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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル44巻12号

2010年12月発行

文献概要

特集 股関節疾患の理学療法―update

大腿骨頸部骨折の予防装具(ヒッププロテクター)の効果と転倒予防指導

著者: 中村直人1

所属機関: 1独立行政法人国立長寿医療研究センター

ページ範囲:P.1067 - P.1072

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はじめに

 高齢者に骨折などの外傷を生じさせる外力源として最も頻度の高いのは,言うまでもなく転倒である.転倒と骨折の頻度は加齢とともに指数関数的に上昇する.そのような背景のもとで,後期高齢者の転倒による骨折が,理学療法士の扱う頻度の最も高い外傷の1つとなる現実が生じている.この一方的な増大は今後さらに顕著となると予想されるが,それを阻止するため,転倒したときに骨に到達する転倒外力を減衰させることで転倒骨折を減らそうという技法がプロテクターである.主に大腿骨頸部/転子部においてヒッププロテクターと呼ばれて発達してきた.

 そもそも事故などで外力が加わっても体を保護する装置や装具などで外力を減衰させて生じる外傷を最小限にしようとする考えは古くから定着しており,野球の捕手・剣道・アメリカンフットボール・スノーボードなどのスポーツにおける防具や,自動車内のシートベルト・エアーバッグ・危険度の高い工事現場におけるヘルメットなどは広く普及しているだけでなく,一部法的に義務化されている.これらは,それぞれが危険な外力が事故的に生じるリスクが高い場面に限定して使用されている.それでは,転倒リスクが高い高齢者に対するヒッププロテクターの有効性はどうであろうか.

 本稿では,ヒッププロテクターの適応の現状とヒッププロテクターの有効性のエビデンスをsystematic reviewsから探究し,科学的な妥当性を概説するとともに,転倒予防指導に関わる生活環境についても解説を加える.

参考文献

1)Parker MJ, et al:Hip protectors for preventing hip fractures in the elderly. Cochrane Database Syst Rev:CD001255, 2001
2)Parker MJ, et al:Effectiveness of hip protectors for preventing hip fractures in elderly people:systematic review. BMJ 332:571-574, 2006
3)Sawka AM, et al:Do hip protectors decrease the risk of hip fracture in institutional and community-dwelling elderly? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Osteoporos Int 16:1461-1474:2005
4)Sawka AM, et al:Hip protectors decrease hip fracture risk in elderly nursing home residents:a Bayesian meta-analysis. J Clin Epidemiol 60:336-344, 2007
5)Kiel DP, et al:Efficacy of a hip protector to prevent hip fracture in nursing home residents:the HIP PRO randomized controlled trial. JAMA 298:413-422, 2007
6)長屋政博:住まいの改善.田村俊世(監):高齢者をめぐる看護・介護支援機器,pp72-76,ライフサイエンス出版,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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