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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル43巻8号

2009年08月発行

文献概要

特別寄稿

プロフェショナル・コミュニケーション論

著者: 奈良勲1

所属機関: 1神戸学院大学総合リハビリテーション学部

ページ範囲:P.735 - P.747

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はじめに

 理学療法士をはじめとした保健関連専門職種(allied health professions:以下,専門職)にとっても,各々の専門分野において,様々な場面で適時適切なコミュニケーション(communication)をとることが求められる.コミュニケーション・スキル(communication skill)は,専門職としての業務,教育および学術活動を効率的に行う水準を定め,同時にそれらを究めてゆく道程でたいへん重要な基本要素の1つになる.よって,米国の大学院では,専門職としてのコミュニケーション・スキルを高める目的で「プロフェショナル・コミュニケーション(professional communication)」と称した講義科目を開講しているケースがある.参考までに,筆者がセント・オーガスティン大学の日本校の修士課程でその課目を集中講義で担当したときのシラバスのサンプル(1学期15回分とした場合)を表1に紹介する.

 特定の専門分野もしくは学問分野には他の分野と一部共通する要素もあるが,各々特異性があり,その基盤を構成し,かつ基軸となる専門用語があるのは周知のとおりである.専門分野は大きく自然・社会・人文科学領域に分類されている.なかでも,保健・医療・福祉領域は総合科学ともいえるほど広範囲にわたるだけに,その内容は複雑な様相を呈する.

 いかなる対人サービス専門職であれ,実践現場では対象者との直接的な関与が求められることから,専門的コミュニケーション・スキルを高める前提条件として,一般的コミュニケーション・スキルを有することが基本となる.その基本が不備であれば「砂上の楼閣」のごとく,専門的コミュニケーション・スキルを向上させてゆくことは望めない.

 Professionsとは,professに由来し,与えられた各々の職権をクライアントの利益を最優先して行使することを誓う,という意味である.このような観点から,本稿では「一般的コミュニケーション」と「専門的コミュニケーション」とに関連して,総体的視野に立ち「プロフェショナル・コミュニケーション」について論じてみたい.

参考文献

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22)奈良 勲:理学療法の本質を問う,医学書院,2002
23)新村 出(編):広辞苑(第4版),岩波書店,1992

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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