icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル44巻8号

2010年08月発行

文献概要

1ページ講座 医療に関連するトピックス

再生医療と幹細胞

著者: 山崎英俊1

所属機関: 1三重大学大学院医学系研究科ゲノム再生医学講座幹細胞発生学分野

ページ範囲:P.682 - P.682

文献購入ページに移動
 幹細胞は自己複製能と多分化能をもつ細胞集団と定義され,初期胚(生殖細胞系譜)と体細胞系譜に大別される.前者は1981年にEvansらにより発見された胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)1)で,われわれの体を形成する外,中,内胚葉のすべての細胞系譜に分化可能で,個体形成能も併せ持ち,様々な疾患の治療に利用可能と考えられる(図)2).一方,後者は組織(成体)幹細胞とよばれ,骨髄の造血幹細胞,皮膚上皮幹細胞や脳の神経幹細胞など,様々な組織に存在することが報告されている3)

 ES細胞は分化全能性をもつ反面,初期胚を用いるため倫理,他人のES細胞を用いるため拒絶,多分化能による高腫瘍性が大きな問題とされてきた.その点,自己の組織から単離した組織(成体)幹細胞を用いることは,倫理・拒絶の問題を解決できる有効な方法と考えられる.分化能が限局的である点とES細胞のように一度に大量の細胞を準備できない点などの問題はあるが,最近の研究で組織(成体)幹細胞の中には,当該組織を超えた様々な分化能を有する多能性幹細胞も存在することが分かってきた.

参考文献

1)Evans MJ, et al:Establishment in culture of pluripotential cells from mouse embryos. Nature 292:154-156, 1981
2)Yamane T, et al:Development of osteoclasts from embryonic stem cells through a pathway that is c-fms but not c-kit dependent. Blood 90:3516-3523, 1997
3)Mezey E, et al:Turning blood into brain:cells bearing neuronal antigens generated in vivo from bone marrow. Science 290:1779-1782, 2000
4)Takahashi K, et al:Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell 131:861-872, 2007
5)Eiraku M, et al:Self-organized formation of polarized cortical tissues from ESCs and its active manipulation by extrinsic signals. Cell Stem Cell 3:519-532, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら