icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル44巻7号

2010年07月発行

文献概要

特集 在宅理学療法の実践

高齢者に対する効果的な介護予防について―地域生活のひろがりに着目した介護予防評価

著者: 二瓶健司1

所属機関: 1三春町立三春病院

ページ範囲:P.579 - P.587

文献購入ページに移動
はじめに

 わが国の介護保険法では,高齢者の「自立支援」が基本理念となっており,予防重視型のシステムで要介護状態への悪化を予防するためのサービス提供に重点が置かれている1).なかでも,一般高齢者や特定高齢者,要支援高齢者を対象とした介護予防事業では,全国各地の自治体や事業所などにおいて地域性を活かした様々な事業が展開されている.高齢者に対する在宅理学療法は,その事業の効果を立証するうえで,自立支援や健康寿命の延伸に帰結することが望まれているものの,高齢者の多様な地域での暮らしをどのように把握し,どのような指標で評価をすべきかが課題となっていた.

 社団法人日本理学療法士協会国庫補助事業特別委員会では,高齢者の地域生活における自立支援のあり方を検討する手段のひとつとして,高齢者の機能的状態の特徴と変化を総合的に捉える評価指標の開発に2005年から取り組んできた2~6).理学療法の専門性を活かした視点であらゆる検討を重ね,辿りついた指標は“地域生活のひろがりに着目した介護予防評価(elderly status assessment set:E-SAS)”である6).本稿では,このE-SASを使用した介護予防の実践例について述べていく.

参考文献

1)厚生労働省:介護保険制度改革の概要―介護保険法改正と介護報酬改定,2006
2)(社)日本理学療法士協会:平成17年度老人保健事業推進費等補助金事業 理学療法士による介護予防支援体制強化事業研究報告書~Elderly Status Assessment Set(E-SAS)開発のための縦断的調査~,2006
3)(社)日本理学療法士協会:平成18年度老人保健事業推進費等補助金事業 理学療法士による介護予防支援体制強化事業研究報告書~高齢者の活動的な地域生活の営みを支援するアセスメントセット「Elderly Status Assessment Set(E-SAS)」の開発~,2007
4)金谷さとみ:介護予防と理学療法―介護予防にかかわる日本理学療法士協会の活動.PTジャーナル 41:421-429,2007
5)(社)日本理学療法士協会:平成19年度老人保健事業推進費等補助金事業 介護予防事業における運動器の機能向上と生活空間等に関する調査研究事業報告書 「Elderly Status Assessment Set(E-SAS)による評価の意義と有用性」,2008
6)(社)日本理学療法士協会:平成20年度老人保健事業推進費等補助金事業 介護予防事業における運動器の機能向上と生活空間等に関する調査研究事業報告書 「介護予防を有効に評価するためのE-SAS(無作為化比較試験デザインによる多角的検証)」,2009
7)Baker PS, et al:Measuring life-space mobility in community-dwelling older adults. J Am Geriatr Soc 51:1610-1614, 2003
8)Peel C, et al:Assessing mobility in older adults:the UAB Study of aging life-space assessment. Phys Ther 85:1008-1019, 2005
9)日下隆一,他:介護予防における総合的評価の研究―運動機能,活動能力,生活空間の相互関係から.理学療法学 35:1-7,2008
10)原田和宏,他:介護予防に参加した地域高齢者における生活空間(life-space)と点数化評価の妥当性の検討.日本公衛誌 57:(印刷中)
11)Tinetti ME, et al:Falls efficacy as a measure of fear of falling. J Gerontol 45:239-243, 1990
12)芳賀 博:北海道における転倒に対する意識・態度の尺度化.「平成7年度~平成8年度科学研究費補助金基盤研究A[1]研究成果報告書地域の高齢者における転倒・骨折に関する総合的研究」,1997
13)Podsiadlo D, et al:The timed“Up & Go”:a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc 39:142-148, 1991
14)Shumway-Cook A, et al:Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go Test. Phys Ther 81:1060-1061, 2001
15)島田裕之,他:高齢者を対象とした地域保健活動におけるTimed Up & Go testの有用性.理学療法学 33:105-111,2006
16)Lubben JE:Assessing social networks among elderly population. Fam Community Health 11:42-52, 1988
17)Lubben J, et al:Performance of an abbreviated version of the Lubben Social Network Scale among three European community-dwelling older adult populations. Gerontologist 46:503-513, 2006
18)新開省二,他:地域在宅老人の歩行移動力の現状とその関連要因.日本公衛誌 46:35-46,1999
19)二瓶健司,他:地域在住高齢者における連続歩行距離の評価および順序尺度変数としての妥当性.理学療法学 35(suppl 2):470,2008
20)(社)日本理学療法士協会:平成16年度老人保健事業推進費等補助金事業 高齢者の「起き上がり」「立ち上がり」能力と自己効力を高めるケアに関する調査研究事業報告書,2005
21)Shimada H, et al:Predictive validity of the classification schema for functional mobility tests in instrumental activities of daily living decline among older adults. Arch Phys Med Rehabil 91:241-246, 2010
22)新開省二,他:地域高齢者におけるタイプ別閉じこもりの予後:2年間の追跡研究.日本公衛誌 52:627-638,2005.
23)安村誠司:地域ですすめる閉じこもり予防・支援―効果的な介護予防展開に向けて,中央法規,2006
24)日本リハビリテーション病院・施設協会:高齢者リハビリテーション医療のグランドデザイン,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?