文献詳細
文献概要
特集 パーキンソン病の理学療法最前線
「パーキンソン病治療ガイドライン」からみたリハビリテーションの最前線
著者: 中馬孝容1
所属機関: 1滋賀県立成人病センターリハビリテーション科
ページ範囲:P.485 - P.492
文献購入ページに移動はじめに
パーキンソン病の有病率は人口10万人あたり100~150人といわれており,特に65歳以上では200人と推計されている.パーキンソン病は中枢神経変性疾患で進行性の疾患である.治療としては,薬物療法,深部電気刺激などの外科的処置,リハビリテーション,患者教育などがある.リハビリテーションにより薬物療法の効果を最大限に引き出すことができ,薬物療法との併用によりさらに効果を望むことができる.
しかし,パーキンソン病患者に対するリハビリテーション効果に関して,エビデンスの高い文献の数はまだ限られている.日本神経学会による「パーキンソン病治療ガイドライン2002」を作成する際にエビデンスの高い文献を選択したが,残念ながら文献数としてはまだ少ないようであった.表にエビデンスレベルを示す.その中から,level Ⅰbであった文献について一部紹介する.Montgomeryら1)は,290人のパーキンソン病患者を対象に,教育指導,情報提供,運動療法や医学的助言などを行った群(介入群)とケアのみを行った群(対照群)の2群にランダムに分け,6か月間の介入効果を調査した.その結果,介入群では,トレーニング時間の増加,off時間の減少,往診・通院日数の減少,QOL評価の改善に有意差を認めた.さらに,6か月の介入期間中におけるL-dopaの投与量は,介入群ではほとんど変化がみられなかったが,ケアのみを行った対照群では有意に増量を認めた.この結果から,運動療法,教育指導などを行うことにより,薬物療法の効果を最大限に引き出すことができると示唆された.
本稿では,本邦でのパーキンソン病患者を対象とした調査結果や,「パーキンソン病治療ガイドライン」でエビデンスとして採用された文献の紹介を通して,パーキンソン病に対するリハビリテーションの現状をまとめ,理学療法のポイントについて述べる.
パーキンソン病の有病率は人口10万人あたり100~150人といわれており,特に65歳以上では200人と推計されている.パーキンソン病は中枢神経変性疾患で進行性の疾患である.治療としては,薬物療法,深部電気刺激などの外科的処置,リハビリテーション,患者教育などがある.リハビリテーションにより薬物療法の効果を最大限に引き出すことができ,薬物療法との併用によりさらに効果を望むことができる.
しかし,パーキンソン病患者に対するリハビリテーション効果に関して,エビデンスの高い文献の数はまだ限られている.日本神経学会による「パーキンソン病治療ガイドライン2002」を作成する際にエビデンスの高い文献を選択したが,残念ながら文献数としてはまだ少ないようであった.表にエビデンスレベルを示す.その中から,level Ⅰbであった文献について一部紹介する.Montgomeryら1)は,290人のパーキンソン病患者を対象に,教育指導,情報提供,運動療法や医学的助言などを行った群(介入群)とケアのみを行った群(対照群)の2群にランダムに分け,6か月間の介入効果を調査した.その結果,介入群では,トレーニング時間の増加,off時間の減少,往診・通院日数の減少,QOL評価の改善に有意差を認めた.さらに,6か月の介入期間中におけるL-dopaの投与量は,介入群ではほとんど変化がみられなかったが,ケアのみを行った対照群では有意に増量を認めた.この結果から,運動療法,教育指導などを行うことにより,薬物療法の効果を最大限に引き出すことができると示唆された.
本稿では,本邦でのパーキンソン病患者を対象とした調査結果や,「パーキンソン病治療ガイドライン」でエビデンスとして採用された文献の紹介を通して,パーキンソン病に対するリハビリテーションの現状をまとめ,理学療法のポイントについて述べる.
参考文献
1)Montgomery EB, et al:Patient education and health promotion can be effective in Parkinson's disease:a randomized controlled trial. Am J Med 97:429-435, 1994
2)眞野行生,他:パーキンソン病における転倒に関するアンケート調査について.眞野行生(編):高齢者の転倒とその対策,pp248-254,医歯薬出版,1999
3)Tinazzi M, et al:Parkinson's disease and lower limb somatosensory evoked potentials. J Neurol Sci 164:163-171, 1999
4)Wood BH, et al:Incidence and prediction of falls in Parkinson's disease:a prospective multidisciplinary study. J Neurol Neurosurg Psychiatry 72:721-725, 2002
5)Adkin LA, et al:Fear of falling and postural control in Parkinson's disease. Mov Disord 18:496-502, 2005
6)眞野行生(編):ケアスタッフと患者・家族のためのパーキンソン病 疾病理解と障害克服の指針,EBMに基づいたリハビリテーション,医歯薬出版,2002
7)Genever RW, et al:Fracture rates in Parkinson's disease compared with age-and gender-matched controls:a retrospective cohort study. Age Ageing 34:21-24, 2005
8)中村友彦,他:パーキンソン病における歩行障害に対する訓練効果について.Jpn J Rehabil Med 40:S385,2003
9)久野譜也:大腰筋の筋横断面積と疾走能力および歩行能力との関係.バイオメカニズム学会誌 24:148-152,2000
10)中馬孝容:パーキンソン病のリハビリテーションガイド,EBMに基づくリハビリテーション.MB Med Reha 76:31-36,2007
11)de Goede CJT, et al:The effect of physical therapy in Parkinson's disease:A research synthesis. Arch Phys Med Rehabil 82:509-515, 2001
12)Deane KHO, et al:Physiotherapy for Parkinson's disease:a comparison of techniques. Cochrane Database of Systematic Reviews 2008, Issue 4
13)Deane KHO, et al:Physiotherapy versus placebo or no intervention in Parkinson's disease. Cochrane Database of Systematic Reviews 2008, Issue 4
14)Comella CL, et al:Physical therapy and Parkinson's disease:a controlled clinical trial. Neurology 44:376-378, 1994
15)Schenkman M, et al:Exercise to improve spinal flexibility and function for people with Parkinson's disease:a randomized controlled trial. J Am Geriatr Soc 46:1207-1216, 1998
16)Pacchetti C, et al:Active music therapy in Parkinson's disease:an integrative method for motor and emotional rehabilitation. Psychosom Med 62:386-393, 2000
17)Miyai I, et al:Treadmill training with body weight support:its effect on Parkinson's desease. Arch Phys Med Rehabil 81:849-852, 2000
18)Mak MK, et al:Cued task-specific training is better than exercise in improving sit-to-stand in patients with Parkinson's disease:A randomized controlled trial. Mov Disord 23:501-509, 2008
19)Hanakawa T, et al:Enhanced lateral premotor activity during paradoxical gait in Parkinson's disease. Ann Neurol 45:329-336, 1999
20)Mano Y, et al:Cortical reorganization in training. J Electromyogr Kinesiol 13:57-62, 2003
21)長澤 弘:軽症のパーキンソン病に運動療法は必要か?.MB Med Reha 76:90-96,2007
22)菊本東陽:パーキンソン病に対する理学療法.MB Med Reha 76:37-46,2007
23)Spires TL, et al:Environmental enrichment rescues protein deficits in a mouse model of Huntington's disease, indicating a possible disease mechanism. J Neurosci 24:2270-2276, 2004
1)日本神経学会:パーキンソン病治療ガイドライン―マスターエディション,医学書院,2003
掲載誌情報