文献詳細
文献概要
講座 理学療法スタンダード・2
片麻痺歩行障害の理学療法スタンダード
著者: 髙見彰淑1
所属機関: 1弘前大学大学院保健学研究科
ページ範囲:P.869 - P.875
文献購入ページに移動はじめに
中枢神経機構である脳の損傷は,運動系,感覚系,認知・知覚系など運動制御に大きく影響する.様々な運動課題に対して,周囲の環境に適応し動作を遂行する際,そのシステムが十分発揮できないことを示す1,2).脳卒中発症により生じた歩行障害に対する治療戦略としては,これらを勘案したヒトの行動と環境適応を考慮した「課題指向型アプローチ」が代表的だが,運動制御理論や装具・機器の使用法をはじめ数多くのセオリーとその介入方法が存在し,適用には十分な配慮が必要である.特に,発症からの時期を考慮すべきであり,治療介入もそうだが,評価指標結果の解釈にも注意を要する.
精度の高い測定,エビデンスのある先行研究などを参考に,様々な場面を想定して,個体のもつ特性,環境も含め,統合的な解釈にて臨床的意志決定を行うことが大切である3,4).
ただし,どのような介入方法であっても,リスク管理を徹底して安全性の配慮のもと行われるべきであることは言うまでもない5~8).「リスク管理を十分行い,発症早期から積極的に早期座位,立位,装具を用いた早期歩行練習などを行うこと」が強く勧められると,ガイドラインで紹介されている9).
今回は,脳卒中歩行障害の理学療法スタンダードということで,この脳卒中ガイドライン20099)を中心に,システマティックレビューなどを参考に,歩行障害に関する測定・評価指標および介入方法について紹介する.
中枢神経機構である脳の損傷は,運動系,感覚系,認知・知覚系など運動制御に大きく影響する.様々な運動課題に対して,周囲の環境に適応し動作を遂行する際,そのシステムが十分発揮できないことを示す1,2).脳卒中発症により生じた歩行障害に対する治療戦略としては,これらを勘案したヒトの行動と環境適応を考慮した「課題指向型アプローチ」が代表的だが,運動制御理論や装具・機器の使用法をはじめ数多くのセオリーとその介入方法が存在し,適用には十分な配慮が必要である.特に,発症からの時期を考慮すべきであり,治療介入もそうだが,評価指標結果の解釈にも注意を要する.
精度の高い測定,エビデンスのある先行研究などを参考に,様々な場面を想定して,個体のもつ特性,環境も含め,統合的な解釈にて臨床的意志決定を行うことが大切である3,4).
ただし,どのような介入方法であっても,リスク管理を徹底して安全性の配慮のもと行われるべきであることは言うまでもない5~8).「リスク管理を十分行い,発症早期から積極的に早期座位,立位,装具を用いた早期歩行練習などを行うこと」が強く勧められると,ガイドラインで紹介されている9).
今回は,脳卒中歩行障害の理学療法スタンダードということで,この脳卒中ガイドライン20099)を中心に,システマティックレビューなどを参考に,歩行障害に関する測定・評価指標および介入方法について紹介する.
参考文献
1)髙見彰淑:脳卒中による姿勢異常に対する理学療法.理学療法 24:188-195,2007
2)髙見彰淑:脳卒中片麻痺の動作障害に対する理学療法アプローチ.理学療法 27:79-84,2010
3)髙見彰淑:脳卒中患者に対するEBPT実践への取り組み.理学療法 25:549-554,2008
4)髙見彰淑:意思決定要因としての課題解決プロセス.理学療法学 31:244-247,2004
5)髙見彰淑:脳卒中の病期別ガイドライン.理学療法 19:7-14,2002
6)髙見彰淑,他:Stroke Care Unitでの脳卒中医療とリハビリテーションの実際.MB Med Reha 66:24-30,2006
7)髙見彰淑:Stroke Unitと理学療法.PTジャーナル 42:491-496,2008
8)千田冨義,他:リハ実践テクニック―脳卒中,メジカルビュー社,2006
9)篠原幸人,他:脳卒中ガイドライン2009,協和企画,2009
10)髙見彰淑:脳卒中片麻痺患者の10m最大歩行速度および歩行率,重複歩距離の決定因について.秋田理学療法 7:10-14,1999
11)橋立博幸,他:地域在住高齢者における応用歩行予備能の有用性と生活機能との関連.日老医誌 44:367-374,2007
12)島田裕之:持久力.内山 靖(編):理学療法評価学,第2版,pp172-178,医学書院,2009
13)須藤恵理子,他:脳卒中患者における歩行率変動の分析.秋田理学療法 14:17-20,2006
14)Sekiya N, et al:Reprodecibility of the walking patterns of normal young adults:test-retest reliability of walk ration(steplength/step-rate). Gait Posture 7:225-227, 1998
15)髙見彰淑,他:急性期脳卒中患者の後進歩行の特徴―前後歩行と後進歩行の比較.東北理学療法 21:104-110,2008
16)Shumway-Cook A,他(著),田中 繁,他(監訳):モーターコントロール―運動制御の理論と臨床応用(原著第2版),医師薬出版,2004
17)Holden MK, et al:Clinical gait assessment in the neulologically impaired:reliability and meaningfu-lness. Phys Ther 64:35-40, 1994
18)前島伸一郎,他:Revermead mobility Index日本版の作成とその試用について.総合リハ 33:875-879,2005
19)Perry J:Gait Analysis―Normal and Pathological Function, Thorofare, Nj:Slack, 1992
20)Kirsten GN(著),月城慶一,他(訳):観察による歩行分析,pp172-173,医学書院,2005
21)Lord SE, et al:Visual gait analysis:the development of a clinical assessment and scale. Clin Rehabil 12:107-119, 1998
22)Kwakkel G, et al:Effects of augmented exercise therapy time after stroke:a meta-analysis. Stroke 35:2529-2539, 2004
23)Van Peppen RP, et al:The impact of physical therapy on functional outcomes after stroke:what's the evidence?. Clin Rehabil 18:833-826. 2004
24)髙見彰淑:メイヨークリニック視察に関する報告.秋田理学療法 14:35-39,2006
25)髙木治雄:脳卒中片麻痺患者の積極的装具療法の進め方.PTジャーナル 45:201-208,2011
26)大畑光司:Gait Solution付短下肢装具による脳卒中片麻痺の運動療法とその効果.PTジャーナル 45:217-224,2011
27)横田元実,他:TAPSによる脳卒中片麻痺の装具療法とその効果.PTジャーナル 45:225-231,2011
28)大平功路,他:脳卒中理学療法における足底挿板の活用.理学療法 28:459-466,2011
29)Van Peppen RPS, et al:The impact of physical therapy on functional outcomes after stroke:what's the evidence?. Clin Rehabil 18:833-826, 2004
30)Teasell RW, et al:Gait retraining post stroke. Tpo Stroke Rehabil 10:34-65, 2003
31)Takami A, et al:Effects of partial body weight support while training acute stroke patients to walk backwards on a treadmill:a controlled clinical trial using randomized allocation. J Phys Ther Sci 22:177-187, 2010
32)Nudo RJ, et al:Neural substrates for the effects of rehabilitative training on motor recovery after ischemic infarct. Science 272:1791-1794, 1996
33)Dimitrijevic MR, et al:Evidence for a spinal central pattern generator in humans. Ann NY Acad Sci 860:360-376, 1998
34)Kautz SA, et al:Dose unilateral pedaling activate a rhythmic locomotor pattern in the nonpedaring leg in post-stroke hemiparesis?. J Neurophysiol 95:3154-3163, 2006
35)森岡 周:ニューロリハビリテーションとしての理学療法.理学療法 24:1532-1540,2007
36)松田 梢,他:本邦における痙縮筋に対する筋力増強運動に対するPTの認識.理学療法科学 22:188-192,2008
掲載誌情報