文献詳細
文献概要
入門講座 画像のみかた・3
股関節画像のみかた
著者: 永井聡1 広瀬勲1
所属機関: 1広瀬整形外科リウマチ科
ページ範囲:P.533 - P.541
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股関節のX線画像は,乳幼児の先天性股関節脱臼,幼児期のペルテス病,大腿骨頭すべり症,成人の臼蓋形成不全や変形性股関節症,さらに高齢者の大腿骨頸部骨折などの診断の際に,広範囲な年齢層を対象に撮影される.重心位置が骨盤内に存在する場合,股関節はその最も近くにある自由度の高い重要な関節である.したがって,股関節に疼痛や変形などが生じれば,歩行など抗重力位での活動に影響し,股関節機能が回復すれば,それは改善する.
股関節の機能評価においてX線画像は大変重要で,理学療法に欠かすことのできない情報となることは言うまでもない.今回,変形性股関節症を中心に,理学療法士の着眼点から,臨床上必要とされる画像のみかたについて解説したい.
骨・関節の変形性疾患は,力学的な負荷(メカニカルストレス)により,関節に構築学的な負担がかかることで変形を来し,疼痛などを引き起こす.長い経過で関節変形が起こり,その程度や様相は,それまでにどのような負荷がかかっていたかを物語る.それらの力学的な負荷を画像から読み取り,変形のプロセスを理解できれば,画像診断法は理学療法の戦略として有効な評価手段となる.また,X線画像撮影は診断だけでなく,経過観察や治療法を決めるために欠かせない検査である.
変形性股関節症は,変形により,関節の軟骨がすり減ることによって起こる.X線画像では,骨は写るが軟骨は写らないため,寛骨臼と大腿骨頭間の距離や関節裂隙と骨の状態を注意深く観察して,病期の診断と治療手段が検討される1).
理学療法士はX線画像によって,手術法や病期の進行・変化を確認し,さらに,保存療法の経過観察と効果判定を行う.また,人工股関節置換術後や骨切り術後の合併症の確認を行う.特に理学療法士は,股関節正面X線画像から骨盤の形状を解剖学的にとらえるのみでなく,下肢・脊柱のアライメントを把握し,動作・姿勢の評価に客観性をもたせることが重要である.このようなX線画像と,理学療法士の行う検査測定の数値,患者の姿勢動作の分析,体表の触診などによって,患者を総合的に評価することが可能となる.
股関節のX線画像は,乳幼児の先天性股関節脱臼,幼児期のペルテス病,大腿骨頭すべり症,成人の臼蓋形成不全や変形性股関節症,さらに高齢者の大腿骨頸部骨折などの診断の際に,広範囲な年齢層を対象に撮影される.重心位置が骨盤内に存在する場合,股関節はその最も近くにある自由度の高い重要な関節である.したがって,股関節に疼痛や変形などが生じれば,歩行など抗重力位での活動に影響し,股関節機能が回復すれば,それは改善する.
股関節の機能評価においてX線画像は大変重要で,理学療法に欠かすことのできない情報となることは言うまでもない.今回,変形性股関節症を中心に,理学療法士の着眼点から,臨床上必要とされる画像のみかたについて解説したい.
骨・関節の変形性疾患は,力学的な負荷(メカニカルストレス)により,関節に構築学的な負担がかかることで変形を来し,疼痛などを引き起こす.長い経過で関節変形が起こり,その程度や様相は,それまでにどのような負荷がかかっていたかを物語る.それらの力学的な負荷を画像から読み取り,変形のプロセスを理解できれば,画像診断法は理学療法の戦略として有効な評価手段となる.また,X線画像撮影は診断だけでなく,経過観察や治療法を決めるために欠かせない検査である.
変形性股関節症は,変形により,関節の軟骨がすり減ることによって起こる.X線画像では,骨は写るが軟骨は写らないため,寛骨臼と大腿骨頭間の距離や関節裂隙と骨の状態を注意深く観察して,病期の診断と治療手段が検討される1).
理学療法士はX線画像によって,手術法や病期の進行・変化を確認し,さらに,保存療法の経過観察と効果判定を行う.また,人工股関節置換術後や骨切り術後の合併症の確認を行う.特に理学療法士は,股関節正面X線画像から骨盤の形状を解剖学的にとらえるのみでなく,下肢・脊柱のアライメントを把握し,動作・姿勢の評価に客観性をもたせることが重要である.このようなX線画像と,理学療法士の行う検査測定の数値,患者の姿勢動作の分析,体表の触診などによって,患者を総合的に評価することが可能となる.
参考文献
1)大田仁史:骨・関節X線像の読み方,医歯薬出版,2002
2)堀尾重治:骨・関節X線写真の撮りかたと見かた,医学書院,1999
3)永井 聡:講座・関節病態学5.股関節の病態運動学と理学療法Ⅰ.理学療法 24:362-374,2007
4)中村 茂:日本人成人股関節の臼蓋・骨頭指数.整形外科 45:769-772,1994
5)藤井玄二,他:日本人成人股関節の臼蓋・骨頭指数.整形外科 45:773-780,1994
6)小西伸夫:変形性股関節症における骨頭被覆面積の検討.整形外科 45:785-789,1994
7)加藤 浩,他:痛み・有痛性疾患の理学療法プログラム―変形性股関節症.理学療法 23:338-349,2006
8)土井口祐一,他:骨盤傾斜異常と股関節症の進展メカニズム.関節外科 23:484-492,2004
9)室田景久,他(編):図説整形外科診断治療講座・16.変形性股関節症,メジカルビュー社,1990
10)広瀬 勲,他:Spongiosa Metal人工股関節の長期成績.整災外 50:1311-1318,2007
11)広瀬 勲,他:進行期・末期股関節症に対する人工股関節,整形外科ベストチョイス,pp278-282,メジカルビュー社,2000
12)嶋田智明,他(編):実践MOOK・理学療法プラクティス.変形性関節症,文光堂,2008
13)大西啓靖,他:ポリエチレンの摩耗に関するバイオメカニクス.関節外科 21(増刊号):105-110,2002
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