理学療法ジャーナル45巻1号

2011年01月発行

特集 自立支援

高次脳機能障害と自立支援

著者： 渡邉修¹

所属機関： ¹首都大学東京人間健康科学研究科

ページ範囲：P.33 - P.39

はじめに

　2001年，厚生労働省は高次脳機能障害支援モデル事業を開始し，2004年には，診療報酬請求の対象疾患として「高次脳機能障害」を単独で申告できるようにし，2006年，障害者自立支援法の実施にあたっては，都道府県の地域生活支援事業のなかに高次脳機能障害支援普及事業を盛り込んだ．さらに2007年，同省障害者施策推進本部は，重点施策5ヵ年計画の中で，重点的に実施する施策として，保健・医療の項では「高次脳機能障害の支援拠点機関の設置等」を掲げ，2012年までに全都道府県に高次脳機能障害支援拠点機関が設置されるよう目標設定がなされた．このように，この10年間に，わが国は高次脳機能障害者支援のための施策を医療，福祉に反映させてきた．

　本稿では，この10年間で明らかにされた高次脳機能障害者の実情を整理し，自立に向けた支援のあり方を，高次脳機能障害そのものに対する支援と社会資源による支援に分け，筆者の経験から提示したい．

参考文献

1）東京都高次脳機能障害者実態調査検討委員会（東京都）：高次脳機能障害者実態調査報告書，2008年3月

2）渡邉　修，他：東京都における高次脳機能障害者総数の推計．Jpn J Rehabil Med 46：118-125，2009

3）Whyte J, et al：Traumatic brain injury In Delisa JA, et al（eds）：Rehabilitation Medicine-Principles and Practice, pp585-611, J. B. Lippincott, Philadelphia, 1988

4）東京都福祉保健局：高次脳機能障害者支援ニーズ調査報告書，平成19年3月

5）Eames P, et al：Rehabilitation after severe brain injury：a follow-up study of a behavioural modification approach. J Neurol Neurosurg Psychiatry 48：613-619, 1985

6）渡邉　修，他：脳外傷者に対する通院リハビリテーションプログラムの試み．総合リハ 31：669-675，2003

7）渡邉　修，他：いわゆる高次脳機能障害者に対する地域リハビリテーションの試み．認知神経科学会誌 7：59-64，2005

8）Walker AJ, et al：Effectiveness of a group anger management programme after severe traumatic brain injury. Brain Inj 24：517-524, 2010

9）脳卒中合同ガイドライン委員会：うつ状態に対する対応．篠原幸人，他（編）：脳卒中治療ガイドライン2009，p338，協和企画，2009

10）The Royal College of Physicians and British Society of Rehabilitation Medicine：Rehabilitation following acquired brain injury. Turner-Stokes L（ed）：National clinical guidelines, p43, RCP/BSRM, London, 2003

11）Park NW, et al：Effectiveness of attention rehabilitation after an acquired brain injury：a meta-analysis. Neuropsychology 15：199-210, 2001

12）Winkens I, et al：Training patients in Time Pressure Management, a cognitive strategy for mental slowness. Clin Rehabil 23：79-90, 2009

13）渡邉　修，他：記憶障害に対するリハアプローチ－外的補助手段の有効性について．認知神経学会誌 3：184-187，2002

14）東京都福祉保健局：高次脳機能障害者支援ニーズ調査報告書，平成19年3月

15）高次脳機能障害専門的リハビリテーション充実のための検討委員会（東京都）：高次脳機能障害者に対するリハビリテーションの実態調査，平成22年3月