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症例報告
大腿四頭筋廃用性筋萎縮から改善し独歩可能となった重症型血友病Aインヒビター保有の一症例
著者: 下川亜希子1
所属機関: 1独立行政法人国立病院機構福井病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.983 - P.987
文献購入ページに移動要旨:血友病の止血治療は,凝固因子製剤の進歩により確立された.しかし,欠損因子への抗体(インヒビター)が発生した患者では止血方法は確立されていない.そのため頻回の出血と止血不良による関節の機能障害や破壊がより大きな問題となっている.今回インヒビター保有患者が理学療法目的の入院により,車いす移動から独歩可能になった1例を経験したので報告する.
症例はインヒビター保有の重症型血友病Aである.入院時,左膝関節は末期関節症,左大腿四頭筋廃用性筋萎縮の状態で歩行不可能であった.止血管理のため活性型第Ⅶ因子製剤を用い,左膝関節を中心とした理学療法を行った.理学療法を妨げる主因は出血と考え,理学療法の進行をあせらず十分な筋力をより安全に獲得することを目指し,長下肢装具を利用するなど工夫して独歩退院を達成した.
インヒビター保有患者であってもQOL向上には積極的な理学療法が有効であると考える.
症例はインヒビター保有の重症型血友病Aである.入院時,左膝関節は末期関節症,左大腿四頭筋廃用性筋萎縮の状態で歩行不可能であった.止血管理のため活性型第Ⅶ因子製剤を用い,左膝関節を中心とした理学療法を行った.理学療法を妨げる主因は出血と考え,理学療法の進行をあせらず十分な筋力をより安全に獲得することを目指し,長下肢装具を利用するなど工夫して独歩退院を達成した.
インヒビター保有患者であってもQOL向上には積極的な理学療法が有効であると考える.
参考文献
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