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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル45巻2号

2011年02月発行

雑誌目次

特集 通所サービスにおける理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.99 - P.99

 医療から介護への早期移行により,退院後も理学療法を継続する必要がある要介護高齢者が増え,通所サービス事業所における理学療法は,今や維持期理学療法の中核を担うようになった.通所では,在宅ではなかなか提供できない「人との交流」「活動量の向上」が可能となるため,理学療法士にとって技術を発揮しやすい環境にあり,様々な工夫で着実にその効果をあげている.本企画では,通所サービスに関わる理学療法士が,効果的な理学療法のために,関連施設や地域,周囲の専門職とどのように関わり,どのように工夫して取り組んでいるかについて述べて頂いた.

通所サービスにおける理学療法士の役割

著者: 武原光志

ページ範囲:P.101 - P.106

はじめに

 通所サービス(通所ケア)はハンディキャップを負いながら在宅(地域社会)で生活する人々を医療的・福祉的・社会的に支える重要なサービスである.通所サービスの対象者は高齢者だけではないが,ここでは,要介護高齢者に対する通所サービスに限定して述べる.また,要介護高齢者に対する介護保険の通所サービスには,居宅系サービスに属する「通所リハビリテーション」と「通所介護」があり,その他,小規模多機能型サービスのなかにも通所があるが,本稿では,理学療法士の関わりが多い通所リハビリテーションと通所介護を中心に述べる.

 ところで,通所リハビリテーション(以下,通所リハ)はデイケアとして医療の分野で始まったことから,多くは病院・診療所・老健施設に併設されている.他方,通所介護はデイサービスとして福祉分野で始まった経緯から特別養護老人ホームに併設,あるいは,社会福祉協議会が運営主体になっているものが多い.

 こうした出自の違いから,本来は,通所リハは医学的管理のもとにリハビリテーションを基軸としたサービス,他方,通所介護は生活全般の支援や社会交流,介護負担の軽減を中心としたサービスが本旨であろう.しかし,実際には渾然一体となっており,両者を区分する指標も曖昧である.せいぜいのところその事業所に医師のカウントがあるかないかといった極めて形式的で行政的なものであり,必ずしも提供されているリハビリテーションの質や量の違いではない.最近では理学療法士が開設者となって通所介護事業を展開するケースも出現し,通所介護でありながら通所リハ的な機能を有する事業所も増えている.その一方で,通所リハ事業所でありながら,リハビリテーション機能が希薄な事業所も少なくない.

 施設ケアから在宅ケアへの転換が目指されるなかで,通所サービスの役割がさらに増すことは間違いない.内容の充実とともに通所リハと通所介護の役割分担を進めることも求められている.通所サービスの歴史を振り返り,通所サービスの今日的役割を整理するとともに,通所サービスにおける理学療法士の役割を再確認することにしたい.

通所サービスにおける医療機関等とのつながり

著者: 阪井三知恵

ページ範囲:P.109 - P.115

はじめに

 2006年の診療報酬・介護報酬同時改定時に,医療と介護でのリハビリテーション(以下,リハ)・サービスが「急性期・回復期は医療保険」,「維持期は介護保険」と位置づけられ,診療報酬によるリハ提供に標準算定日数が設けられた1).これにより,算定可能期間以降のリハ・サービスとして,通所リハは医療におけるリハの後を受け,在宅におけるリハの重要な役割を求められるようになった.

 通所サービスの目的は,①日常の継続した健康管理(医学的管理),②心身機能の維持・向上(リハ),③閉じこもりの予防(ソーシャルケア),④介護負担の軽減(レスパイトケア)である.特に,通所リハにおいては,医学的管理とリハに重点をおいたサービスが提供されるべきである.

 2009年の介護報酬改定にて短期集中リハ実施加算が見直され,退院早期のリハが改めて評価されたことや,在宅で生活する重介護者が増えてきていることなどにより,今後さらに医学的管理の必要な利用者が増えることが予測される.

 本稿では,通所リハに求められる役割を当法人の通所リハの取り組みを含めて報告する.

通所サービスにおける保健・福祉行政とのつながり

著者: 松井一人

ページ範囲:P.117 - P.123

はじめに

 平成12(2000)年に介護保険制度が創設され,その後様々なサービスが地域ごとに展開され,徐々に在宅サービスが充実してきている.その中で,1か月の居宅サービスの実施件数に占める通所ケア(通所リハビリテーション・通所介護)の割合は全体の約40%と,訪問介護に次いで大きい(図1).通所ケアに理学療法士が関与する上において,地域の中の多くのサービスの中でどのような機能を果たし,効果を上げるかという意識をもつことは,いうまでもなく重要である.また,介護保険サービスにおいて,業務を実施するにあたっては,保険者である行政や関係機関との連携は不可欠である.

 理学療法士は,通所ケアの事業所の中で,単に個別理学療法を提供するにとどまることなく,地域全体を見渡し,自らがその地域や事業所においてどのような役割を果たすべきかを考え,行動することが重要であると考える.本稿では「様々な地域資源の中の通所ケア」という視点で,理学療法士が他と連携を図る意義や,役割について私見を述べたい.

通所サービスにおける介護予防の効果

著者: 橋立博幸

ページ範囲:P.125 - P.133

はじめに

 介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと,そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと」と定義され,単に高齢者の運動機能や栄養状態といった個々の要素の改善だけをめざすものではなく1),心身機能の改善および環境調整を通じた活動および参加の向上とともに,生活の質(quality of life:QOL)の向上と健康寿命の延伸をめざすことに重点が置かれる.2000年に始まり2006年に改定された介護保険制度では要支援・要介護高齢者,各市町村の介護予防事業では一般・特定高齢者がそれぞれ対象となる.主な介護予防サービスには運動器機能向上,口腔機能向上,栄養改善,閉じこもり・認知症・うつの予防と支援が含まれ,そのための通所,訪問,入所の各サービスが体系化されている.これらの介護予防サービスは運動介入を必要とするものが多く,理学療法士の運動療法に関する専門性とアドバンテージが発揮される分野と考えられる2)

 このうち通所サービスは,特定・要支援・要介護高齢者において,実生活の確認,定期的な運動介入の実施,日常生活活動の自立に重要な離床時間3)と活動量の確保,社会参加の機会の獲得を目的とした運動器機能向上を図り,理学療法による一次的な効果とともに,理学療法士以外の関連職種との協働による二次的な効果が期待され,介護予防に資する意義は大きい4).また近年では,理学療法士数の増加とともに通所サービスへ関与する理学療法士も増加傾向にあり5),通所サービスでの運動器機能向上は理学療法士が密接に関連する介護予防事業のひとつであるといえる.少子高齢化の進行に伴い介護保険を含む社会保障財政が厳しくなる環境下において,社会的な認知と適切なファイナンスを獲得し,介護予防を有用なものにするためにも,サービス提供者となる理学療法士が自らのサービスの有効性について中長期的に継続的な検証を行うことが求められており6),年々,国内において介護予防の効果に関する報告がなされている.

 本稿では,国内における主な介護予防対象である特定・要支援・要介護高齢者に対する運動器機能向上に基づいた通所サービスの介護予防効果に焦点を当て,近年の介護予防効果に関連する事業報告と研究報告を交えて述べる.

通所サービスにおける介護スタッフとの連携

著者: 高橋秀介

ページ範囲:P.135 - P.140

はじめに

 通所サービスの現状として,リハビリテーション専門職のマンパワーが不足していることや,医療保険に比べ報酬が低評価であることから,リハビリテーション専門職が利用者に関与できる機会は限られている.このような状況下で理学療法の効果を高めるには,利用者に密接に関わり活動を支援する介護スタッフの協力が欠かせない.本稿では,当事業所で実践している介護スタッフによるリハビリテーションへの協力と,連携強化に向けた取り組みについて紹介する.

とびら

実感すること

著者: 竹中弘行

ページ範囲:P.97 - P.97

 幼い頃,山間の小さな村で祖父母と暮らした.昔話ではなく,山へ柴刈りに行き,かまどでご飯を炊き,風呂を沸かす.井戸からくみ上げた水を炊事場の水瓶や五右衛門風呂に入れる.水は冷たくて運ぶとゆらゆらして重く,火はパチパチと暖かく明るかった.私にとっての「水」と「火」の実感である.オール電化の世の中では今は何処の感は拭えないが…….

 ひるがえり,理学療法士としての仕事をしてはや30年.仕事の中にある実感は幾ばくのものであろうか? かなり不安がよぎる.新人時代,諸先輩から直接指導を受け,患者さんの反応の違いを実感した.そして学ぶにあたり本物に接することの大切さも教えていただいた.多くのことは一見簡単そうに見えて,やるとうまく行かない.見るとやるとでは大違いである.でも,できそうでできないことに出会うと思わず引き込まれて熱中してしまい,時間を忘れて続けてしまうということは皆経験するのではないか.その結果,自ら見つけた「これだ!」という発見は実に気分が良い.できてしまえば簡単・単純なことも多いが,「これだ」という実感と達成感は大きい.セラピストの「アハ体験」.患者さんとこの感覚が共有できた時に味わえる快感と成功感でここまで続けてきたような気がする.

学会印象記

―第26回日本義肢装具学会学術大会―ふれあいとコミュニケーションin川越

著者: 原和彦

ページ範囲:P.141 - P.142

 第26回日本義肢装具学会学術大会は2010年10月23日(土)から24日(日)にかけて川越プリンスホテルにて行われた.大会長の赤居正美先生のもと,埼玉県川越の地で「義肢装具におけるエビデンスの構築を目指して」のメインテーマを掲げて120演題の発表が行われ,およそ1,000名の参加者があった.東西に広い埼玉県で,川越はほぼその中央に位置する.小江戸川越と称され,名所として情緒あふれる蔵造りの町並みや寺院などの歴史的建造物が多く残された街である.筆者自身が埼玉在住なのであまり気にしていなかったが,蔵造りの街並みには道路と店の間に段差がなくバリアフリーに対応した住環境が整備されており,古くて新しい街だと感じた.また,本川越駅の改札を出てすぐ右手に会場のホテルのエントランスがあり(図1),交通の利便性もよかった.会場は口述3か所とポスター,展示会場の計5か所で,川越の街並みのようにこぢんまりとしつつも人と人の近接感を感じる学会会場であった.

1ページ講座 義肢装具

義足膝継手:多軸膝(リンク膝)

著者: 小嶋功

ページ範囲:P.143 - P.143

●義足膝継手に求められる機能

 ①立脚相で膝折れを起こさず安定性を保持・制御できること,②遊脚相では歩行速度に応じた下腿の振り出しをスムーズに制御し,できるだけエネルギー消費効率の良い楽で自然な歩容となること,③日常生活動作時に必要な十分な膝屈曲角度(150°以上)を有していること.④軽量で耐久性に優れ,外観が良くて衣服を破損しないことなどが挙げられる.

理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

振動刺激

著者: 鈴木陽介

ページ範囲:P.145 - P.145

 振動(vibration)とは,「物体が1つの中心のまわりを,ほぼ一定の周期をもってゆれ動くこと.また電磁場・電流の強さで,ある量が一定値を中心に同様な時間変化をすること」とされている.したがって,振動には力学的な振動だけでなく光,音,熱,電気,磁気なども含まれる.物理療法で用いられる治療法の多くは,これらの振動によるエネルギーを利用して生体に刺激を加えるものである.ここでは,モーターなどのアクチュエータによって発生させた機械的振動刺激について概説する.

理学療法臨床のコツ・14

住宅改修アドバイスのコツ―浴室

著者: 五十嵐進

ページ範囲:P.146 - P.148

はじめに

 高齢者や障害者の退院時,病院スタッフの協力を得て住宅改修や住環境整備が行われる.介護保険制度を利用する際,介護支援専門員(ケアマネージャ)と利用者,家族,建築士(工務店)など多職種による総合的な調整を図り,どこに問題があり,どう改修すればどのような移動や動作ができるか,などと検討することは重要である.しかし,自宅に戻ってしばらく生活すると,暮らしやすくするために行った住宅改修が生活に合わなくなることもよくある.リハビリテーション(以下,リハ)室あるいは病室で行う状況から考えられる日常的な活動が,必ずしも在宅で再現できるとは限らないからだ.予想を超えて良くなる場合もあるが,同様に悪化することもある.退院時,家族や本人はかなり神経を使っており,普通は現状を理解することが精一杯で,今後の生活のことを考える余裕などない.高齢者などは病院での条件より少しでも悪くなると恐怖や諦めのほうが先立つ場合が多いのではないか.また,病院だから頑張れるという場合もあったのではないだろうか.

 ケアマネージャ研修会のアンケートでは,「回復期リハが終了したら,訪問リハで実用的な動作の自信をつけてもらうことを,改修工事と合わせると有効的になると思う.」「病院の理学療法士・作業療法士の方々が自宅へ訪問し,1,2度動作確認して改修工事の指示をしても,毎日の動作となると微妙なずれが生じると思う.」「その微妙なずれをケアマネージャが予測できるかは受け持った期間にもより,退院時に初めて担当したような場合は難しいのではないか.」というような意見があった.どんな暮らしがしたいか,少し時間をかけて見守っていくことも大切なようだ.

入門講座 訪問理学療法の基本・2

在宅高齢者をよく知ろう

著者: 新谷和文

ページ範囲:P.149 - P.155

はじめに

 訪問リハビリテーション(以下,リハ)は,介護保険における居宅介護サービスのなかでは最も利用者の少ないサービスであり,2007年の調査では,居宅介護サービス利用者268万人中4.4万人とわずか1.7%にすぎない1).このような状況で,事業所によっては,訪問リハの依頼があっても十分なサービスを行えていないことも想像される.また,新規に訪問リハサービスを開始する事業所の質の担保が十分なされているかも不明である.

 近年では入院期間短縮により,早期に自宅に退院される方が増えてきている.退院早期は,自宅での新しい生活を再構築するうえで大変重要な時期であり,さらに,病状も安定した時期とは言えず,リスク管理も重要である.

 本稿では,こうした背景のなか,訪問理学療法を行うにあたり知っておいて欲しい高齢者やその家族の特徴,また,訪問理学療法を進めるにあたり有用と思われる指標をいくつか示すこととする.

臨床実習サブノート 臨床実習に不可欠な基本的技能・11

デイリーノートの書き方・使い方

著者: 内山靖

ページ範囲:P.158 - P.162

あなたは,臨床実習で何を学ぼうとしていますか

 ある人は,これまでの知識や技術を臨床で通用できる技能に高める機会と考えるであろう.また,さまざまな実践経験の場ととらえる者,就職先を決める過程と位置づける者,さらに,今後自身が理学療法士を職業とするかを再確認する機会とする者もいるかも知れない.

 一方,前述した動機は学生の立場からみた目的であり,理学療法を受けている対象者(患者,利用者,家族)や治療に当たっている理学療法士には,個々の学生が抱いている理由を想像する余裕はない.自身の人生をかけている対象者と専門職として少しでも効果的な理学療法を提供しようとしている理学療法士の両者にとっては,「せめて私たちの邪魔はしないように」と願っているのかも知れない.

講座 福祉ロボット工学・2

装着型歩行アシストロボットによる歩行トレーニング

著者: 仲貴子 ,   及川清志 ,   平田崇 ,   荒木友希 ,   鈴木隆雄

ページ範囲:P.163 - P.170

はじめに

 先進国中で最も早く高齢化が進むわが国では,少子化の進展とも相俟って高齢化率はさらに伸び続け,2055年には40%に達すると推計される1).高度医療の進歩と安全な生活環境を背景に実現した超高齢社会は,他方で社会保障費の増大や要介護高齢者の増加,超高齢者の所在不明などの社会問題を派生し,否定的な立場で語られることも少なくない.しかし,わが国の高齢者の生活機能が10年前に比べて格段に向上していることを示す研究2)もある.この変化の先にある「高齢者自身が活動的で自立した生活を営み,積極的に社会参加するような活力ある超高齢社会」の実現こそ,わが国の目指すべき道筋なのかもしれない.

 Hondaは,この活力ある超高齢社会の実現にロボット技術が寄与することを目指し,1999年から装着型歩行補助装置「リズム歩行アシスト」3)(以下,歩行アシスト)の研究を開始した.本稿ではこの歩行アシストについて概説したうえで,地域在住高齢者や回復期脳卒中後患者を対象とした介入研究の成果をレビューし,リハビリテーション領域における装着型歩行補助装置の応用とその課題について述べたい.

報告

スクワット肢位の筋電図学的分析―足圧中心位置と骨盤前後傾斜の影響

著者: 森公彦 ,   池添冬芽 ,   南角学 ,   宮坂淳介 ,   市橋則明

ページ範囲:P.171 - P.177

要旨:〔目的〕本研究の目的は,スクワット肢位における前後方向の足圧中心位置と骨盤前後傾斜の違いが下肢筋活動に及ぼす影響について明らかにすることである.〔方法〕健常成人男性10名を対象とした.筋電図の測定筋は,大殿筋,大腿直筋,内側広筋,内側ハムストリングス,外側ハムストリングス,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋の7筋とした.膝関節屈曲角度60度での両脚スクワット肢位について,3種類の骨盤肢位(前後傾中間位,前傾位,後傾位)と3種類の足圧中心位置(中間位,前方位,後方位)にそれぞれ変化させた時の筋活動を測定した.〔結果〕足圧中心位置の違いによる主効果がすべての筋で認められた.大殿筋,大腿直筋,内側広筋,内側ハムストリングス,外側ハムストリングスの筋活動は足圧中心後方位で,腓腹筋,ヒラメ筋は足圧中心前方位で高い値を示した.骨盤前後傾斜の違いによる主効果は,大殿筋,大腿直筋,内側ハムストリングス,外側ハムストリングスで認められた.大腿直筋は前傾位で,大殿筋,内側ハムストリングス,外側ハムストリングスは後傾位で高い値を示した.〔結論〕スクワットにおいて足圧中心位置や骨盤前後傾斜の肢位を変化させることで,下肢筋の選択的な筋活動が得られることが示唆された.

痙性両側麻痺型脳性麻痺児の歩行効率と関連する運動機能―粗大運動機能,反復横とび,最大1歩距離での検討

著者: 木元稔 ,   野呂康子 ,   加藤千鶴 ,   近藤堅仁 ,   中野博明 ,   松嶋明子 ,   坂本仁 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.179 - P.183

要旨:本研究の目的は,脳性麻痺児(以下,CP児)の歩行効率と関連する運動機能を明らかにすることである.対象は痙性両側麻痺型CP児11名であり,Gross Motor Function Classification SystemにおいてレベルⅠまたはⅡに分類される者である.年齢の平均値±標準偏差は13.9±3.8歳(範囲:7歳5か月から19歳8か月)であった.運動機能の指標としてGross Motor Function MeasureにおけるE領域総計(以下,GMFME総計),反復横とび,最大1歩距離を測定し,歩行効率の指標はTotal Heart Beat Index(以下,THBI)を用いた.THBIとの相関係数は,GMFME総計でρ=-0.66(p<0.05),反復横とびでr=-0.23(p>0.05),最大1歩距離でr=-0.72(p<0.05)であった.GMFME総計や最大1歩距離はTHBIと有意な相関があったため,粗大運動機能が高く,また最大1歩距離が大きくなるにつれ,歩行効率が高くなると考えられた.

お知らせ

第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会/アメリカ足病医学会のバイオメカニクスに基づく足部の評価と運動制御アプローチ(全3日間コース)/2011年マイオセラピーセミナー慢性痛や自律神経症状に対する振動療法/2011年度臨床動作分析インフォメーションコース/第16回新しい片麻痺への促通手技(川平法)実技講習会

ページ範囲:P.115 - P.162

第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会

日 時:2011年9月3日(土),4日(日)

テーマ:基礎と臨床のかけ橋

会 場:朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター

    (新潟市中央区万代島6-1)

映評

「フォーカスメディカ 疾患解説アニメーションシリーズ」

著者: 佐藤春彦

ページ範囲:P.156 - P.156

 百聞は一見にしかず,人は話を聞いたり本を読んだりして論理的に理解することより,目で見て直感で理解することの方が得意である.例えば,「シェフ特製のオーロラソース・ラングスティーヌのポワレ」と料理名だけ書かれたメニューより,炒められた手長エビの写真の入ったメニューのほうが,どのような料理か理解しやすい.そんな「わかりやすさ」に重点を置き,CGを駆使して作られているのがフォーカスメディカ疾患解説アニメーションシリーズである.商品の特徴を短い時間で伝えるテレビコマーシャルのように,病気の全体像を10分程度で描いている.

 病気の概要について語るべきことは多岐に渡り,免疫や炎症など複雑な生体反応など病態生理まで短時間で「わかりやすく」説明するのは至難の業である.しかし,本シリーズはプレゼンテーションの極意にも通ずる次のような3つの仕掛けで,見る者を納得させてしまう.

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.183 - P.183

文献抄録

ページ範囲:P.184 - P.185

編集後記

著者: 金谷さとみ

ページ範囲:P.188 - P.188

 在宅医療が注目されてから,訪問診療を中心に行う診療所が各地に増えている.また,在宅療養支援診療所,在宅療養支援病院など,在宅医療の担い手となる医療機関を評価する制度も定着している.この方向性は,重度者の療養や終末期にかかる莫大な医療費用を抑えるために国が立てた政策であったが,それは当事者にとって非常に意義あることで,結果的には在宅療養や在宅死が改めて評価される結果となった.反面,在宅医療を維持することの難しさも囁かれている.在宅医療の機能を維持するためには24時間体制での対応が不可欠であり,そこに関わる医師の負担があまりにも大きい.そのために,複数の診療所での協力体制,大規模病院との連携などが重要となる.現在の在宅医療における最も大きな課題はそこにある.

 理学療法は,そのような一線からは若干離れた位置にあり,在宅医療で最も重要な「緊急時」をともすれば見失いがちになる.結果,在宅医療の流れについて行く形になる.医療機関にはケアが不足し,介護事業所には医療が不足しているが,それを埋められるものはリハビリテーションだと言った人がいる.ある意味その通りであるが,医療と介護の実際の境目では,理学療法はぼやけてしまっているのではないか.数年前,在宅診療に取り組む経験豊富な医師に,「在宅療養されている患者様を診るとき,どのように大別して取り組みますか」と質問したことがある.このような奇問に,その医師はすぐに答えてくれた.「療養か緩和かを判断して取り組みます」.理学療法は医師のこのような判断の下で実施するものである.理学療法士はもっと医師に近づき,在宅での療養や終末期を支える一人として,もっと役に立つ取り組みを探さなければならないと考えた次第である.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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