging Medicine 5:63-72, 2008
5)Weuve J, et al:Physical activity, including walking, and cognitive function in older women. JAMA 292:1454-1461, 2004
6)Abbott RD, et al:Walking and dementia in physically capable elderly men. JAMA 292:1447-1453, 2004
7)Yonei Y, et al:Muscular resistance training using applied pressure and its effects on the promotion of GH secretion. Anti-Aging Medical Research 1:13-27, 2004(http://www.aofaam.org)
8)Mochizuki T, et al:Evaluation of exercise programs at a fitness club in female exercise beginners using anti-aging medical indicators. Anti-Aging Medicine 6:66-78, 2009
9)大野秀樹,他:酸化ストレス対処能と運動.体育の科学 55:385-388,2005
10)Miyazaki R, et al:Effects on anti-aging indicators in middle-aged men of an intervention to prevent lifestyle-related disease:pilot study utilizing a company-wide anti-aging medical checkup and pedometers. Anti-Aging Medicine 6:83-94, 2009
11)Paffenbarger RS Jr, et al:The association of changes in physical-activity level and other lifestyle characteristics with mortality among men. N Engl J Med 328:574-576, 1993
12)柳堀朗子,他:12週間のウォーキングが中年女性の血清脂質・アポ蛋白におよぼす効果と閉経の有無の影響.日本公衛誌 40:459-467,1993
13)Yonei Y, et al:The effects of walking on quality of life and various symptoms and issues relating to aging. Anti-Aging Medicine 5:22-29, 2008
14)中江悟司,他:歩数計と印刷物を用いた1年間の歩数量増加の運動介入が高齢者の身体組成,血圧および血液性状に及ぼす影響.肥満研究 13:130-136,2007
15)井上浩一,他:21世紀のスポーツ医学治療―加圧筋力トレーニング法のリハビリテーションへの応用―.日本臨床スポーツ医学会誌 10:395-403,2002
16)野呂明夫,他:新規口腔リハビリ器具による口腔筋(口輪筋・頬筋)機能療法の基礎と臨床(第2報),若年者から高齢者における口唇閉鎖力の経年変化の評価.日本歯科保存学雑誌 45:817-828,2002
17)山崎博嗣,他:口腔リハビリ器具を用いた生活習慣病への対応.日本歯科評論 686:185-190,1999
18)前田和久:メタボリックシンドロームを防ぐ「グッド・ダイエット」,医歯薬出版,2008
19)Fontaine KR, et al:Years of life lost due to obesity. JAMA 289:187-193, 2003
20)武藤芳照(編):転倒予防教室,日本医事新報社,2002
掲載誌情報